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第80回 不動産市況とシェアハウス2020

今や、ニュースやワイドショーの時間に「新型肺炎」「新型コロナウィルス」の話題に触れない日はない――といっても過言ではないでしょう。昨年暮れに中国の湖南省武漢市で発見された新型コロナウィルスは、2003年のSARS、2012年のMERSをもしのぐ脅威として、現在進行形で全世界を震撼させています。日に日に増えていく感染者数・死亡者数から、感染力・致死率ともに当初の報道されていた推測値よりも高いと考えられ、1月31日にはWHOから緊急事態宣言が発表されました。日本でもすでに多くの感染者が出ていますが、去る2月13日には、ついに国内初の感染による死亡者が報じられました。何しろまだ発見されて間もない未知のウィルスであり、効果的な予防法も治療法も確立されていないため、専門の医療機関でも対応に苦慮しているといいます。ましてや医師でもない素人の出る幕ではありませんが、ひとつだけ言えるのは、根拠のないデマや流言飛語に踊らされることなく、情報の真偽をできるだけ慎重に見定めることです。その上で、自分たちにできる範囲で感染の予防に努めるようにしましょう。

当コラムも第80回、連載開始からまもなく丸9年目を迎えようとしていますが、建築・不動産業界では「2020年の東京五輪開催決定」が報じられてからというもの、じつにさまざまな立場からその経済効果に期待する声が聞かれてきました。待望のオリンピックイヤーを迎えた今年、果たして業界の期待はどの程度まで実現してきたことでしょうか? 直近の市況動向を見ていきましょう。
まずは2月10日、(公財)東日本不動産流通機構が発表した「2020年1月度の首都圏不動産流通市場動向( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/ZMW_202001data.pdf )」からです。昨年10月の消費税率引き上げ以降、前年同月割れの続いていた首都圏中古(既存)マンション成約数は、1月には2,680件(前年同月比0.5%増)と、4ヶ月ぶりに前年同月を上回りました。1都3県の内訳では、東京都1,407件(同2.3%増)、埼玉県322件(同5.9%増)に対し、千葉県301件(同10.7%減)、神奈川県650件(同0.2%減)となっており、この地域差からは昨秋の台風被害などの影響も読み取れます。その一方で、1平米当たりの成約単価は56万2,900円(同9.4%増)、平均成約価格は3,672万円(同11.5%増)となり、いずれも12ヶ月連続で前年同月比を上回っています。また、新規登録件数は5ヶ月連続で前年同月比を下回り、在庫件数も2ヶ月連続で前年同月比を下回っているように、市場に出回っている中古マンションの母数が減少傾向にあり、それが個々の物件価格の上昇につながっているようです。
参考までに、同日、(公財)不動産流通推進センターが発表した「全国の指定流通機構における2020年1月の売買成約状況( https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/bukken/bukken2001.pdf )」を見てみると、全国での中古マンションの成約件数は4ヶ月連続で前年同月比を下回り、1平米当たりの成約単価は44万8,700円(同7.25%増)、平均成約価格は3,013万円(同8.99%増)となり、ともに77ヶ月連続で前年同月比を上回っています。

ちなみに、既存戸建ての動向を見ると、前者(東日本不動産流通機構)のデータによれば、成約件数は899件(同4.3%増)と4ヶ月ぶりに前年同月を上回り、平均成約価格は3,100万円(同3.8%増)と3ヶ月ぶりに前年同月を上回りました。後者(不動産流通推進センター)のデータでも、成約件数は2,604件(同5.9%増)、平均成約価格は2,297万円(同4.7%増)といずれも前月から反転上昇しています。前者は首都圏、後者は全国平均であることから、それぞれの数値には幅があるものの、全国的な傾向として、既存戸建ては成約件数増加・平均成約価格上昇が読み取れます。

このように、マンションと戸建てを合わせた既存不動産全体の成約状況として捉えても、全国的に成約件数増加・平均成約価格上昇を示す結果となっており、とりわけ五輪開催地である東京都での好況ぶりは顕著です。その反面、価格上昇が続く中での成約増には遠からず限界点が来ることは容易に予想できますから、特に五輪閉幕後の市場の冷え込みには注意が必要です。

他方、新築不動産に関しては、マンション・戸建てともに現時点では2020年1月度の結果は発表されていませんが、2月6日付で東京都が発表した2019年の「住宅着工統計( https://www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp/about/juutaku_toukei.html )」によると、昨年1年間の新設住宅着工戸数は、全体では13万9,015戸(前年比4.0%減)と2年連続で減少しているものの、分譲住宅では5万7,473戸(同6.0%増)と2年ぶりの増加となり、このうちマンションは3万7,666戸(同10.3%増)で2年ぶりの増加、戸建ては1万9,225戸(同1.5%減)で2年ぶりの減少となっています。参考までに、(株)不動産経済研究所が昨年12月19日に発表した「首都圏・近畿圏マンション市場予測( https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/405/ysk2020.pdf )」によれば、2020年の首都圏マンション供給量は前年比2.2%増となり、中でも都下では郊外型の超大型案件の始動などにより前年比15.4%の大幅増が見込まれているとのこと。あくまで予測値ですから鵜呑みにはできませんが、前述した既存不動産の登録件数減少傾向と合わせて、今後は市場における新築不動産の占める割合が大きくなってくることも想定されます。

こうした中で、2月5日には(公社)全国宅地建物取引業協会連合会と(公社)全国宅地建物取引業保証協会が昨年9月23日(=不動産の日)に実施した「2019年不動産の日アンケート」の結果( https://www.zentaku.or.jp/wp-content/uploads/2020/02/2019-fudousan-anke-to.pdf )が公表されました。これは、両会が毎年実施している住宅の居住志向や購買傾向等の調査であり、2019年9月23日〜11月30日、国内の20歳以上の男女を対象にインターネットで調査し、有効回答件数2万2,183件を集計したものです。これによると、「不動産の買い時感」についての質問では「買い時だと思う」が13.0%(前年同期比3.3%減)で2008年度の調査開始以来最低、「買い時だと思わない」が28.9%(同6.3%増)で同じく過去最高を記録し、「わからない」が58.0%(同3.0%減)となっています。「買い時だと思う」の理由については、「住宅ローン減税など消費増税に係る支援制度が拡充されているから」(51.1%)、「今後、住宅ローンの金利が上昇しそうなので(今は金利が低いので)」(23.4%)など。一方の「買い時だと思わない」理由は、「不動産価値が下落しそうだから」(26.8%)、「自分の収入が不安定または減少しているから」(21.0%)などです。また、「既存住宅を購入することへの抵抗感」については、「まったく抵抗がない」12.7%、「きれいであれば抵抗はない」41.3%、「売買金額と状態のバランスを見て判断する」32.9%、「どんな状態であろうと抵抗がある」13.0%で、「まったく抵抗がない」と「きれいであれば抵抗がない」の合計は過半数を超えています。

市場の買い時感が低迷している中で、既存住宅への抵抗感が薄れ、しかも前述のように新築住宅の供給量が増加傾向にあるのだとすれば……ごく一部の「競争力の高い、魅力的な中古物件」を除き、その他の圧倒的多数を占める中古物件は当面、売却益を望めない状況となるかもしれません。逆に、今から中古物件の取得をお考えの方には、よくよく慎重に検討されることをお勧めいたします。

ところで、来たる2月20日、(公財)日本住宅総合センターによる「オリンピックイヤー後の住宅市場の展望 〜3大都市圏における新築・中古の需要・価格はどう動くか〜」をテーマとしたセミナー( https://www.hrf.or.jp/app/Contact/input/contact_id/seminar/seminar_id/106 )が開催されます。これは、(株)東京カンテイ上席主任研究員の井出武氏を講師として、さまざまなデータをもとに東京オリンピック・パラリンピック終了後の新築、既存を含めた住宅マーケットを展望するもので、会場は東京都千代田区平河町の「都道府県会館」( https://www.tkai.jp/ )。参加費は無料ということですから、興味のある方は申し込んでみてはいかがでしょうか。

最後に、2月9日付の『西日本新聞 佐賀版』の記事をご紹介しておきます。「シェアハウスで移住&農業 唐津のNPO法人が入居者募集( https://www.nishinippon.co.jp/item/n/582700/ )」と題する記事で、要約すれば「移住促進に取り組む佐賀県唐津市のNPO法人が、唐津に移住して新規就農を希望する単身者が1ヶ月住むことができる古民家再生シェアハウスをオープンし、入居者を募集している」という内容です。首都圏在住のシェアハウス大家さんにはあまり関心のないテーマかもしれませんが、「農業に特化したシェアハウス型の“お試し移住”」というのは九州でも珍しい取り組みとのことで、人口減少による過疎化や空き家問題、農家の後継者不足など、深刻な悩みを抱える地方の農村にとって、どこまで効果が期待できるかは未知数ですが、「気軽に入退去することができる」「入居者のコミュニティ形成がしやすい」など、シェアハウスの特性に即した試みである点は注目に値します。これもまた、シェアハウスの新たな可能性を拡げる取り組みと言えるかもしれません。
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