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シェアハウス コロナ 緊急事態宣言 解除 東京五輪

第92回 コロナ禍とシェアハウス

6月20日まで――と再延長が決まった、昨春から3度目の緊急事態宣言も、まもなく解除予定日を迎えようとしています。6月14日に発表された新規感染者数は936人と、3月22日以来じつに84日ぶりに全国で1,000人を割り込み、群馬県、石川県など一部のまん延防止重点措置指定地区では解除の動きも出てきています。その一方で、IOC幹部らの来日のニュースも報じられるようになり、彼らは口を揃えて「緊急事態宣言下でも東京五輪開催は可能!」と高らかに明言しておりますが……。開催当事国である日本国民、東京都民の意見を反映しているとは到底思えない、はじめから「結論ありき」の態度は民主主義の議論とは言えません。また、野党陣営の中には「反対を押し切って強引に開催した上でリバウンドによる感染拡大が起きれば、その責任を追及することで政権交代も……」などと政治的野心を抱いている輩も少なからずいるようです。菅総理の言う「安全安心」のお題目のそらぞらしさも含めて、賛成派も反対派もこぞってオリンピックの政治利用しか念頭にないように思えてなりません。今後、事態がどう転ぶとしても、史上空前絶後の、きわめて後味の悪い東京五輪となることは避けられないと思っていた方がよいでしょう。

さて、今回はまず、すべてのシェアハウス大家さんにとって他人事ではない、もっとも身近な話題から参りましょう。6月10日、KTV関西テレビ放送の運営するニュースサイト『カンテレNEWS』で報じられた、「兵庫県で50人の感染確認 シェアハウスで住民5人全員が感染( https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/ktv_news/region/ktv_news-3793064a_4d12_4221_b931_1128644f80ee )」というニュースから、前半部分を引用します。
「兵庫県は10日、新型コロナウイルスへの新たな感染者は50人と発表しました。
尼崎市によると、市内のシェアハウスで共同生活していた20〜30代の男子学生5人全員が感染しました。
このシェアハウスは一戸建て住宅で、台所・トイレ・浴室は共用でしたが、食事は基本的に別々だったということです。
5人とも発熱や倦怠感などの軽症で、尼崎市は宿泊療養施設への入所を勧めています。(後略)
(『カンテレNEWS』2021年06月10日22時31分更新)」
兵庫県を含む関西地方は、皆様ご存じの通り、今回の3度目の緊急事態宣言発出のきっかけとなった地域でした。ピーク時には連日数百人〜1000人単位で新規感染者が確認されていましたが、この日は全県で50人とだいぶ下火になってきています。その中で、当コラムがことさらこのニュースに注目するのは、今回のコロナ禍の中でおそらく初めて「シェアハウス」がクラスターの発生源として名指しされているからです。シェアハウス住人のコロナ感染自体は、今や別に珍しい出来事でもないのでしょうが、「5人が暮らすシェアハウスで5人全員が感染」という状況は見過ごせません。住人の誰がどこで感染し、それがハウス内でどのように蔓延していったのか、詳しい事情はわかりませんが(おそらく、続報も期待できないでしょう)、それだけに、無責任な噂が拡がることや、シェアハウスそのものの悪評につながりかねない懸念さえあります。普通に考えれば、一般の家庭内での感染拡大と状況は同じですから、ことさらシェアハウスだけを槍玉に上げる必要はないものと思われますが……。まかり間違ってこの件が炎上すれば、無関係のシェアハウスにまで飛び火する恐れもないとは言えません。シェアハウス大家さんとしては、自身の運営するハウス内での感染状況には、今後ともより一層注意していくことが望ましいでしょう。

とはいえ、現在のコロナ禍にひたすら頭を低くしてやり過ごそうと守勢に徹しているシェアハウスばかりではありません。逆に、現状を追い風に転じるべく、積極的に攻めの姿勢を見せている運営業者も中には存在するようです。たとえば、(株)ジェイ・キャストが運営する『J-CASTニュース』では6月12日付で次のような記事が掲載されました。
「現代版『トキワ荘』が誕生!団地リノベでシェアハウスに すでにほぼ満室、『漫画家が切磋琢磨できる場に』企画者が込めた思い」( https://www.j-cast.com/2021/06/12413694.html?cx_testId=5&cx_testVariant=cx_8&cx_artPos=0?cx_recsWidget=undefined&cx_recsOrder=2#cxrecs_s )という記事です。見出しにある通り、ややニッチな層を対象としたマニアックな内容ですが、一部抜粋してご紹介します。
「手塚治虫、藤子不二雄ら有名漫画家たちが居住していたことで知られる『トキワ荘』。その名を冠した漫画家、漫画家志望者向けの大規模シェアハウス『多摩トキワソウ団地』が2021年6月1日、東京日野市に誕生した。
コロナ禍でリモートワークが普及した日本。自宅で一人仕事ができることを歓迎する人も多い中、なぜ『対面』の空間づくりにこだわったのか。(中略)
築50年を超える団地を改装したシェアハウス『りえんと多摩平』だ。この一区画に、漫画家たちが暮らすシェアハウス『多摩トキワソウ団地』はある。
シェアハウスは個室3室で1ユニットを構成し、各室にデスク、ベッド、エアコン、冷蔵庫を標準装備。共用部のラウンジでは、ほかのユニットに住む仲間とコミュニケーションがとれる。家賃・管理費含め、5万円台から居住可能だ。
運営するのは、特定非営利活動法人のNEWVERY(東京都)。首都圏で漫画家向けシェアハウス事業『トキワ荘プロジェクト』を展開し、これまで120人以上のプロを輩出してきた。今回の多摩トキワソウ団地には、既存のシェアハウス7棟を集約する目的もあるが、NEWVERYの菊池蓉子さんは6月7日、J-CASTニュースの取材にこう話す。
『多くの作家さんが共同生活をすることで、いろいろな価値観、人生観を知り、作家としての視野が広がっていくのではないか。そう考え、多摩トキワソウ団地をオープンしました』
6月1日にオープンした多摩トキワソウ団地。取材日時点で、定員29室のうち28室で入居が決まった。今後はさらに部屋を増やす予定だという。(中略)
『もともとトキワ荘は(手塚治虫さんのような)大先生がいて、それに師事する弟子たちがどんどん入ってくるという構造だった。トキワ荘プロジェクトでも、漫画家志望でシェアハウスに入居した人が実際に漫画家デビューを果たして、ほかの居住者にアシスタントをお願いする、という動きが自然発生的に起こっている。この点は、昔のトキワ荘を彷彿(ほうふつ)とさせるなと思います。多摩トキワソウ団地も、やがてそうなってくれるんじゃないかな、と期待しています』(菊池さん)(中略)
ただ、今はコロナ禍だ。リモートワークの普及で『自宅での一人仕事、一人作業』が定着しつつあり、それを歓迎する人も少なくないだろう。なぜ『対面』の空間づくりにこだわったのか。菊池さんは、次のように思いを語る。
『コロナ禍だからこそ、というのもあります。確かに漫画家は一人で作業するものではあります。ただ、コロナ禍以降は「他人と話せない」といった閉塞(へいそく)感から、単に一人暮らしをするより、同じように漫画の道を志す人が集まる空間で暮らしたい、という方の応募が(トキワ荘プロジェクトでは)増えています』(中略)
コロナ後には地域交流などを通じ、居住者の作家性を広げる活動をしていきたいと語る菊池さん。『多くの人に感動を与えたり、人の心を動かしたりする作家を多摩トキワソウ団地から輩出できたら』と思いを口にした。
(2021年06月12日06時00分更新)」
話は少々逸れますが――昨今は深刻なコロナ不況で、景気の悪いニュースばかりが目につく中にあって、昨秋の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』や今春の『シン・エヴァンゲリオン 劇場版:||』などのアニメーション映画は空前の大ヒットを飛ばしています。そもそも、漫画やアニメを“日本固有の文化”として海外へ積極的に発信していこう、という意見は、少し前までは一部の政治家が「国策として」国の主導で行おうとしていたくらいでしたが、さすがにコロナ禍以降は「今はそれどころではあるまい」とでも思ったものか、最近ではそうした論調はすっかり陰を潜めています。にもかかわらず、不況の中で明るい話題を提供できているのが、けっきょくは漫画とアニメだけ……という現状を鑑みると、こういう「文化」というものは、政治家の意図した通りには決して動かないものなのかもしれません。この「多摩トキワソウ団地」のプロジェクトが成功するかどうかは今のところ未知数ですが、こうしたNPOによる草の根的な活動により、国が主導する以上の効果を上げていくことができれば、そこに現状を打破する何らかのヒントがあるのではないでしょうか。

もう一つ、やはりシェアハウスを舞台装置とした同様の取り組みの話題を紹介しておきましょう。これはオリジナル(株)の運営するWebサイト『タイムアウト東京』に掲載された記事で、いわゆるニュースポータルの報道記事とはやや性質が違いますが、シェアハウス大家さんにとっては参考になる試みではないかと思われます。
「Z世代の起業家をサポートするシェアハウスが新宿3丁目にオープン 25歳以下の若者に『住める起業家育成プログラム』など」( https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/share-house-to-support-gen-z-entrepreneurs-opens-in-shinjuku-3-chome-052821 )(2021年5月28日10:00更新)
こちらはタイトルにある通り、「これから起業したいと考えている25歳以下の世代」に対象者を限定して「コロナ禍で空いてしまったゲストハウスやホテルなどを活用して運営されている短期シェアハウス」とのことで、期間は「6月1日(火)から6月31日(水)の間(※原文ママ。30日までの誤りか?)」となっています。具体的な内容については上記のリンク先をご参照ください。
漫画家の卵にせよ、起業家の卵にせよ、シェアハウスというライフスタイルや住まい方のメリットを活用して、新たな可能性を生み出す取り組みが次々に生まれてきている現状は、シェアハウス業界にとっては希望をもたらす明るい話題と言えるでしょう。無論、それぞれ専門的なノウハウも必要になるでしょうし、誰にでも簡単にマネのできるようなアイデアではありませんが、「自らが運営するシェアハウス」という器をすでにお持ちのシェアハウス大家さんにしてみれば、スタート時点で一定のアドバンテージを保持しているということができます。だからといって軽はずみなチャレンジを推奨するわけではありませんが、せっかく保有しているシェアハウスを「諦めて、手放す」という以外の選択肢を残しておくことは、これからの時代を生き残っていく上で必要になることではないでしょうか。
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