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シェアハウス コロナ 時短営業解除 不動産市況 アンケート調査

第95回 コロナ禍とシェアハウス(データ編)

「コロナ禍の第5波」と称された新型コロナウイルスの感染拡大も、どうやらようやく収束したと見られています。10月25日に発表された新規感染者数は、東京都で17名、全国でも153名となり、いずれも今年最少を更新しました。こうした状況に伴い、25日より飲食店の時短営業要請はおよそ11ヶ月ぶりに全面解除となり、週頭の月曜日の夜にもかかわらず、繁華街はひさびさに賑わいを取り戻したとのニュースが報じられました。まずは、喜ぶべき状況と申し上げてよいでしょう。しかし……。
本来、月曜日は新規感染者数の報告がもっとも少なくなるタイミングであることはもちろん、そもそもワクチン接種率が高くなるのに反比例して、PCR検査の受診者数は減少の一途を辿っています。つまり、母数の減少が子数の減少に直結しているわけで、必ずしも感染率そのものの低下を意味するデータとは言えません。さらに、時短営業解除は同時に支援金制度の終了を意味しますから、飲食店にとってもむしろこれからが正念場となります。ここでもし飲食店側の感染対策が疎かになれば、来店客側の気のゆるみと相まって、昨秋のGoToキャンペーン再開とそれに伴う感染再拡大の二の舞となる恐れは十分にありえます。専門家は声高にそのリスクを訴えていますが、はたして人々の胸に響く警告となっているかは(耳にタコの話でもありますし)甚だ心許ないと言わざるを得ないでしょう。

さて、9月から10月にかけての感染者数減少傾向とともに、いわゆる「アフターコロナ」を念頭に置いたアンケート調査が実施されることが増え、その集計結果があちこちで発表されています。今回はその中から、シェアハウス大家さんにとっても比較的関心が高いと思われるデータをいくつかご紹介していきたいと思います。
まずは、10月22日に(株)NEXERの運営する「日本トレンドサーチ」から発表された「完全テレワークになった場合の住まいに関するアンケート」調査結果( https://trend-research.jp/10350/ )から。これは、10月8日〜15日の期間に、「会社に勤務しているが、テレワークはしていない」会社員を対象に行われたアンケートで、全国の男女744名から有効回答が集まりました。これによると、「現在の住まい」については、「買い物に不便しない」(58.9%)、「勤務先まで片道30分程度で行ける」(46.2%)、「最寄り駅まで徒歩15分以内」(44.8%)といった回答が上位を占めており、テレワークをしていない人の約半数は、比較的会社に通勤しやすい場所に住んでいることがわかります。
次に「完全テレワークになったらどのよう場所に住みたいか」については、「買い物に不便しない」(62.6%)、「公園や緑が多い」(43.8%)、「医療機関が近い」(38.2%)が上位を占めているほか、5位に「最寄り駅まで徒歩15分以内」(29.3%)、7位に「勤務先まで片道30分程度で行ける」(22.6%)が入るなど、完全テレワークで仕事ができるようになったとしても、やはり会社に通勤しやすい場所に住むことを希望する人が2割以上はいることが明らかになりました。その理由については、「会社から緊急に呼び出されても対応できる」「生活するのに便利な地域に住みたい」などの意見が目立ちました。調査時期が、感染拡大が収束しつつあった(すなわち、多くの企業で完全テレワーク勤務が打ち切られつつあった)10月上旬という事実を割り引いても、やはり日本国内の住居環境では、「自宅では仕事をしたくない、やりにくい」と考える人がまだまだ少なくないということでしょう。前述した飲食店の時短営業解除と、それに伴うアルコール類の提供解禁と関連して、今週末以降はふたたび「会社帰りに一杯」というライフスタイルが増えていくだろうことは容易に想像がつきます。コロナ禍ですっかり冷え込んだ景気の回復材料としては、一概に悪い話ではありませんが……。

次にご紹介するのは、10月21日に日鉄興和不動産(株)が運営するリビオライフデザイン総研・シングルライフのための暮らし・住まいの研究所「+ONE LIFE LAB」が発表した「単身男女のマンション志向性とライフスタイルについて」の定点調査結果( https://plusonelife-lab.jp/data/research/13/ )です。こちらは2017年度から年1回実施しており、今回が4回目になります。調査期間は8月4日〜6日、調査対象は1都3県に居住し20〜50平米未満のマンション購入を検討する30〜49歳の単身男女で、インターネット調査で男性150名・女性150名の計300名が回答しています。質問内容は「希望する間取りや設備のプラン」や「キッチンのタイプや設備のプラン」など、直接的にはコロナ禍とは関連の薄いものが大半でしたが、「設備・サービス」についての質問に対しては、「価格・管理費が上がっても欲しい共用部の設備」として「宅配ロッカー」、および今回選択肢を新設した「24時間ゴミステーション」が突出して票を集めることになりました。この2つの設備に共通するのは、「いつでも便利に使えること」で、特に女性からの希望が高かったと言います。また、「ソフトサービス」について希望するサービスの上位に「害虫駆除」「宅配ロッカーに入らない荷物の一時預かり」「エアコンクリーニング」などが挙げられており、次に述べる「健康志向」や、前述の「宅配ロッカー」にも通じる「非対面式サービスへの志向」が窺われます。これについては、コロナ禍の影響も読み取れるかもしれません。
また「ライフスタイル・価値観に関して、将来の心配事」についての質問には、過去の調査結果と同様に「健康・金銭・老後」に関する心配が多いことが特徴的で、「マンションの購入理由」についても「老後を見据えた将来設計の対策」がトップになっています。そして最後に、前年度調査では「人を家に呼びたい」と「人を家に呼びたくない」がほぼ同程度の回答であったのに対して、今年度は男女ともに「人を呼びたくない」が大きく上昇しました。こうした「住まいの個人志向」については、戦後の核家族の増加から始まって、非婚主義や単身世帯の増加という社会全体の構造変化とも無関係とは言えませんが、より直接的な原因としては、やはりコロナ禍を受けて社会全体のライフスタイルの変化が影響していると考えられる結果となりました。自己の生活圏内への他者の侵入を警戒することは、必ずしも感染拡大を恐れる心理とイコールではないでしょうが、第三者との同居を前提とするシェアハウスというライフスタイルを提案する側にしてみれば、いささか歓迎しにくい変化と言えるかもしれません。

続いて、10月20日に(一社)不動産流通経営協会( https://www.frk.or.jp/ )が発表した「コロナ禍による顧客動向調査」の結果についてご紹介しておきましょう。これは、調査期間が9月16日〜10月4日、調査対象は同協会の会員企業の店長・所長(賃貸を除く)に行われた緊急アンケートで、有効回答数は771件となっています。ただし、あいにく現時点(10月26日15時)ではまだ同協会のホームページに正式な調査結果がアップされていないため、二次資料ではありますが、(株)不動産流通研究所の運営するニュースサイト「R.E.port」に掲載された記事内容( https://www.re-port.net/article/news/0000067143/ )を一部抜粋して引用させていただきます。
「(前略)昨夏以降、特に買い需要が増加したと言われる理由について複数回答で聞くと、『コロナ禍を契機により広い空間や間取りを求める人が増えた』が70.0%で最も多かった。自由回答でも、在宅時間の増加により住まいについてあらためて考える時間ができ、広さや間取りを含めた多様な快適性を求める人が増えたという趣旨の意見が多かったという。
次いで多かったのは『感染リスクの広がりで動きが止まっていた需要の蓄積』が33.7%、『金利からみて今が買い時と思っている人が増えた』も30.7%と3割を超えた。一方、「複数の会社に買い委託を依頼しているため、実質的にはそれほど増えていない」という意見も見られた。
買い需要が増加している一方、売却需要・在庫が減っている状況の理由について聞くと、『感染リスクを避け、人との接触を敬遠しているため』という回答が59.5%、『相場が強含みなので様子見』が49.7%となった。『減っていない』という回答は5.2%。(中略)
直近の需要について、より広い空間や間取りを求める顧客の割合を、コロナ禍以前と比較して『増えた』『やや増えた』とする回答は合わせて76.1%、『減った』『やや減った』は合わせて0.5%と大きな差が出た。(後略)」
広さや快適性を求める声の多さは、在宅勤務・テレワーク環境の確保という需要の増加と密接な関係が読み取れますが、第5波の収束とともに企業の完全テレワーク終了・オフィス通勤の再開が本格化していくことが予想されるなかで、はたしてどこまでこの傾向が続くものか、現時点では判断が難しいところがあると思われます。

もう1本、10月18日に(株)不動産経済研究所が発表した「2021年9月の首都圏の新築分譲マンション市場動向」( https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/481/MSxUtCAy.pdf )についても触れておきましょう。これによると、9月の発売戸数は2,311戸(前年同月比6.7%減)と減少に転じており、地域別では、東京23区975戸(同3.1%減)、東京都下261戸(同49.1%増)、神奈川県493戸(同4.0%増)、埼玉県277戸(同5.7%増)、千葉県305戸(同45.5%減)となっています。ひときわ目立つのは「東京都下」の大幅増と「千葉県」の大幅減ですが、これは月単位で見ていけば供給戸数の変動からこの程度の増減があるのは当然で、誤差の範囲内と言えるでしょう。中央区の新築タワーマンションのように、即日完売となった物件も計5物件・383戸あり、月末時点の販売在庫数も前月末から減少しています。
同日には、「首都圏新築マンション市場動向〜主要市場指標〜2021年度上半期(2021年4月〜2010年9月)」( https://www.fudousankeizai.co.jp/share/mansion/479/2149sk.pdf )も発表されており、こちらは首都圏の発売戸数が1万2,809戸(前年同期比44.7%増)、契約率は70.6%(同0.4%上昇)と、好況を示す基準となる7割を上回っています。また、平均価格は6,702万円(同10.1%上昇)、平米単価は102万1,000円(同9.7%上昇)と、こちらも上昇を示していることがわかります。

こうして見ていくと、第5波の収束(と、ひとまずは言っていいかもしれません)とともに、不動産市況はおおむね上向きつつあると言うことができるかもしれません。とはいえ、当コラムでもしばしば指摘しているように、不動産市況は景気の遅行指標であり、リアルタイムの事象の影響が一定期間遅れて数値に現れる傾向があります。すなわち、実際に数値に変化が現れてから対応しようとすると、その時にはもはや手遅れになっていることも考えられます。まして、昨今のように先行きが見通せない状況では、目先の景気のいい数値にうっかり飛びつくと、大ヤケドを負うこともないとは言えません。少なくとも、ハイリスク・ハイリターンに賭けて一発逆転のギャンブルに打って出る時期は、今はまだ来ていないように思われます。
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