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シェアハウス コロナ オミクロン株 年頭挨拶 国土交通省 不動産業界団体

第97回 2022年とシェアハウス

皆様、遅ればせながらあけましておめでとうございます。本年も当コラムをよろしくお願い申し上げます。
早いもので、わが国がコロナ禍にさらされてから3度目の新年を迎えることになりました。ちょうど1年前には、年末年始にかけて新規感染者数が爆発的に増加し、年明け早々に1都3県で緊急事態宣言が発出されました。当時に比べれば、今年の感染拡大状況は「まだ、それほどでもない……」と言えるかもしれませんが、すでに沖縄県・山口県・広島県の3県は1月9日から31日まで「まん延防止等重点措置」の適用が決定。また、東京都でも1月5日の時点で「まん延防止等重点措置」の適用判断をめぐり政府との調整に入っており、巷では「第6波」の到来は確実視されています。今回の感染拡大のカギを握るのがオミクロン株で、国内では今のところデルタ株との割合は半々程度と見なされていますが、海外ではすでにいくつかの国で「デルタ株からオミクロン株に置き換わった」と指摘されています。オミクロン株の特徴は「感染力がきわめて高い」「ワクチン接種の効果が低い」「軽症・無症状の感染者が多い」ということ。この3番目の特徴については、一部では「だから、恐れる必要はない」「ただの風邪」といった意見もあるようですが、専門家によれば、感染拡大の初期段階で軽症・無症状の感染者が多いのはある意味当然のことなのだとか。自覚のない無症状の感染者が行動制限されないことで感染は爆発的に拡大し、感染者数が増加すれば必然的に重症化リスクの高い患者も増え、その中から亡くなられる方が出ないとも限りません。また、感染が蔓延した結果、より重症化しやすいウイルスへとさらに変異する可能性も否定できません。いずれにせよ、これまで通りの感染対策を続行し、ワクチンのブースト接種(3回目)や、オミクロン株に対してより効果的な治療薬の開発を待つしかなさそうです。

さて、今年も例年通り、(株)不動産流通研究所が運営する不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』掲載の「2022年 年頭挨拶」(業界団体等)の記事( https://www.re-port.net/article/ news/0000067819/ )から参りましょう。

一番手は、これも例年のように国土交通大臣のコメントから。同ポストは、自公連立政権下では公明党所属議員の指定席となっており、昨秋の岸田内閣発足に伴い国土交通大臣に就任したのは、公明党副代表の斉藤鉄夫氏でした。斉藤大臣は工学博士号を持ち、若い頃は清水建設に勤めていたという経歴から、少なくとも前任の赤羽一嘉大臣よりは同ポストへの適性が高いと思われますが……。挨拶の冒頭、いきなり「昨年からの新型コロナウイルス感染拡大は……」と、やらかしています。皆様もご記憶されている通り、現在のコロナ禍は一昨年から延々と続いており、最初の緊急事態宣言は安倍晋三首相時代の2020年4月7日に発出されました。もちろん、斉藤大臣にしても、その事実を忘れていたのではなく、おそらくは前年暮れの時点で草稿を完成させていたため、誤りに気づかなかったというところでしょう。まあ、そんな揚げ足取りはさておき、斉藤大臣は2022年に取り組むべき「3本の柱」として、次のように述べております。
(1)コロナ禍からの社会経済活動の確実な回復
(2)国民の安全・安心の確保
(3)未来を創る経済好循環と明るい希望の持てる社会の実現
以下、この3本の柱について、斉藤大臣の年頭挨拶から抜粋して引用いたします。
(1)については、
「(前略)国土交通省としては、感染状況を常に見極めながら、コロナ禍により深刻な影響を受けている観光と公共交通の確実な復活を図るなど、必要な施策を講じてまいります。
〔住宅投資の喚起に向けた取組〕
住宅投資は経済波及効果が大きいことから、住宅投資を喚起することにより、民需主導の成長軌道に戻し、日本経済全体を回復させていくことが重要です。
 そこで、令和4年度税制改正において、住宅ローン減税については、適用期限を4年間延長した上で、控除率を0.7%に、控除期間を13年として子育て世帯等中間層に対する支援を充実させるとともに、借入限度額の上乗せにより環境性能等の優れた住宅への誘導機能を強化しました。
 住宅投資を喚起する税制措置等を通じ、新型コロナウイルス感染症の影響により落ち込んだ経済の回復に向け、全力で取り組んでまいります。
〔事業者の経済活動と経済回復の後押し〕
 昨年は、緊急事態宣言等の影響により、経済活動が長期間制限される状況が続き、今なお事業者は厳しい経済状況に直面しており、オミクロン株など先行きも不透明なところがあります。
 そこで、令和4年度税制改正においては、土地に係る固定資産税について、商業地等において税額上昇分を半減する措置を講じ、税負担増の緩和を図ることとなりました。(後略)」
特に後段の「固定資産税について、商業地等において税額上昇分を半減する措置」については、なかなか現実的で実効性のあるコロナ不況対策のように思います。
次に、(2)については、
「〔令和3年7月及び8月の大雨をはじめとした災害からの復旧・復興〕
(中略)政府は、昨年7月、一連の災害からの復旧・復興のため、『令和3年7月1日からの大雨に係る支援策とりまとめ』を策定しました。国土交通省としても、廃棄物・土砂の撤去、住宅の再建、風評被害対策、公共土木施設等の応急復旧等、地域住民の交通手段の確保などの支援策を盛り込んだところです。
 住宅の再建については、公営住宅などの被災者の方々が利用可能な応急的な住まいを確保するとともに、被災者の方々に対する(独)住宅金融支援機構による低利融資等を通じ、住宅の再建を支援してまいります。(中略)
〔東日本大震災からの復興・創生〕(中略)
〔防災・減災、国土強靱化〕
(中略)国土交通省としては、『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』(令和2年12月閣議決定)により、中長期的な視点に立った計画的な取組として、『激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策』、『予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策』、『国土強靱化に関する施策をより効率的に進めるためのデジタル化等の推進』について、重点的かつ集中的に実施してまいります。この5か年加速化対策や、国土交通省としてとりまとめた『総力戦で挑む防災・減災プロジェクト』を含め、今後も、ハード・ソフトの施策を総動員することで、防災・減災、国土強靱化の取組をしっかりと進めてまいります」
ということで、現時点ではまだ何とも申し上げられません。こういう取り組みは、有事の際にはじめて評価が固まるものですが……できれば、そのような「有事」は起こってほしくないものです。
なお、(3)については、〔戦略的・計画的な社会資本整備〕〔国土交通分野におけるデジタルトランスフォーメーションの推進〕〔2050年カーボンニュートラルに向けた取組等のグリーン社会の実現〕〔安心して暮らせる住まいの確保〕〔豊かな田園都市国家の形成に向けた国土づくり〕という5項目があり、それぞれに対する国交省の取り組みを述べています。その中で、特にシェアハウス大家さんに関連のありそうなものだけをピックアップすると、
「(中略)〔国土交通分野におけるデジタルトランスフォーメーションの推進〕
(中略)不動産分野は、市場の透明性確保や業務効率化、他業種との連携による新たなビジネスの創出など、DXの効果が期待される分野であり、書面規制の見直しによる不動産取引のオンライン化や取引でのデジタル技術活用、不動産関連情報の連携・蓄積・活用の推進に向けた不動産IDのルール整備の検討など、DXを推進する環境整備に取り組んでまいります。
 さらに、国土交通省では、自らが多く保有するデータと民間等のデータを連携し、フィジカル空間の事象をサイバー空間に再現するデジタルツインを通じた業務の効率化やスマートシティなどの施策の高度化、産学官連携によるイノベーション創出を目指し、各種データの横断的活用に資するデータ連携基盤の整備を進めております。令和2年に公開した『国土交通データプラットフォーム』上では各種データを拡充しており、BIM/CIMデータや3次元点群データの表示・検索・ダウンロードが可能になったほか、3D地形図での表示が可能になるとともに、3D都市モデル(PLATEAU)などとのデータ連携を拡充しました。引き続き、省内各分野のデータとの連携を進めるとともに、官民から様々な提案を募り、利活用方策を具体化して発信を行うことにより、プラットフォームを活用した価値の創造を図ってまいります」
……何やら専門用語が多くていささか混乱してしまいそうですが、BIM/CIMとは「ビムシム」と読み、建築分野のBIM(Building Information Modeling=建物情報のモデル化)と土木分野のCIM(Construction Information Modeling=建設情報のモデル化)を合わせて「建設分野全体の3次元化」を指す総称として、国交省が2018年5月に定めた名称です。また、PLATEAU(プラトー)とは国交省が主導する、日本全国の3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクトのことです。従来、日本の政治家はIT方面の知識に疎い方が少なくありませんでしたが、そこは工学博士号を持つ斉藤大臣だけに、現状認識も将来展開も正確に理解された上での発言であると思って間違いないでしょう。
「〔2050年カーボンニュートラルに向けた取組等のグリーン社会の実現〕(中略)2050年カーボンニュートラル、2030年度の46%削減目標の実現に向け、(中略)脱炭素社会の実現に向けては、住宅・建築物の省エネ対策等を強化することとしています。省エネルギー基準の適合義務化や木材利用促進に向け、建築物分野の脱炭素化に資する法案の次期国会提出を目指すとともに、優良な都市木造建築物等の整備や中小工務店等による木造のZEH等への支援を促進してまいります。また、都市のコンパクト・プラス・ネットワークの推進等とあわせて、街区単位での面的な取組など脱炭素に資するまちづくりを推進してまいります」
ここに出てくるZEHとは「ゼッチ」と読み、「ゼロ・エネルギー・ハウス(正確にはネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称です。類似語としてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)もあります。
環境省の定義によれば、ZEHとは「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」とされています。要するに、エネルギー消費ゼロを売りにしている住宅のことですが……このZEHにしろカーボンニュートラルにしろ、計算上はツジツマが合っていたとしても、果たして本当に「ゼロ」を実現することになるものかどうか。正直、疑問は尽きません。
「〔安心して暮らせる住まいの確保〕
(中略)令和2年のマンション管理適正化法及びマンション建替円滑化法の改正を受け、高経年マンションの増加に対応した『マンションの管理計画の認定制度』と『敷地分割制度』が4月1日から施行されます。引き続き、自治体と連携して、新たな制度の周知や管理計画の認定の手続きが円滑に行われるような準備を進めることによって、マンションの管理・建替えに関する新たな取組を強力に進めてまいります。
 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が、昨年6月に完全施行され、賃貸住宅管理業について、200戸以上管理する業者の登録、登録業者への業務管理者の設置や重要事項説明の義務化などが措置されました。昨年12月には、登録業者は3000者を超え、申請の約4分の3が電子申請となっております。今後、電子申請等の利便性向上を図りながら、早期の登録申請を呼びかけてまいります」
法制度の整備に伴い、老朽建物の建替えが促進されるのであれば、無論それに越したことはないのですが、補助金等の支援制度と一体化したものでない以上、現実にはなかなか難しい……と言わざるをえません。それは、建替えに比べればはるかに費用も安く、国や自治体の補助金制度も整備されている「耐震改修工事」でさえ、1995年(=阪神・淡路大震災のあった年)の「耐震改修促進法」施行から四半世紀近く経っているにも関わらず、未だに実施率100%には至っていない事実から見ても明らかでしょう。せめて、何らかの具体的なメリットが提示されない限り、政府のかけ声通りにはことは進まないと考えたほうがよさそうです。

斉藤大臣の年頭挨拶を長々と紹介してまいりましたが、業界団体の代表の皆さんからの年頭挨拶も、今年はおおむね大同小異と言えます。ポイントとしては、昨年度に比べて経済再生に向けて積極的なコメントが多いことと、国策との協調路線をアピールした内容が多いことが挙げられます。

たとえば、(一社)不動産協会の菰田正信理事長は「昨年も新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けたが、今年は感染防止策を徹底しながら経済活動を着実に回復させ、アフターコロナに向け新たなステップを踏み出す年にしたい」と抱負を述べた後、「国をあげてカーボンニュートラルが推進される中、まちづくりを通じて脱炭素の取り組みをしっかり行っていくことが求められる。(中略)国民の暮らしを豊かにするまちづくりや住環境の整備を通じ、我が国の経済・社会の発展に向けて、貢献していきたい」とコメントしています。どうも、オミクロン株を含めた感染再拡大の現状を反映していない内容から、昨年暮れのうちに書かれた草稿のままという可能性もありそうです。これに対して、(公社)全国宅地建物取引業協会連合会の坂本久会長は「年末より再びオミクロン株の脅威にさらされており……」と現状について前置きした上で「昨年末の税制改正では商業地の固定資産税の税額上昇分半減2.5%、ローン減税では環境性能別制度導入・既存住宅の築年数要件緩和などが実現され、不動産・住宅産業に対し一定の配慮がなされたことは評価に値するものと自負しております」と、斉藤大臣と国交省の働きに一定の理解と評価を示しています。また、(公社)全日本不動産協会の秋山始理事長は「岸田政権による肝煎りの政策として『デジタル田園都市国家構想』が標榜され、地方創生と軌を一にして、地域間、世代間の隔たりのないデジタル化を推進する試みが行われています。このように、世界の潮流にたがわず我が国でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の動きが加速しているところ、本会におきましても目下、次のような取組みに傾注しております」と、国交省に歩調を合わせるようなコメント。(一社)不動産流通経営協会の伊藤公二理事長に至っては「既存住宅流通市場は、コロナ禍においても、住宅仲介の取引がコロナ禍前の水準に回復し、昨年1年間を通じて順調に推移しました。在宅時間が増加し、住まいについて考える機会が増えたことなどによって購入ニーズが高まっております。この点、現下のWithコロナのみならず、Afterコロナにおいても、住宅の住替え等に関する潜在的な需要は底堅いと認識しており、Afterコロナを見据えたあるべき既存住宅流通市場の実現が当面の課題となります」と、コロナ禍はほとんど解決した過去の問題ででもあるかのように述べています。ちなみに、全日本不動産協会の秋山理事長と不動産流通経営協会の伊藤理事長のお二人は、前任者から交代して理事長に就任され、今年度が最初の年頭挨拶となるためか、比較的明るい話題を選んでコメントしているように見受けられます。さらに、(一社)全国住宅産業協会の馬場研治会長は「住宅ローン減税・住宅取得資金に係る贈与税非課税措置が、会計検査院に指摘された逆ざや問題やカーボンニュートラル実現に対応するための見直しを行ったうえで継続されました。併せて新築住宅に係る固定資産税の減額措置、土地の固定資産税等に係る負担軽減措置、認定住宅に係る特例措置の延長などが実現しました。これらの措置は、若年中間層を中心とした住宅取得者の負担軽減を通じて、住宅・不動産市場の活性化に寄与するものであり、国会議員、国土交通省など関係された方々に感謝申し上げます」と、斉藤大臣の年頭挨拶に全面的にすり寄ったコメントを発しています。その一方で、(一社)日本ビルヂング協会連合会の木村惠司会長は「緊急事態宣言が解除となった昨年10月以降、感染者は大幅に減少しました。そのこと自体は良い兆候ですが、激減した要因をしっかり分析・究明し、第6波に備えていく必要があります。そうした中でオミクロン株が出現し、世界的な緊張が高まっています。政府にはこれまでの教訓を生かし、空港等の検疫体制を強化するなど水際対策を徹底し、先手先手の対策を講じてほしいと願っています」と述べており、政府の対応に一定の評価をしつつも、ややキツめに要望も述べており、必ずしも満足してはいないことが窺われます。

年明け以降、報告される新規感染者数は倍々で増えていき、近日中にも全国で1日1万人超となることは確実視されています。そうなれば、まん延防止等重点措置に止まらず、遠からず緊急事態宣言の発出、そして飲食店の時短営業など、今年も過去2年間と同様の悪夢が再現されることになるでしょう。とはいえ、私たちもこの2年間を無駄に過ごしてきたわけではありませんから、今年こそはもう少しうまくやりたいものですし、国や業界団体、大手企業のお歴々にも、もう少しうまくやってみせてほしいと思います。
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