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第87回 地域交流とシェアハウス

安倍前政権時代の企画段階から議論百出し、疑問の声も根強かった「Go Toトラベルキャンペーン」。実施当初は、主に旅行業界から歓迎する声も上がりましたが、このところの新型コロナウイルス感染拡大を受けてふたたび反対意見が高まり、三連休明けの11月24日夜、「今後3週間、札幌市と大阪市を目的地とする旅行はGo Toトラベルの対象外」とする決定が発表されました。その一方で、この2市を「出発地」とする旅行は引き続き対象とし、また2市以上に感染者が増加している東京都に関しては判断を保留するなど、政府の判断基準や対策の実効性については疑問視されています。そもそも、今回のいわゆる「第三波」については、感染拡大の原因究明もまともになされておらず、場当たり的な対策を散発するばかりで、国も自治体も迷走している感が否めません(一部では「第一波、第二波が収束したわけではなく、『第一波が継続しており、感染拡大の3度目のピークを迎えつつある状況』というのが正しい」という意見もありますが、ここでは便宜上「第三波」と表記します)。すでに新型コロナウイルスの感染のメカニズムはある程度明らかになっており、「どのような対策が感染防止に有効か?」についても、経験則としてそれなりに積み重ねてきているわけですから、菅政権にはいい加減そろそろ何とかしてほしいものです。

さて、同じ11月24日付の『朝日新聞デジタル』には「単身高齢者×外国人 女性を支え合うシェアハウス誕生へ」( https://www.asahi.com/articles/ASNCR74X9NBQPTIL033.html )という、松尾慈子記者による署名記事が掲載されました。以下、抜粋して引用します。
「不動産を借りにくい高齢のシングル女性と、介護福祉士として働くために来日した外国人女性がともに暮らすシェアハウスが来春、大阪市住吉区に誕生する。空き家となった築約60年の集合住宅を生かす取り組みだ。困ったときにお互いが助け合う。そんな関係を築ける家をめざす。
 女性専用シェアハウス『コモンフルール』は木造2階建てで延べ床面積約189平方メートル。9室を備え、1階は60歳以上のシングル女性3人、2階は外国人6人が住めるようにする。
 風呂とトイレは共用。1階のキッチンはリビング、ダイニングと一体化し、みんなが集まれるよう大きなテーブルを置く予定だ。
 外国人女性たちには異国暮らしの不安を軽くし、シングル女性たちがいざという時には見守ってもらう。双方がゆるやかに支え合う暮らしが目標だ。
 元の建物は『文化住宅』といわれる老朽化した集合住宅だ。シェアハウスにするにあたり、大阪市立大の石山央樹准教授が耐震補強を担当し、学生の学びの場としても活用している。(中略)
 リフォームは、大阪市阿倍野区の不動産会社・西都ハウジングの松尾重信さん(41)が企画した。『不動産を借りるのが難しい立場の人たちに住まいを』との思いが出発点だ。
 猛烈な風雨が府内を襲った一昨年の台風21号の後、住宅に被害を受けた単身の高齢者らが、建て替え中に仮住まいするアパートさえなかなか貸してもらえない実情を目の当たりにした。
 昨年2月にカンボジアを訪れた。日本の介護福祉士の資格取得をめざし、日本語と介護技術を学ぶ現地校の学生らを見て、『彼女らが日本に来たとき、部屋を借りるのに困らないようにしたい』と思った。
 一般社団法人『大正・港エリア空き家活用協議会』も企画に加わり、国の高齢者向け住居整備モデル事業の助成金も得た。
 周辺は古くからの住宅地で、地域のつながりが強い。『住む人同士が関わり合いを持てるのはもちろん、地域の人にも開かれた場所にしたい』。設計を担当する横山俊祐・大阪市立大名誉教授(建築計画)は工夫をこらした。
 リビングの窓は大きくし、外のポーチにそのまま出られるようにする。『リビングやポーチでカフェや音楽会などを開き、入居者と地域の人が一緒に集まれたら』と横山さんは話す。
 入居は来年2〜3月ごろ。賃料は4万円台(共益費など別)で検討している。(後略)
(2020年11月24日 15時40分 松尾慈子)」
要するに、戸建て空き家をリノベーションしてシェアハウス化する、という話で、それ自体はさほど目新しいことではありませんが、「高齢女性」と「外国人女性」をともにターゲットとすることで、双方にとってメリットがあるように考えられたプランということができます。とはいえ、両者の同居がうまくいくためには、言葉や風俗習慣の違いなどさまざまな問題も想定されますから、入居者の選定には慎重を期す必要があるでしょうし、「地域のつながりが強い、古くからの住宅地」というのはシェアハウスにとって必ずしも好条件とは限りませんから、実現に向けてはまだまだ多くの問題が山積しているはず。アイデア倒れにならなければいいのですが……。

これに先立つ11月6日には、やはり『朝日新聞デジタル』に次のような記事も掲載されました。場所も同じ大阪府のニュースで、女性記者による署名記事であることも共通しています。こちらは花房吾早子記者による「国内外の学生が教員や地域と交流 阪大に新『ビレッジ』」( https://www.asahi.com/articles/ASNC572WBNBJPTIL00B.html )という記事です。以下、全文引用します。
「学生寮と教職員宿舎、高齢者向け住宅とシェアハウスなどが集まる『大阪大学グローバルビレッジ津雲台』が大阪府吹田市津雲台5丁目にオープンした。全国最大級の大学の寮だ。学生がさまざまな人とともに暮らし、交流を通して学ぶことをめざす。
 『文化、言語、ジェンダーを超えた多様性を育む環境を充実させ、グローバルな大学へ進化していく』。ビレッジのオープンを祝う10月14日の式典で、阪大の西尾章治郎総長は述べた。
 ビレッジは老朽化した教職員宿舎の跡地に建てられた。阪急・大阪モノレール山田駅から徒歩数分の丘陵地にある。阪大の各キャンパスまで30分圏内だ。パナソニックホームズ(豊中市)を代表とする計3社が事業主体で、総事業費は約123億円。民間資金を使うPFI方式を採用した。
 最大300個室がある学生寮は10月から入居が始まった。新型コロナウイルスの影響で想定より少ないが、来春までに日本人36人、留学生94人が入る予定だ。5〜9人のユニットごとに居間や台所、シャワー、トイレを共用する。共同浴場もある。
 西アフリカ・ギニアのサイモン・ポゴラムさん(27)も入居した一人。同ユニットの日本人とタイ人学生から洗濯機などの使い方を教わり、一緒に食料品を買いに行っている。まだ日本語を話せないが、『2人のおかげで想像よりずっとずっと楽しい』。
 日本語を勉強した後、大学院経済学研究科修士課程に進む予定で、母国の農業ビジネスを発展させるため、日本の経営者から学びたいという。
 人と人が交じり合う空間を充実させたのがビレッジの特徴だ。最大400世帯の教職員宿舎とつながっており、本棚があるラウンジや日本文化を感じられる和室を共用する。扉や仕切りのないコミュニティスペースでは、学生と教職員がともに研究課題や異文化を学ぶ催しを開いていく。
 ビレッジ内には、民間のサービス付き高齢者向け住宅(55室)やシェアハウス(85室)、賃貸マンション(99室)もできた。クリニックやレストラン、阪大の研究を生かした運動施設なども併設している。健康や食育といったテーマで周辺の住民らとの交流を深めることも想定されている。
 阪大ハウジング課の祖父江智香・専門職員は『いろいろな人が交流することで新しいアイデアが生み出される。学生が共創できる環境をつくりたい』と話す。
 阪大は来年4月、箕面市にも同様のグローバルビレッジを開く。(2020年11月6日 10時00分 花房吾早子)」
こちらは大手資本が参入し、規模もはるかに大きく、施設も「学生寮」「教職員宿舎」「サービス付き高齢者向け住宅」「シェアハウス」「賃貸マンション」がそれぞれ別棟となっていることから、前述の事例とはまったく別のケースと言えますが、総長の語るビレッジ全体の構想にはある程度共通する要素もあるようです。もちろん、「古くからの住宅地」に1棟ポツンとシェアハウスをつくるより実現性は高いでしょうが、大学側の期待するような成果が上がるかどうかは、今後の共同体の運営如何にかかってくると思われます。

ここで少々古い話題になりますが、10月15日付の『全国賃貸住宅新聞』に「日本シェアハウス連盟、20年シェアハウス市場調査」( https://www.zenchin.com/news/post-5521.php )という記事が掲載されました。こちらは、一般社団法人日本シェアハウス連盟( http://japansharehouse.sakura.ne.jp/cms/ )が実施している市場調査ですが、ホームページでは公開しておらず、プレスリリース等のリンクも貼られていません。『全国賃貸住宅新聞』については前回の当コラムでも紹介しておりますが、会員登録すれば無料で上記記事を全文閲覧することができます。興味のある方はお読みになることをおすすめいたします。ただし、上記記事にもそれほど詳しい内容が掲載されているわけではないので、さらに詳細なデータを必要とされる方は、日本シェアハウス連盟に直接問い合わせれば、あるいは有料にて配布してくれるかもしれません。
その他、最近報じられたシェアハウス関連の話題としては、「シェアハウスに設置可能なリモートワーク用の新型フォンブースを開発」「シェアハウスの感染症対策として紫外線照射装置を設置」など、現在のコロナ禍への対応を打ち出したものが目につきます。いずれも企業広告の類ですから、実効性について検証することはできませんが、それぞれが現状打破のために知恵を絞り、工夫を重ねている姿勢には学ぶべきものがあると思います。ただ手をこまねいてコロナ禍の現状に泣き言を並べているよりは、「禍転じて福となす」発想を持ったほうが、はるかに前向きで建設的な態度ではないでしょうか。
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