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第98回 不動産市況とシェアハウス2022

2月20日夜、北京冬季オリンピックの閉会式が行われました。昨年の東京オリンピック同様、あるいはそれ以上の厳戒態勢下で挙行された冬季五輪では、日本勢は過去最多となる18個のメダルを獲得。国内でも大いに盛り上がりましたが……。オミクロン株による感染拡大は、2月中旬に入ってやや減少に転じたとはいえ、依然として連日8万人以上の新規感染者が報告されており、高齢者を中心に1日200人以上のペースで死亡者も出ている状況が続いています。さらに、従来型のオミクロン株(BA・1)よりも感染力が強いとされる派生株BA・2(別名:ステルスオミクロン)の国内での市中感染も報告されており、「仮にこのままBA・1の感染がピークアウトを迎えたとしても、すぐにBA・2に置き換わっての『第7波』が始まるのではないか…?…」という懸念の声も上がっています。こうした中で、岸田文雄首相は2月17日の記者会見で、「3月から水際対策を緩和する」方針を発表し、新型コロナウイルス対策について「基本姿勢、慎重さは堅持しながら、同時に第6波の出口に向かって徐々に歩み始める。次のフェーズへと段階的に準備を進めていくべきであると考えている」と述べています。感染対策と経済対策、どちらも重要だという考え方は理解できるのですが、水際対策を緩和する一方で、まん延防止等重点措置に関しては、大分県など5県は20日付で解除されたものの、31都道府県については延長も含めて3月6日まで実施される見込みとなっています。もともと、昨年この制度がつくられて以来、「まん防」が効果を発揮して、そのおかげで感染拡大が収束した、と因果関係が確認できた事例は一度としてありませんでしたから、今回もまた、「コロナ対策をしています」とアピールしたいがためだけの、一種のアリバイ工作くらいに思っておけば間違いなさそうです。

さて、2月18日に公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会より「不動産の日アンケート」の結果( https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf )が公表されました。これは、9月23日の「不動産の日(9月は不動産取引が活発になる時期であり、ふ〔2〕どう〔10〕さん〔3〕の語呂合わせで23日)」にちなんで、住宅の居住志向や購買傾向等を毎年調査しているものだそうで、2021年9月23日〜11月30日、国内の20歳以上の男女を対象にインターネットで調査し、有効回答数は2万3,349件でした。
 もっとも注目すべきなのは、「不動産の買い時感」についての質問に対する回答でしょう。「買い時だと思う」が10.5%(前年比6.8%減)、「買い時だと思わない」が25.6%(同0.1%増)、「分からない」が63.9%(同6.6%増)となり、「思う」は過去最低水準となりました。また、「分からない」が6割を超えるのも3年ぶりのことで、先行き不透明な市場の状況が窺えます。なお、買い時だと「思う」理由は「住宅ローン減税など住宅取得支援策の充実」41.4%(同4.8%増)、「不動産価格が安定・上昇しそう」25.4%(同2.9%増)、「住宅ローンの金利が上昇しそう」が22.5%(同0.3%減)と、もっぱら価格・金利の先高観を挙げていますが、その一方で「思わない」理由は「不動産価格が下落しそう」と、逆に先安観を理由とする回答が28.8%(同2.5%減)でトップに来ています。他には「自分の収入が不安定または減少している」が26.5%(同2.1%増)、「天災が心配」が9.6%(同1.4%増)の順でした。この「天災」については、「築年数や構造(耐震・免震)」「緊急避難場所や防災マップ・ハザードマップ」「地盤などの状況」などへの関心が軒並み高まっていることや、天災対策として「構造(耐震・免震)」や「立地(地盤の強度)」を重視する傾向が過半数を超えていることが明らかになっています。そして、今回初めて質問項目に入ったハザードマップへの理解に関する回答は、「住んでいる地域のハザードマップを見たことがある」48.3%、「聞いたことがあり内容も知っている」37.7%、「住んでいる地域のハザードマップを実際に調べたことがある」27.5%、「聞いたことはあるが内容は知らない」13.2%、「不動産取引の際に説明が義務付けられたことを知っている」9.4%となっており、「聞いたことがない」という回答はわずか5.7%にとどまりました。先祖代々住んでいる土地、というならまだしも、これから不動産を売買しようという土地に対しては関心も高く、広く認知されているということなのでしょう。また、新型コロナウイルス感染症の影響による住み替え検討については、「特に検討していない」が87.0%(同3.6%減)で最多でしたが、「すでに住み替えた」2.8%(同0.3%減)、「住み替えを検討した」5.2%(同1.1%減)、「一度検討したがやめた」5.0%(今回から選択肢に追加)となっており、それなりに気にする人は気にしているということがわかりました。
――ところで、「このアンケートが実施された時期」についても注目すべきでしょう。そう。ちょうどワクチン接種率が上昇してコロナ第5波がほぼ収束し、さあ、これから経済の立て直しを図ろう! と多くの人びとが考え、行動し始めていた時期に当たります。海外の状況を考慮すればまだまだ安心はできないものの、少なくとも、コロナ禍が始まってこの2年余りの間ではもっとも感染者数が減少し、「かつての日常」を取り戻しつつあった……そんな時期でさえ、人びとは不動産への投資を「今はまだ、その時期ではない」と捉え、積極的になれずにいたわけです。結果から見ると、アンケートの締切日からわずか1ヶ月少々で、連日万単位の新規感染者がカウントされるオミクロン感染爆発が起こっているわけですから、人びとの時代を見る目は正しかったということになりますが……。

同じ2月18日には、独立行政法人 住宅金融支援機構が、2021年度の「住宅ローン貸出動向調査」( https://www.jhf.go.jp/files/400359488.pdf )の結果を発表しています。これは2021年8〜9月、住宅ローンを取り扱う金融機関301機関に対して住宅ローン等についてアンケートを実施し、272機関から2021年6月末時点の状況の回答を集めたものです。
まず、新規の住宅ローンについての今後の取り組み姿勢は、「積極的」69.9%(前年比1.4%減)、「現状維持」30.1%(同1.4%増)で、約7割が積極的に取り組む予定であることが分かりました。次に、借り換えについての今後の取り組み姿勢は、「積極的」55.1%(同7.4%減)、「現状維持」43.8%(同3.3%増)、「消極的」1.1(同0.1%増)となり、こちらも積極派が過半数を占めました。今後重視する(伸長を期待する)住宅ローンの金利タイプは、「変動型」(69.3%)が最多であり、以下「固定期間選択型(10年)」(47.0%)、「全期間固定型」(24.4%)と続いています。また、「太陽光発電設備」や「オール電化などの省エネ設備」等々、環境配慮のための設備を導入した物件だけに適用される、いわゆる環境配慮型住宅ローンについては、「取り扱っている」(24.5%)、「取り扱いを検討中」(3.3%)、「取り扱っていない」(72.1%)となり、取り扱い金融機関は全体の約4分の1程度ということがわかりました。こちらの調査実施時期、より正確には「設問とした調査対象時期」は2021年6月末ですから、感染者数は一向に減らないまま、緊急事態宣言が6月20日付でなし崩しに解除され、まん延防止等重点措置に切り替わった時期に当たります。けっきょく、1ヶ月とはもたずに、7月12日にはまたもや緊急事態宣言に逆戻りしたわけですが……それにしても、この時期にほんの一瞬にせよ、緊急事態宣言を解除したということで、金融機関がこの時期強気の積極姿勢でいられた理由は少しだけわかったような気がします。

もう一つ、2月17日に一般財団法人 土地総合研究所が発表した、2022年1月1日時点の「不動産業業況等調査結果」( https://www.lij.jp/search/gyoukyou/g2022-01.pdf )についても見てみましょう。こちらは、四半期ごとに不動産業を営む企業にアンケートを実施し、経営状況および3ヶ月後の経営見通しについて、【住宅・宅地分譲業】【不動産流通業(住宅地)】【ビル賃貸業】のそれぞれについて不動産業業況指数を算出しているものです。今回は128社から回答が集まっています。
まず、【住宅・宅地分譲業】は19.6(前回調査比6.0pt上昇)。【不動産流通業(住宅地)】はマイナス5.7(同3.7pt下落)で、11期連続マイナス水準となりました。【ビル賃貸業】はマイナス2.0(同7.3pt上昇)で、こちらも6期連続でマイナス水準となっています。次に、各業種における業況を示す指標となる数値の変動を見てみましょう。
【住宅・宅地分譲業】では、「用地取得件数」はマイナス8.7(同13.2pt下落)、「モデルルーム来場者数」はマイナス29.2(同11.8pt下落)、「成約件数」はマイナス8.2(同4.0pt下落)、「在庫戸数」は42.0(同8.0pt上昇)。「販売価格の動向」は60.0(同10.0pt上昇)となりました。
【不動産流通業(住宅地)】では、「既存マンション等の売却依頼件数」はマイナス28.8(同8.0pt下落)、「購入依頼件数」はマイナス21.2(同5.9pt上昇)、「成約件数」はマイナス29.4(同4.4pt下落)、「取引価格」は19.2(同3.7pt下落)と4期連続で上昇傾向の見方が多いことがわかります。「既存戸建住宅等の売却依頼件数」はマイナス20.8(同12.8pt下落)、「購入依頼件数」がマイナス18.9(同14.9ot下落)、「成約件数」がマイナス21.2(同6.9pt下落)、「取引価格」は18.9(同8.9pt上昇)で、こちらも4期連続して上昇傾向にあるとの見方が多い状況が継続しています。
【ビル賃貸業】では、「空室の状況」が7.0(同13.8pt上昇)となり、7期ぶりに空室が減少傾向にあるとする見方が多い状況になりました。また、「成約賃料動向」はマイナス16.0(同6.2pt上昇)と、6期連続で成約賃料が低下傾向にあるとする見方が多いことがわかりました。
ちなみに、3ヶ月後の見通しについては、【住宅・宅地分譲業】が8.7、【不動産流通業(住宅地)】がマイナス2.8、【ビル賃貸業】はマイナス14.0となっています。こうして見てみると、住宅・宅地分譲や既存戸建住宅などの取引価格・販売価格は上昇傾向にあるのに対して、既存マンションの取引価格や、ビル賃貸業の成約賃料動向などは下落傾向にあるということです。すなわち、集合住宅や賃貸ビルなど、不特定多数が出入りする大型物件がより敬遠されているように読み取れますが、さすがに、たったこれだけを論拠として「“密”を回避する意識が働いた」=「コロナ禍の影響がここにも?」という結論へ持っていくのは、いささか論理が飛躍し過ぎているでしょうが……。

いずれにせよ、冒頭で記した通り、デルタ株からオミクロン株への置き換わりに続いて、BA・1からBA・2(ステルスオミクロン)への置き換わりという事態も現実味を帯びてきている現状からして、まだまだ当面の間はコロナ禍が継続することはほぼ確実視されております。これに伴い、不動産業界はますます厳しい状況に追い込まれることは十分に予想できます。仮に、今後実施されていくブースター接種が功を奏して一時的には感染収束に向かったとしても、さらなる変異株の出現を完全には阻止できないとすれば、いつまた、同じような(あるいはそれ以上に厳しい)状況においこまれることになるか、わかったものではありません。人類がこの新型コロナウイルスを完全に克服したと断言できる日は、いったいいつになったら来るのほでしょうか……?
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