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第83回 逆風とシェアハウス(コロナ禍編)

去る5月25日、東京はじめ5都道県で緊急事態宣言がようやく解除されたものの、わずか数日後の6月2日には、謎の「東京アラート」が発動されました。そして、これは事実上単なる“都庁舎のライトアップ”であり、夜の新宿に不要不急の外出者を集めるだけの演出ではないか、などと揶揄された挙句、11日にはなし崩しに解除を迎えます。その結果――東京都では4日連続で新たな感染者が20名以上となり、14日には47名もの感染者が確認されています。こうしたなかで、小池百合子東京都知事は「自粛から自衛へ」と呼びかけましたが、「何もしないで都民に丸投げするつもりか?」とネットで炎上する始末。マスコミは相変わらず「わかりやすい犯人捜し」に終始し、今度はホストクラブが槍玉に上がっていますが……。目先の情報に振り回されて一喜一憂するよりも、首尾一貫した感染拡大防止対策を持続しつつ、そろそろ景気対策に本腰を入れて取り組まなければならない時期に来ているのではないでしょうか。

前回の当コラムでも、コロナ禍によるシェアハウスへの影響についてのさまざまなニュースを紹介しましたが、その後、状況はさらに悪化しつつあり、まさに逆風下にあるようです。たとえば、前回のコラム更新直後の5月11日付で(株)扶桑社の『週刊SPA!』編集部が運営するニュースサイト『bizSPA!フレッシュ』に掲載された、シルバー井荻なるライターの「若者のシェアハウス離れも。コロナ禍の影響を不動産会社に聞く」( https://bizspa.jp/post-304088/ )という記事。これはもう、タイトルのつけ方からして「若者の××離れ」という定型パターンを踏襲したもので、その内容もタイトルの通り、言ってみれば不動産会社による嘆き節になっています。「動画内見・テレビ電話のみの内見もある」「重要事項説明書の読み合わせもオンラインにて行っている」「リモートのため信頼が築きにくく距離が縮まらない」「引越しの依頼は例年の20〜30%」「契約が決まっても、クリーニング業者、リフォーム業者に影響が出て、契約開始日が後ろ倒しになることも」……等々、よく耳にする「不動産あるある」ネタになってしまい、それなりに興味深くはあるものの、さほど重要な情報は含まれていないようです。記事中には、タイトルの由来と思われる「シェアハウスからの転居者が増えている」という気にある項目がありましたが、よくよく読んでみると、「シェアハウスや友人とのルームシェアからお引越しをご希望される方は一定数いらっしゃいます。自分以外の人と密室での生活をするため、感染を恐れてという理由がほとんどです。引越しを選択するのではなく、落ち着くまで実家に戻る方もいらっしゃいます。シェアハウスではないですが、医療関係者が2世帯住宅からお引越しをご依頼頂いたケースもあります」云々と、たったこれだけ。あくまで「個人の感想」です――とでもクレジットしたいところで、統計的なデータの裏づけや客観的な説得力ある分析は一切ありませんでした。

次にご紹介するのが、上記から約1ヶ月後の6月12日付で『日刊ゲンダイDIGITAL』に掲載された、中川七海というライターの「コロナ禍のシェアハウスで見た“セーフティーネット”の役割」( https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/274492 )という記事。『日刊ゲンダイ』は、講談社系の出版社である(株)日刊現代が発行するタブロイド判夕刊紙で、体裁としては新聞であるものの日本新聞協会には加盟しておらず、「日刊雑誌」という位置づけであるとされています。記事の冒頭部分を引用してみましょう。
「コロナは、シェアハウス住人の生活を一変させた。交流を楽しむため、家賃を抑えるため、働き方に合わせるため――。さまざまな理由でシェアハウスを選んだ人たちも、さすがにコロナ禍の共同生活を一度は考え直したという。
 大きく理由は2つ、集団感染リスクと収入の減少だ。住人たちは、この危機をどのように乗り切っているのか? シェアハウス生活を送る男女8名への取材で、意外なシェアハウス像が浮かび上がってきた(後略)」
以下、「住人みんなでコロナ対策に取り組んでいた」にもかかわらず、「シェアハウスというだけで、感染リスクが高いと見なされ」「同僚の看護師に引っ越しを迫られて」シェアハウスから出て行った看護師のエピソードや、「人に会えないことがしんどい自粛期間中、住人との些細なコミュニケーションが唯一の息抜きだった」と巣ごもり生活を語る入居者のエピソード、「収入がゼロになり」退去するしかない、と覚悟したが「家賃給付金の案内を管理会社が知らせてくれ」申請した結果、「給付金のおかげで引っ越さなくて済みました」という派遣社員のエピソードなどが紹介されており、なかなか興味深い内容になっていました。なお、中川氏は本記事の締めくくりを「コロナ禍のシェアハウスは『感染リスクが高そうな集団生活』というイメージばかり持たれがちだ。しかし今回の取材を通して、新たな一面を見つけた。(中略)シェアハウスという選択は、セーフティーネットの役割も果たす新たな暮らし方といえる」と結んでおり、しっかりした取材方針と、信念に裏づけられた執筆の姿勢が伝わってきます。

最後に、同じ6月12日の参議院で可決・成立したある法案についてお伝えしてきましょう。この法案自体は今回のコロナ禍とは直接関係なく、また、シェアハウスだけに限った話ではありませんが、シェアハウス大家さんはもちろん、シェアハウス運営会社にとってもきわめて重要な法案です。これはもともと、2020年3月6日に閣議決定( https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000200.html )されていた法案で、去る5月26日に衆院を通過しており、今回の参院可決となったものです。これにより、同法案は1年以内に施行され、またサブリースに関する行為規制は6ヶ月以内に施行されます。
非常にざっくりと言ってしまえば、サブリース契約でしばしば問題になる「サブリース業者が、オーナーの同意なく一方的に契約内容や条件を変更することを禁止する」などのサブリース業者への規制強化と、「賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設」という新たな制度をつくり、「業務管理者」を置くことを義務づけています。この業務管理者は、賃貸住宅管理に関する一定の実務経験等を有する資格者としており、「賃貸不動産経営管理士」や「宅地建物取引士」などの資格者のうち、一定の講習を受講したものがイメージされています。上記のリンク先にもありますが、国交省がまとめた概要( https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001331551.pdf )がわかりやすいのでご参照ください。
なお、登録制度の中身やサブリース事業者の勧誘等については、後日、別途ガイドラインが策定されるとのことです。

今回のコロナ禍では情報が錯綜し、国や自治体の言うことも日々めまぐるしく変わっているため、「何を信じたらよいのかわからない……」となっている方も少なくないのではないかと思われます。しかし、このような時、「言ってることがころころ変わる人」よりも、「どんなに状況が変わっても、一度言ったことを決して変えない人」のほうが、じつははるかに危なっかしいのです。たとえ行き当たりばったりと言われようとも、臨機応変に考え方や態度を柔軟に変えられる人のほうが、頑なに自分の考えに固執し、己を曲げない“信念の人”よりも、昨今のような情勢下ではタフに生き延びられるものです。
何が正しくて、何が間違いなのか、はっきりしているならいざ知らず――「正解は誰にもわからない」現在のような時代を生き抜くには、誰のどんな意見に対しても話半分で、ある程度距離を置いて接するのがいいでしょう。いわば、「心理的ソーシャル・ディスタンス」――もっとも、「ソーシャル・ディスタンス」とはそもそも「心理的な距離」を指す用語らしいのですが――が重要になってくるのではないでしょうか。
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