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第85回 ニューノーマルとシェアハウス

早いもので、安倍晋三首相の突然の「辞任表明」から1週間が過ぎました。そのたった4日前、母方の大叔父である故・佐藤栄作元首相の持つ首相連続在職日数記録を更新したばかりでしたが、記者会見の場で安倍首相は記者の質問に対して「持病の潰瘍性大腸炎が悪化したこともあり、一週間ほど前に辞意を固めた」と語っています。つまり、特に任期の最後の方は「?戦後最長記録?を樹立したいがために、無理に辞任を引き延ばしていた」とも考えられます。在職期間が長いわりに、首相として成し遂げた成果といえば、せいぜい「首相である間に消費税を2度上げた」くらいのもの。また、13年前の第一次内閣時代に続いて、「任期半ばでの辞任」も今回で2度目。どこまでいっても、「終わりよければすべてよし」という言葉とはとことん縁のない政治家であったようです。

上記の辞任表明の際、本題に入る前の前置きとして、安倍首相はコロナ対策関連についてかなり長々と述べましたが、その冒頭で「猛暑が続く中、国民の皆様にはコロナウイルス対策、そして熱中症対策、ダブルの対策に万全を期して」云々と、この2つの疫病を並べて論じています。それというのも、この夏の熱中症被害が前代未聞の規模であったからに他なりません。なお、その件については、東京都監察医務院の発表を受けて、9月1日のテレビ・新聞・ネットなどで一斉に報じられましたが、内容はどこも大差はないようです。そこで、やや角度の違う切り口から論じている『日本経済新聞』の記事を取り上げることにします。これは「8月の気温、東日本で過去最高 熱中症も多く」( https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63305530R00C20A9CC1000/ )という見出しの記事で、以下、全文を引用します。
「気象庁は1日、8月の東日本の気温が1946年の統計開始以降で最高だったと発表した。西日本も1位タイで全国的に記録的な高温となった。東京都の熱中症による死亡者数は187人で、1カ月あたりで過去最多となった。
 気象庁によると、8月の平均気温は東日本で平年より2.1度、西日本で1.7度高かった。17日には浜松市で国内史上最高気温と並ぶ41.1度を観測した。
 太平洋と大陸から張り出す2つの高気圧が重なり合い、広く列島を覆ったことで全国的に気温が上昇した。雨は少なく、降水量は東日本が平年の38%、西日本は40%にとどまった。台風の上陸は2013年以来となるゼロだった。
 総務省消防庁によると、熱中症で8月1〜23日に全国で救急搬送されたのは前年同期比4%減の3万3590人(速報値)。全国的に厳しい暑さが続いた中旬以降に限ると、約2倍の2万4102人だった。
 都内では4250人が熱中症の疑いで搬送された。『7月は気温の低い日が続いたが、8月に入って急激に気温が上昇し搬送者が増えた』(東京消防庁)
 東京都監察医務院によると、7月にゼロだった熱中症死亡者数は8月31日時点で187人。1カ月あたりで過去最も多かった10年7月(137人)を4割上回った。死亡者の約9割がクーラーを設置していないか使用していない屋内にいた。
 気象庁が25日にまとめた3カ月予報によると、秋(9〜11月)の気温も東日本と西日本、沖縄・奄美で平年より高くなる見通し。残暑が見込まれ、引き続き熱中症にならないよう体調管理が必要となりそうだ」(2020/9/1 18:50更新)
「東京都監察医務院が発表した、8月の熱中症死亡者数が過去最多を更新」という情報のみを報じたメディアが多かったのに対し、『日経新聞』は気象庁や総務省消防庁、東京消防庁など複数の官庁を取材し、この問題について多角的に検証していることがわかります。同紙については常日頃、政・財界の人事や企業の買収・合併などのスクープについて「飛ばしや憶測、誤報が多い」というイメージをお持ちの方もおられるかもしれませんが、案外しっかりとした取材もしているようです(失礼)。いずれにせよ、9月に入ってからも残暑は一向に衰えず、その上、沖縄・九州地方では台風の上陸が相次ぎ、さらに全国で落雷やゲリラ豪雨などによる被害が出ていますから、熱中症に限らず、異常気象のもたらすさまざまな災害に対しては、まだまだ油断のできない状況が続きそうです。

さて、5月の連休明け頃から聞かれるようになった「新しい生活様式」という言葉ですが、これとイメージの似た概念として「ニューノーマル」という言葉があります。これは、Wikipediaによると「ビジネスや経済学の分野において、2007年から2008年にかけての世界金融危機やそれに続く2008年から2012年にかけての大景気後退の後における金融上の状態を意味する表現」と解説されています。要するに、2008年9月のリーマンショックに象徴されるような、「それまでのビジネスの常識が一切通用しなくなった状態」とでもいうことになるでしょうか。今回のコロナ禍も、まさに「これまでの世の中の常識がすべて通用しなくなった状態」であり、「『3密』の回避」や「ソーシャルディスタンスの確保」など、つい数ヶ月前には概念さえ世の中に存在していなかったものが、人々の行動の基準にすらなっています。こうした中で、国土交通省は8月31日、「ニューノーマル」に対応したまちづくりに向けて、「新型コロナ危機を契機としたまちづくりの方向性」( https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001360981.pdf )をとりまとめ、公表しました。国交省では6〜7月にかけて、「都市再生」や「都市交通」「公園緑地」や「都市防災」のほか、医療、働き方など、さまざまな分野の有識者計61名に個別ヒアリングを実施したほか、地方公共団体や都市開発・公共交通・情報通信関係事業者に対してもヒアリングを行ってきました。そこで出た意見を踏まえて、今後の都市のあり方にどのような変化が起こり、都市政策はどうあるべきかについて論点を整理し、「都市(オフィス等の機能や生活圏)」「都市交通(ネットワーク)」「オープンスペース」「データ・新技術等を活用したまちづくり」の今後のあり方と新しい政策の方向性、および「複合災害への対応等を踏まえた事前防災まちづくり」の新しい政策の方向性を示しました。
このうち、1番目の「都市(オフィス等の機能や生活圏)」については、「複数の用途が融合した職住近接に対応するまちづくりを進めることが必要であり、働く場所・住む場所の選択肢が広がるよう、都市規模の異なる複数の拠点が形成され、役割分担をしていく形が考えられる」としています。たとえば、大都市はクリエイティブ人材を惹きつける良質なオフィス・住環境を備え、郊外および地方都市は居住の場・働く場・憩いの場といった機能を備えた「地元生活圏」の形成を推進することなどが挙げられています。2番目の「都市交通(ネットワーク)」については、当コラムの趣旨とはあまり関係がないので省略。3番目の「オープンスペース」については、運動不足の解消・ストレス緩和の効果が得られる場として、グリーンインフラとしての緑やオープンスペースの重要性が再認識される一方で、テレワーカーの作業場所や、フィットネスの場所等、利用形態が多様化しています。そうした変化を踏まえ、街路空間、公園・緑地、水辺空間、都市農地、民間空地など、まちに存在するさまざまな緑とオープンスペースについて、テレワーク、テイクアウト販売への活用といった地域の多様なニーズに応じて柔軟に活用することが必要である、などの方向性を示しました。そして、4番目の「データ・新技術等を活用したまちづくり」については、人流・滞在データでミクロな空間単位で人の動きを把握することで、過密を避けるよう人の行動を誘導する取り組みが重要である、などと指摘しています。

上記の4点については、シェアハウス大家さんにとってそれほど直接的な影響があるとも思えませんが、これから本格的に台風シーズンを迎えることもあり、5番目の「複合災害への対応等を踏まえた事前防災まちづくり」については、最低限その考え方を理解しておく必要があるでしょう。これらはいずれも各分野のスペシャリストたちが知恵を絞り、リスクの低減と利用効率の向上を図ったもので、理論上は特に問題はないと考えられます。ただし、実際に人間の手で運用していく上で、必ずしも理論通りに実践できるとは限りませんし、法的な強制力も罰則もないというのが現状ですから、あくまで参考意見程度にとどめておくのが正解かもしれません。
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