不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第82回 新しい生活とシェアハウス

第82回 新しい生活とシェアハウス

大方の予想通り――5月6日まで、と期限を提示されていた東京都ほかの緊急事態宣言は、5月4日には「月末まで延長」との公式発表がなされました。引き続き、不要不急の外出を避けるなどの自粛を継続するという方針ですが、その一方で、事業者への休業要請を全面的に解除する方針の自治体は10県に上っており、新規感染者ゼロが続く地域では、5月14日頃をメドに解除の可能性もあるとしています。GW以降、東京都で確認された新型コロナウイルス感染者数は目に見えて減少しており、ここ数日間は1日当たりの新規感染者数が100人を下回るようになってきましたが、もともと大型連休中は母数となる検査実施数が少ないため、そこで陽性が確認される感染者数も少なくなるのが当たり前。今は、表面に表れた人数の差だけを見て一喜一憂していられるような状況でもありません。かくなる上は、長期戦になることも覚悟して、できるだけ支出を抑えつつ、特別定額給付金や持続化給付金など、もらえるお金は確実に受け取り、少しでも経済的ダメージを軽減する方向に知恵を絞ったほうがいいでしょう。

さて、緊急事態宣言の延長が発表されたのと同じ5月4日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえ、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を具体的にイメージできるように、今後、日常生活の中で取り入れてほしい実践例( https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627771.jpg )を発表しました。内容については、すでに皆さんもとっくにご存じのはずですし、この場でいちいち指摘するのも芸のない話でしょう。ただ、気をつけなければいけない点としては――これらの内容をバカバカしいからと無視したり、うっかり逆のことをやってしまった場合、まったく無関係の“善意の”第三者がしゃしゃり出てきて、予想外のトラブルに発展しかねないということです。その場で口頭注意されるくらいならまだしも、ネットに中傷を書き込まれたり、近隣に怪文書を撒かれたり……相手によっては、いきなり警察に通報するようなこともないとは言えません。まともな感覚の持ち主であるほど「そんなバカな……」と一蹴してしまいがちですが、残念ながら、“緊急事態”が1ヶ月以上も続いている現状では、常識では考えられないような行動や言動に走る輩がいくらでも湧いてくるものです。そのような輩とトラブルになっても、得られるものは何一つありませんから(ヘタに争えば、濃厚接触でこちらが感染するリスクさえ考えられます)、可能な限り付け込まれる隙をつくらないようにすることが肝要です。そのためには、この「新しい生活様式」とやらにしても、せいぜい有効活用させてもらってはいかがでしょうか。たとえば――リンク先のページをプリントアウトして、あなたが所有されているシェアハウスの玄関や洗面所などの壁に貼るだけでも、“魔除けのお札”くらいの効果はあるかもしれません。

……そんなわけで、今回のコラムでは、コロナ禍とシェアハウスに関して最近目についたニュースをいくつか紹介していきたいと思います。
まず、5月5日付の『女子SPA!』に掲載された、和久井香菜子なるライターによる「コロナ禍で『100人規模のシェアハウス』に住む女性が語る“混乱のハウス内”」( https://joshi-spa.jp/1002994?cx_clicks_ranking=8_title )という記事ですが、これは正直なところ、かなり「広く、浅く」というスタンスで書かれたもので、特に内容まで踏み込んで紹介する必要はないでしょう。一応、参考までに、記事中の主な小見出しを引用すると「お別れパーティーで盛り上がる一部住人たち」「リモートワークでハウス内に人が増加」「管理会社の破綻を懸念」「シェアハウス業界の転換期になるか」……とあり、そのまんまの記事内容になっています。

同様のテーマで書かれた記事としては、4月22日付の『楽待不動産投資新聞』に掲載された「新型コロナで『シェアハウス』はどうなった? 『濃厚接触の恐怖』を感じる入居者…オーナーにできることは」( https://www.rakumachi.jp/news/column/259424 )という記事のほうが、媒体の特性といい、執筆者の専門性といい、はるかに参考になる深い内容になっています。こちらは楽待新聞編集部・金澤徹なる記者の書かれたものですが、内容的にも一読の価値があるとおもいます。詳しくはリンク先の元記事を熟読していただくものとして、ごく大雑把に紹介すると「『濃厚接触リスク』にどう対処しているか? → 管理会社では清掃やゴミ出しができない。当面は入居者の手で」「コロナの影響でシェアハウスの入居率には変化が現れているか? → 例年繁忙期より落ち込んでいるが、退去数は例年より増えていない」「シェアハウスのオーナーには、どのような感染防止対策が求められるか? → 『建物の換気』『訪問者の削減』『アルコール消毒液の用意』『トイレットペーパーの備蓄』などを呼びかけ、入居者に対してうがい、手洗い、アルコール消毒、マスク着用、友人らの訪問自粛などを要請。入居者の1人にハウスキーパーとして室内の消毒作業を代行してもらう」……等々、たいへん参考になる内容になっていますので、シェアハウス大家さんや関係者の皆さまには、ぜひご一読されることをおススメします。

このほか、ここ1ヶ月ほどの間に『朝日新聞デジタル』に掲載された「コロナ禍とシェアハウス」関係のニュースをピックアップしていきましょう。
5月3日付で掲載された「ネカフェ暮らし終了、頼りは生活保護 広がるコロナ困窮」( https://www.asahi.com/articles/ASN526FD6N51UTIL04J.html )という記事から、一部抜粋して引用します。
「住む場所がない。仕事がみつからない――。新型コロナウイルスの感染拡大で、あすの暮らしを見通せず悩む人たちが増えている。
 新型コロナウイルス対策の一環でインターネットカフェ(ネカフェ)に休業を要請した神奈川県は、そこが生活拠点だった人に、寝泊まりの場として県立武道館(横浜市港北区)を開放した。しかし、ネカフェから来た男性は『緊急事態宣言が延長されたらどうなるのか』と不安を語る。
 武道館の柔道場や剣道場には、布製の間仕切りで囲われた約2メートル四方の「部屋」が数メートル間隔で設けられている。中には簡易ベッドが1台。2日午後4時時点で男性60人、女性3人が利用。年齢層は20〜70代と幅広い。(中略)
 武道館では食品支給はなく、蓄えを取り崩し、カップ麺などを買って食べている。館内のシャワーが利用できるが、テレビもネット環境もなく、近所の新聞販売所から配達されて無料で読める新聞が主な情報源という。(中略)
 武道館では玄関近くのスペースで県や横浜市の職員が生活相談に応じており、宿泊する全員が利用したという。緊急事態宣言が延長された場合、武道館の開放を続けるかどうかについて、県は「状況に応じ対応を考える」としている。(土屋香乃子)
(中略)
 新型コロナウイルスの拡大で、仕事が見つからず、生活保護に望みを託す人もいる。
 東京都内の20代男性は4月20日、雨に打たれながら途方に暮れていた。生活保護申請のため、ネットカフェから区役所窓口に行ったが、『実家に帰ったら』と言われたという。両親とは10年以上連絡を取っておらず支援は期待できない。『仕事も家もない。どこにも行くところがなかった』
 高校時代に精神疾患を患い、学校を辞めて家も出た。人間関係が築きにくく、長期の仕事はできない。短期のほうが探しやすいのではと、昨年10月に上京。シェアハウスで過ごしながら、IT系の企業や工場など派遣登録先の仕事をして暮らしていたという。
 ところが2月、シェアハウスの住民と折り合いが悪くなって退去。(中略)
 インターネットで支援団体を知り、スタッフと2日後に再び区役所へ。担当者は『「実家に帰ったら」と言ったのは、申請するなと言う意味ではなく、一つの選択肢だった』と話したという。申請を終え、今は都が用意した緊急宿泊所のビジネスホテルに滞在している。
 支援団体の『POSSE』(東京)によると、4月前半だけで生活相談が194件あった。通常は年400件程度で、『いかに生活が困窮しているか。生活保護がなければ、死に直面する人も多い』という。(後略)(江戸川夏樹)
(2020年5月3日 13時00分更新)」

上記はどちらかといえば「貧困」というテーマの記事であり、そこに出てくる「シェアハウス」というワードは、まるで一種の貧困ビジネスのような印象があります。
もう少しさかのぼってみると、4月30日付で伊藤喜之なるライターの「『ポテチも買えない…』 コロナ禍、外国人留学生の困窮」( https://www.asahi.com/articles/ASN4Y6TP3N4TPTIL00R.html )という記事が見つかります。これはタイトル通り、外国人留学生の困窮に焦点を当てた記事で、ただその留学生がシェアハウス住まいというだけなので特に引用はしませんが、部分的には参考になるところもあるかもしれません。

もう1本、これも外国人留学生とコロナ禍に関する内容ですが、4月18日付で掲載された「兵庫)留学生受け入れたシェアハウス、閉鎖の危機」( https://www.asahi.com/articles/ASN4K71Y5N4JPIHB027.html )という記事。こちらは上記の記事とは逆に、外国人留学生を受け入れるシェアハウス運営者側に焦点を当てた記事です。これも抜粋して引用してみましょう。
「経済的に苦しい日本語学校の留学生たちを安価な家賃で受け入れてきたシェアハウスが、新型コロナウイルスの影響で閉鎖の危機にある。海外からの入国制限などを受け、利用者が激減したためだ。地域で孤立しがちな外国人の『居場所』を守ろうと、関係者は模索している。
 シェアハウスは神戸市兵庫区の『やどかり』。18部屋で定員は48人。NPO法人『Oneself』理事長の中野みゆきさん(36)が2015年につくった。
 中野さんは10年から1年間、中国江蘇省の大学で日本語教師として働いた。中国語が分からず買い物にも苦労し、『日本の外国人も同じ気持ちなのかな』と気がついた。帰国後、日本語学校の留学生が納屋のような場所に住んでいたり、大家とトラブルで追い出されたりすることもあると知り、シェアハウスをつくろうと決めた。
 留学生と地域住民の橋渡しをしようと、シェアハウスの共有スペースで月1回はイベントを開いた。留学生が自分の国を紹介したり、地元の大学生や消防団と協力して『防災運動会』を開いたり。最近は技能実習生の寮としても使われ、日本語研修も行っている。
 新型コロナウイルスの影響は、今年に入ってすぐ現れた。1月に中国人短期留学生の団体が入居する予定がキャンセルになり、3月中旬以降の技能実習生の受け入れも見通しが立たない。13人いた住人は、卒業や就職で離れ、残っているのは6人に。家賃収入だけでは固定費が支払えないという。『特定の国から来られなくなることはあったが、全ての国がだめになったのは初めて』と中野さん。
 閉鎖も考えたが、いまも暮らす留学生は『ここにまた帰りたい』と泣いた。SNSに現状を投稿すると、多くの応援メッセージが届いた。『声を上げたからにはなんとか残したい』ともがくが、金融機関の融資は結果が出るまで時間がかかると言われた。より安値な物件も探しているが、まだ結論は出ていないという。(後略)
(遠藤美波)
(2020年4月18日10時00分更新)」

今回のコロナ禍では、老若男女、お金持ちも貧乏人も、誰もが「わけへだてなく」生命の危機にさらされています。もちろん、シェアハウス大家さんも例外ではありません。しかし、今回ご紹介した記事の中にもあったように、シェアハウス入居者の皆さんは、大家さんよりも相対的により弱い立場の方が多いはずです。このご時世、「余裕がない……」というのはお互い様でしょうが、さすがに「今日明日、食べるお金にも困る」というほど生活の苦しい大家さんはいないでしょう。何もしてあげられないにしても、せめて気持ちの上だけでも入居者の皆さんの味方になってあげれば、きっと、のちのち良いことがあるのではないでしょうか。
前
第83回 逆風とシェアハウス(コロナ禍編)
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第81回 パンデミックとシェアハウス

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)