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シェアハウス コロナ 緊急事態宣言 DX デジタルトランスフォーメーション 年頭挨拶

第88回 2021年とシェアハウス

皆様、あけましておめでとうございます。本年も当コラムをよろしくお願い申し上げます。
すでに皆様もご存じの通り、2021年1月7日、政府は首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を出すことを決定しております。新型コロナウイルスの新規感染者数は昨年12月31日に東京で1337人と初めて1000人を超え、全国で4520人と過去最多を更新したのを皮切りに、年が明けて1月5日には東京で1278人、全国で4912人となり、翌6日の速報値では東京だけで1500人超と報告されました。こうした状況を受けて、仕事始めの1月4日月曜日には1都3県の知事から政府に対して緊急事態宣言の発出を求める要請が行われ、同日中には週内の発出がほぼ確定しています。加藤勝信内閣官房長官は6日に行われた記者会見で、緊急事態宣言のもとで講じる措置について「感染の機会を可及的速やかに低減するため、飲食のリスクの軽減を実効的に実施する必要な対策をしっかりと集中的に行いたい」と述べております。具体的には、「飲食店舗に対する営業時間短縮要請(20時まで)」と「都・県民に対する20時以降の不要不急の外出自粛要請」といったところで、要請に応じた飲食業者への協力金や補償については、現時点では明確な基準を提示しておりません。昨年4月の緊急事態宣言では、約1ヶ月間で新規感染者数を減少させることに成功したものの、当時と今とでは感染拡大の規模がケタ違いであり、果たしてどこまで効果を期待できるものか、予断を許さない状況にあります。

さて、例年のことではありますが、今年も新年1回目の当コラムでは、(株)不動産流通研究所が運営する不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』に掲載された「2021年 年頭挨拶」(業界団体等)の記事( https://www.re-port.net/article/news/0000064443/ )から入りたいと思います。

まずは、新政権発足後も留任されている赤羽一嘉国土交通大臣のコメントから。さすがに昨年来のコロナ禍に配慮してか、「おめでとうございます」等の文言はありません。赤羽大臣はまず、昨年12月に閣議決定された「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」の3本の柱(■新型コロナウイルス感染症の拡大防止策 ■ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現 ■防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保)について述べ、これに対する国交省としての取り組みとして、
(1)新型コロナウイルス感染拡大防止と社会経済活動の両立
(2)防災・減災が主流となる安全・安心な社会づくり
(3)人口減少と少子高齢化社会への挑戦
の3本の柱を挙げています。以下、シェアハウス大家さんに関連のありそうな内容を抜粋して引用していきましょう。
「(1)新型コロナウイルス感染拡大防止と社会経済活動の両立
(住宅投資の喚起に向けた取組)
住宅投資は経済波及効果が大きいことから、住宅投資を喚起することにより、民需主導の成長軌道に戻し、日本経済全体を回復させていくことが重要です。
 そこで、令和3年度税制改正において、住宅ローン減税について、契約期限と入居期限を1年延長し、令和4年末までの入居者に控除期間13年の措置を適用するほか、住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置の拡充や、これらの特例に係る床面積要件を50平方メートル以上から40平方メートル以上へと緩和する等の措置を講じたところです。
 また、予算上の措置としても、令和2年度第3次補正予算案に、高い省エネ性能を有する住宅を取得する者等に対して、商品や追加工事と交換できるポイントを発行するグリーン住宅ポイント制度を盛り込みました。
 住宅投資を喚起する税制・予算措置等を通じ、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復に向け、全力で取り組んでまいります。(中略)
(3)人口減少と少子高齢化社会への挑戦
 (『新たな日常』に対応した持続可能な地域社会の形成)
新型コロナウイルス危機を契機として、『働き方』、『住まい方』、そして『人の生き方』に大きな変化がもたらされています。一方で、デジタル化やオンライン化などが一気に進展し、場所にとらわれない『働き方』や『住まい方』が可能になってきました。その結果、テレワークやワーケーション、2拠点居住やふるさと回帰といった動きが現れてきております。例えば、東京都からの転出人口が、転入人口を上回る現象が昨年7月から11月までの5か月連続で続いていることも、その予兆の一つだと思われます。こうした変化に対応して、移住や2拠点居住等も含めたコロナ後を見据えた『国土の長期展望』の検討を進めつつ、テレワーク拠点の整備等職住近接のまちづくりや、緑とオープンスペースの充実等ゆとりのある都市空間の創出など、人々のライフスタイルに応じた選択肢を広げることができるようなまちづくりを進めてまいります。(中略)
 空き家対策については、『空家等対策の推進に関する特別措置法』に基づき、個々の地方公共団体が行う指導・助言、行政代執行等の措置や、空き家の除却・利活用等に対する支援などに積極的に取り組んでいるところです。さらに、空き家等の流通・マッチングや再生を図るため、『全国版空き家・空き地バンク』の活用を促進し、空き家の利活用・流通促進に取り組んでまいります。(中略)
また、昨年法制化した『賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律』におけるサブリース規制の新たなルールについて、建設・不動産などの関係業界や賃貸住宅のオーナーの方々への周知を徹底し、サブリース契約をめぐるトラブルの未然防止を図るとともに、本年6月予定の賃貸住宅管理業登録制度のスタートに向けた準備をしっかりと進めることで、サブリースを含む賃貸住宅管理業の適正化を図ってまいります。(中略)
 子育て世帯や高齢者など誰もが安心して暮らせる住生活を実現するため、地方公共団体や関係省庁と連携し、新たな住宅セーフティネット制度に基づき、民間の空き家・空き室を住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅として活用する取組や、各地の居住支援活動に対する支援、福祉・住宅分野の連携により住まいに関する相談をワンストップで受ける体制の整備を行うとともに、サービス付き高齢者向け住宅の整備等を進めてまいります。(中略)
国土交通省としても、ウィズ・コロナの時代における社会経済構造や生活様式の変化を踏まえ、豊かで暮らしやすい地域づくりに取り組むほか、国土のあり方について長期展望を提示するとともに、関係省庁と連携し2拠点居住やワーケーションを推進するなど、適切な施策を講じてまいります。(後略)」

この赤羽大臣のコメントに限りませんが、1年前の「東京オリンピック開催」に向けた楽観論はすっかり陰を潜め、厳しい現実の中でいかに前向きな姿勢を示すか、苦慮している論調が目立ちます。無論、業界団体のお歴々のコメントも同様です。

たとえば、(一社)不動産協会の菰田正信理事長は「我が国経済は戦後最大の落ち込みとなっており、足元では若干の持ち直しの動きも見られますが、その水準は低く、業種によってばらつきがある状態であるとともに、個人消費や設備投資も弱い動きとなっています」と現状を総括した上で、「今年の展望については、新型コロナウイルス感染症がどう収束するかが最大のポイントとなります。最短でも今年一杯は、感染者の数も増減を繰り返し、増加したときには経済活動も何等かの制限が課され、人々は感染に対する漠然とした不安を抱えながら生活するという状態、つまり、ウイルスとの共生が続くことになると思われます。感染防止策を徹底しながら経済活動を着実に回復させていくことが重要です」と述べています。また、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会の坂本久会長は「昨年末より欧州にてワクチン接種が始まりましたが、我が国でも接種体制の整備が急務であります」、(公社)全日本不動産協会の原嶋和利理事長は「我が国でも、それまでの賑わいが幻であったかの如く繁華街から瞬く間に人の姿が見えなくなりました。その結果、飲食業界、観光業界をはじめとして産業全体が大きな打撃を受け、我が不動産業界にあってもとりわけテナントビジネスを中心に大きな混乱がもたらされたのはご存知のとおりです」、(一社)不動産流通経営協会の山代裕彦理事長は「わが国の経済は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により、依然として厳しい状況にあり、昨年11月以降の再拡大の状況のもと、経済の下押し圧力が増しています。(中略)既存住宅流通市場においては、緊急事態宣言に伴う外出自粛や営業休止の影響により、住宅仲介の取引は4・5月に大きく減少しましたが、足元では前年水準まで回復してきています。しかしながら、コロナ禍が市場に及ぼす影響は予測し難く、今後も、予断を許さない状況が暫く続くものと思われます」、(一社)全国住宅産業協会の馬場研治会長も「経済状況を見ますと、国内外の諸活動が停滞したことにより、雇用情勢の悪化、所得の減少、消費の減退という悪循環に陥り、着工戸数の長期にわたる減少など住宅市場も低迷しています。併せて建設コストの高止まりと事業用地の取得難から新築住宅の価格は年々上昇し、住宅取得を希望する若年層をはじめ庶民の所得とは大きな乖離が生じています」……といった調子で、表現に多少の違いはあれ、厳しい経済環境と先行きの不透明感をくり返し訴えております。

こうした中で、例外的に(一社)マンション管理業協会の岡本潮理事長はコロナ禍については直接言及せず、同協会の推進してきた「ITを活用した重要事項説明の実施」を切り口として、「業界のDX化」という大きな目標を掲げていました。この「DX」、すなわち「デジタルトランスフォーメーション」については、前述した赤羽大臣をはじめ、菰田理事長、坂本会長、原嶋理事長、また(一社)不動産証券化協会の杉山博孝会長らも口を揃えて指摘しており、どうやらこれが2021年の不動産業界および日本経済における「明るい未来」を示すキーワードになっているようです。とはいえ、これは、単に耳新しい用語をもてはやしているだけではないか――という疑問も正直なところ否めません。すでに手垢のついた感のある「IT革命」などの用語と比べて、具体的にどこがどう違うのか、説得力のある説明のできる人がどれだけいるでしょうか。参考までに(株)モンスター・ラボが運営するWeb情報サイト『MONST☆RLAB』によると、「デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること。既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの」と解説されています。
もうひとつ、これも複数の方が言及されている用語に「カーボンニュートラル」がありますが、これも従来の「低/脱炭素化社会」などに比べて用語として多少は耳新しく、また、昨秋の政権発足後、菅義偉首相が所信表明演説の中で「2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)にする」という政策目標を掲げているから……というだけで用いているのではないか、との疑問もあります。

いずれにせよ、今回の冒頭でも述べている通り、1月7日には再度の緊急事態宣言が発出されることになります。仮に政府から補償や協力金が支給されるにせよ、その財源となるのは我々の納める税金であり、その反動は近い将来の大増税となって国民一人ひとりの肩に重くのしかかってくるはずです。新年早々のコラムとしてはあまりにも暗い話題に終始してしまい、心苦しい限りですが、今回ばかりは無責任な楽観論を支持することはできません。せめて、私たち全員が心を一つにして、この未曽有の苦難を、力を合わせて乗り越えていけることを祈念したいと存じます。
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