不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第99回 多事多難とシェアハウス
シェアハウス コロナ オミクロン株 ウクライナ 令和4年地価公示 業界団体 不動産ローン

第99回 多事多難とシェアハウス

全世界を震撼させたロシア軍のウクライナ侵攻から、早くも1ヶ月が経過しました。国際社会のロシアへの批判が高まるなか、現地では今なお戦火が止むことなく、幼い子どもを含む多くの民間人の犠牲は日に日に増え続けています。ウクライナのゼレンスキー大統領はオンラインを通じて各国に支援を要請し、日本でも3月23日に国会で約12分間の演説を行っています。
東西冷戦終結以来、かつてないほど緊迫した国際情勢の下で、日本では3連休明けとなる3月22日、1月から延長を重ねてきた「まん防」がようやく全面解除されましたが……その直前、3月16日には福島県沖を震源とする最大震度6強の大地震が発生。これに伴い、東京電力管内では需給ひっ迫警報が発令され、各方面へ節電要請が出されました。このため、22日夜には東京タワーやスカイツリー、レインボーブリッジなど、東京の夜景を彩るライトアップは軒並み休止したほか、繁華街のネオンサインも灯を控え、折からの寒の戻りで厳しい冷え込みの中、室内の暖房温度さえ20度以下とするよう呼びかけられました。

戦争と疫病の流行、大規模自然災害、ライフライン途絶の危機……まさしく多事多難の渦中にあっても、月日は休むことなく移ろい、まもなく新年度の季節を迎えます。シェアハウスを含む不動産業界では、3月末から4月にかけては1年で最大の繁忙期。多くの人びとが4月からの新年度を新たな環境でスタートするべく、新居への引っ越しを進めていることでしょう。こうした中で、3月22日には国土交通省より「令和4年地価公示( https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001470620.pdf )が発表されました。周知の通り、地価公示とは毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を公示することで、一般の土地の取引価格に対して指標を与えるとともに、公共事業用地の取得価格算定の規準とされています。また、国土利用計画法に基づく土地取引の規制における土地価格算定の規準とされるなど、適正な地価の形成に寄与することを目的として行われるものです。前回からの直近1年間の地価変動率(全国平均)は、全用途平均で0.6%上昇(前年は0.5%下落)。住宅地が0.5%上昇(同0.4%下落)、商業地も0.4%上昇(同0.8%下落)で、いずれも2年ぶりに上昇に転じています。三大都市圏では、全用途平均で0.7%上昇(同0.7%下落)、住宅地が0.5%上昇(同0.6%下落)、商業地が0.7%上昇(同1.3%下落)。住宅地は、東京圏、大阪圏、名古屋圏のすべてで2年ぶりに上昇しており、商業地は東京圏と名古屋圏が上昇、大阪圏のみ横ばいへと転じました。さらに、地方圏では、全用途平均0.5%上昇(同0.3%下落)、住宅地0.5%上昇(同0.3%下落)、商業地0.2%上昇(同0.5%下落)となり、いずれも2年ぶりに上昇に転じました。このうち、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の「地方四市」は、全用途平均・住宅地・商業地のすべてで前年から上昇を継続しており、今年はさらに上昇率が拡大しました。一方、その他の地域の平均変動率は、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも前年から2年連続で下落していますが、下落幅は縮小しています。なお、シェアハウス大家さんには関係はありませんが、工業地は全国平均で6年連続、三大都市圏で8年連続、地方圏で5年連続の上昇でした。国交省の不動産・建設経済局 地価調査課 地価公示室では、「新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に緩和される中で、全体的に昨年からは回復傾向が見られる」「(住宅地は)景況感の改善、低金利環境の継続、住宅取得支援施策等による下支えの効果もあり、取引件数は昨年と比較して増加しており、全国的に住宅地の需要は回復し、地価は上昇に転じた」「(商業地は)都心近郊部においては、景況感の改善により、店舗やマンション用地に対する需要が高まり、上昇に転じた地点が多く見られる」と分析しています。
上記の分析の中で、「景況感の回復」という要因がくり返し出てきますが、これが「1月1日時点」ということに注意が必要です。すなわち、オミクロン株の感染爆発も、ウクライナの戦争も、福島の大地震も、何ひとつ起こっていなかった頃の「景況感」であり、現時点から見たそれとはおのずと違った見解となるでしょう。

ちなみに、今回の地価公示を受けて、各業界団体のトップがコメント( https://www.re-port.net/article/news/0000068570/ )を発表していますが、たとえば、(公社)全日本不動産協会の秋山始理事長は「目下の懸念は、言うまでもなくロシアのウクライナ軍事侵攻に端を発する原油高など世界経済の大幅な停滞であるが、ここに来て米FRBが急激なインフレ抑制対策としてゼロ金利政策を解除したことで短期的に円売りが進む可能性が高い。これによりJリート市場にて海外投資家の買い越し傾向に拍車がかかるほか、海外富裕層による現物不動産の購入マインドが再燃することも想定されるため、上述の地価回復基調と相俟って、当面のところ居住用不動産を中心に市況は安定的に推移すると見ている」と分析しています。その一方で、(一社)不動産協会の菰田正信理事長は「オミクロン株の影響や、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格や原材料価格のさらなる高騰等により、先行きは非常に不安定な状況にある」と指摘しており、また、(一社)不動産流通経営協会の伊藤公二理事長は「コロナ禍に加えて緊迫化するウクライナ情勢の下で、景気が底割れすることなくコロナ後の経済を成長軌道に乗せるには、地価が安定的に推移することが先ずもって重要である。そのためにも、内需の牽引役である住宅・不動産流通市場のさらなる活性化は不可欠である」とコメントしています。誰の意見が正しいかは結果を見なければわかりませんが、そもそも一個人にできることなどたかが知れていますから、今はただ、1日も早い戦火の終息を祈るしかなさそうです。

今の状況下でシェアハウス大家さんにできること――といえば、最近、業界内で「ウクライナ難民(を含む難民、としているところも)を対象に自社の運営するシェアハウスを1年間無償で提供する」といった動きが起こっています。現時点で名乗りを上げている業者は2、3社にすぎませんが、今後、さらに業者が参入してくることも想定できます。もちろん、個人経営のハウスでは難しいのですが、ある程度の規模の会社資本がバックについていれば可能でしょう。実際にやってみれば、「1年間無償」のリスクをはるかに超える企業PR効果も期待できますし、従業員たちが「自分たちがやっているのは社会に貢献する、とても意義のある仕事だ」という誇りを持つことができるわけです。とはいえ、実際にウクライナからやってきた難民を、自らの運営するシェアハウスへ迎え入れる段階になれば、それはそれでまた予期していなかったさまざまな問題が噴出してくるに違いありません。だからこそ、いち早く名乗りを上げた業者にはその勇気に敬意を表しますが、安易にその真似をしたり、同じことを他人にお勧めしたりするつもりはサラサラないわけです。

一方、3月24日に(株)東京カンテイが発表した2022年2月度の「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70?価格月別推移」( https://www.kantei.ne.jp/report/c202202.pdf )によると、首都圏の中古マンション価格は10ヶ月連続で上昇しているといいます。
ちなみに、この2日前には、(公財)不動産流通推進センターが「指定流通機構の活用状況について(令和4年2月分)」( https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/katsuyo/katsuyo2202.pdf )を発表しておりますが、こちらを見ると、売り物件の新規登録数は23ヶ月連続でマイナス、成約報告件数は8ヶ月連続のマイナス、総登録件数は20ヶ月連続のマイナスでした。すなわち、新規登録数および総登録件数の減少により、市場に商品(=中古マンション)が十分に出回らなくなったため、成約報告数の減少とともに価格の上昇につながっているものと読み解くことができます。だとすれば、この中古マンション価格の上昇は「景況感の回復」を示すものではなく、むしろ「物資の欠乏」を示しているのかもしれません。
さらに、3月25日には国土交通省が「令和3年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」結果( https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001472529.pdf )を発表していますが、こちらを見ても、民間住宅ローンは「新規貸出額は前年比減少」「貸出残高は前年度末より増加」という実態が明確に表れています。
考えてみれば、現在の日本を取り巻く状況は、今回の冒頭でも述べたように多事多難、どっちを向いても明るい話題など見当たらないわけですから、ありもしない希望を無理にひねくりだす必要はないのかもしれません。そのような「小賢しさ」よりも、厳しい現状を直視した上で、少しでも余計な損失を減らし、リスクを回避しながら、しぶとく生き残っていく「図太さ」「したたかさ」こそが求められているのではないでしょうか。
前
第100回 アイデア勝負とシェアハウス
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第97回 2022年とシェアハウス

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)