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シェアハウス コロナ 緊急事態宣言 延長 景況感 女性活躍

第89回 景況感とシェアハウス

2月15日に内閣府が発表した「2020年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値」によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は対前期比3.0%増で、2四半期連続のプラス成長となりましたが、2020年の通年では対前年比4.8%減となり、リーマンショック後の2009年以来11年ぶりのマイナス成長となりました。
調査対象となる昨秋(10〜12月)の段階では、Go Toキャンペーンが中断される前の期間も含まれており、「勝負の3週間」とやらはかけ声ばかりでまったくの無為無策でした。さらに、昨年前半(1〜6月)の落ち込みの反動もありますから、経済がいくらかでも上向くのはごく当たり前の現象でしょう。これについて、西村康稔経済再生担当大臣は「経済は依然としてコロナ前の水準を下回っており、回復は道半ばだ」との談話を発表したそうですが、「道半ば」も何も……Go Toキャンペーンなどはしょせん、一時的なカンフル剤の効果しかないのですから、そもそも回復の途についてさえいないのは明白です。しかも、再度の緊急事態宣言発出と、その期間延長により、2021年1〜3月期が対前期比大幅減となることは間違いないでしょう。日本でも遅まきながらようやくワクチン接種が始まりそうですが、感染拡大防止施策と景気回復施策の両立にはまだまだ時間がかかると思われます。

さて、2月9日には(株)LIFULLによる「2021年 LIFULL HOME’S 住みたい街ランキング」(首都圏版)( https://www.homes.co.jp/cont/s_ranking/shutoken/ )が発表されました。これは、同社が2020年1月1日〜12月31日の期間、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の「LIFULL HOME'S」ユーザーを対象に調査を実施したもので、今回が第7回目となります。
「借りて住みたい街(駅)」のランキング上位は、1位が「本厚木」(前回4位)、2位が「大宮」(同5位)、3位が「葛西」(同2位)、4位が「八王子」(同7位)となり、5位にようやく、前回まで4年連続トップの「池袋」(同1位)……という順となりました。6位以下では、「千葉」(14位→6位)、「三鷹」(17位→8位)、「柏」(16位→9位)というあたりの変動が目立ちます。同社の分析については、以下に抜粋・引用した通りです。
「(前略)賃貸需要は従来、都心・近郊でどこに移動するにも便利であること、生活利便施設がそろっていて買い物や飲食などに困らないこと、通勤・通学だけでなく余暇を過ごす際にも便利であることなどが人気の条件として挙げられており、前回まではこれらの条件をバランスよく満たしているエリアの名前が上位を占めていました。それが、コロナ禍によって賃貸ユーザーの意向に大きな変化が発生し、感染リスクのより低いエリアに転居したい、またテレワークの実施で毎日通勤しないのであれば、家賃相場が比較的安価な郊外方面で生活したいという要望などが顕在化したものと考えられます(後略)」
一方、「買って住みたい街(駅)」は、1位こそ「勝どき」(同1位)が2年連続トップの座に輝きましたが、2位は「白金高輪」(同19位)、3位に「本厚木」(同11位)、4位が「三鷹」(同3位)、5位が「北浦和」(同6位)となっており、2位3位に大きな変動がありました。6位以下では、「柏」(15位→7位)「目黒」(21位→9位)あたりが目立ちます。これについての同社の分析も、抜粋・引用してみましょう。
「(前略)2020年に大型開発や道路整備事業で物件が多数分譲され話題になったエリアが上位に進出しており、都心一等地の人気はコロナ禍にあっても依然高いことが明らかです。これはコロナ後を想定して利便性と資産性の高い都心周辺エリアに買って住みたいというニーズ、もしくはコロナ禍で移動の少ない職住近接を実現したいニーズが反映されているものと考えられます。(中略)
首都圏で住宅地としての評価が高く、交通と生活の利便性のバランスが良好なエリアは上位をキープしています。(中略)
こういった従来の利便性重視という選択は見受けられるものの、一方でコロナ禍ではテレワークに対応するように住みたい街の郊外化も発生しています。(中略)
首都圏の「買って住みたい街」は、共に新型コロナの影響によって都心周辺と郊外方面のベッドタウンがニーズの高まりを示すという“二極化”の傾向が鮮明になりました」
なお、「借りたい」1位・「買いたい」3位にランキングされ、俄然注目を集めている「本厚木」が象徴的ですが、コロナ禍においてはコストの低さに魅力を感じる借り手・買い手が一定数いることは間違いないものの、ただそれだけで特定の街にこれほど人気が集中することは考えにくく、また、「本厚木」よりコストの低い街は、調査対象である1都3県の中にはいくらでもあります。やはり、居住環境と都心方面へのアクセスの良さに加え、ランクを落とした他の街に比べて「(相対的に)マイナスポイントが少なかった」、という部分が大きかったのではないでしょうか。

また、2月5日には、(一社)住宅生産月末団体連合会が2020年度第4回「経営者の住宅景況感調査」( https://www.judanren.or.jp/activity/proposal-activity/report01/202101/keiko_02.html )の結果を発表しています。これは受注戸数・受注金額の直近3ヶ月間の実績、ならびに向こう3ヶ月間の見通しを、前年同期比で調査、指数化しているもので、住団連と傘下団体の法人会員15社から回答を得てまとめたものです。これによると、2020年度第3四半期(10〜12月)の受注実績は、総受注戸数はマイナス30、総受注金額はマイナス20と、7期連続のマイナスとなりました。住団連では「消費税率再引き上げ後の住宅需要の落ち込みから回復しないうちに発生した新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響した」と分析しています。このうち、第2四半期(7〜9月)には住宅ローン減税の駆け込み需要で6期ぶりにプラスとなった戸建注文住宅は、受注戸数はマイナス18、受注金額はマイナス21といずれも再びマイナスに転じました。一方、戸建分譲住宅は、受注戸数プラス28、受注金額プラス2と2期連続のプラスとなっています。これは、注文住宅が9月末までの請負契約締結を住宅ローン減税の適用条件としていたのに対して、分譲住宅は11月末までの分譲契約締結が適用条件であったため、駆け込み需要が発生したものと考えられています。向こう3ヶ月(2021年1〜3月)の予測は、総受注戸数マイナス72、総受注金額マイナス61で、依然厳しい状況が続くという見通しです。いずれにしても、今後、住宅景況感が好転に向かうまでには、まだまだ越えなければならないハードルがいくつもあると考えたほうがよさそうです。例えば今後、ワクチン接種の本格的実施などによってコロナ禍が収束に向かったとしても、経済の回復や顧客層の所得の伸びなどがネックとなりますから、ただちに景況感が好転することは考えにくいでしょう。

シェアハウス大家さんにとっては、2021年も昨年に引き続き、辛抱と忍耐の年となりそうですが……とはいえ、周囲を見渡せば、明るい話題がまったくないわけでもありません。例えば、1月31日付の『朝日新聞デジタル』に掲載された「空き家をおしゃれなシェアハウスに 岐阜女子大生が提案( https://www.asahi.com/articles/ASP1Z6VMPP1POHGB013.html )」というタイトルの高木文子記者による署名記事があります。例によって全文引用してみましょう。
「岐阜女子大学(岐阜市)の学生の提案をもとに、岐阜県山県市の空き家が女性用のシェアハウスに改修中だ。リビングをおしゃれなカフェ風にしたり、ポップな色合いの個室を設けたり。4月の完成をめざし、学生も内装工事を手伝う。
 改修するのは、築30年ほどの2階建て民家(延べ約100平方メートル)。岐阜市中心部から車で20分ほどの住宅街にある。4人用のシェアハウスにする計画で、所有する不動産賃貸会社が同大に提案を募った。
 同大生活科学科では、2018年から各務原市で空き家の改修に携わってきた。今回も実習の一環として、昨夏から住居学専攻の学生がデザインを練った。
 4LDKの間取りを生かし、改修後は四つの個室とリビングを設ける。リビングは落ち着いた青と白の壁紙にして、入り口を2カ所に増やした。「みんなが集まりやすくて会話が弾む場所になれば」と大西愛結さん(3年)。個室はポップな黄や青を基調にした部屋と、モノトーンの色調の部屋がある。
 住居学専攻の学生は、卒業後に建築士として住宅会社などで働くことも多い。昨年10月から改修工事が始まり、3年生15人ほどが壁紙のはり替えなどを手伝ってきた。横山葵さん(3年)は「提案が本当に実現していく姿に驚いている。内装職人の仕事も知ることができた」と話す。
 物件を所有する「キーシュトバム」(名古屋市)の桜木智恵代表(44)は「空き家問題は全国的な課題と考えて活用をめざしている。若い感性を生かしたシェアハウスに生まれ変わることで、まちの活性化につながれば」と話している。
(2021年1月31日 10時30分/高木文子)」
さて、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、この記事にはある特徴があります。「岐阜女子大学」の学生たちが企画から改修工事にまで携わり、「女性用」のシェアハウスをつくる計画で、記事に登場する学生たちはもちろん、物件を所有する企業の代表者も名前からしておそらく女性、取材して記事をまとめたのも女性記者。すなわち、「女性の、女性による、女性のための」シェアハウス、という記事なのです。そこで思い出さずにはいられないのが、五輪組織委員会の会長であった森喜朗元首相による例の「女性差別発言」事件。これは2月3日のことで、上記の記事は1月31日ですから、言うまでもなく、因果関係はまったくありませんが……。「女性の活躍」を前面に打ち出すことが、多少なりとも明るい話題につながるのであれば、現在のコロナ禍を乗り越えていくためには、「女性の活躍に期待する」ということもひとつの可能性と言えるかもしれません。
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