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第100回 アイデア勝負とシェアハウス

ロシア軍のウクライナ侵攻からすでに80日余りが経過しましたが、現地では今なお激しい戦闘が続き、非戦闘員を含む多くの人びとの血が連日流されています。さらに、物資の供給不足と物価の高騰は、日本だけでなく世界中で同時に発生しています。ロシアもウクライナも、世界有数の輸出大国であり、これらの国からの輸入が断絶したことで、小麦をはじめとする食料品や、天然ガス・原油などのエネルギー資源など、さまざまな物資が国際市場で不足し始めています。しかも、戦局が泥沼化し、輸入再開のメドが立たないことから、どこまで影響が長引くものか予測がつかないというのが現状です。さらに日本の場合、現時点での物価高は「ウクライナ戦争」も「円安」もほとんど影響していないという指摘もあり、これらの影響が表に出てくる「これから」が本番とも言われています。一方、日本ではまん延防止等重点措置が解除されたことで、じつに3年ぶりに「行動制限のないGW」となりましたが、その結果、人の移動が増え、もともと感染者数の少なかった一部の地域では、連休明け以降、感染再拡大の予兆が見られるという声もあります。経済の復興と感染の収束は本来、両立しなければ意味がないはずなのですが……。

さて、今月もシェアハウスを中心に不動産業界の動向を見て参りましょう。まずは、少々古い話題になってしまいましたが、去る4月19日朝、『神戸新聞』に掲載された「シェアハウスで自立目指して 若者支援向け社団法人が今夏開設 家事、金銭管理…生活スキル学ぶ」( https://nordot.app/888926715173699584?c=110564226228225532 )という記事からご紹介していきましょう。これは、神戸新聞三木支局の篠原拓真記者による署名記事。URLに「nordot.」とありますが、この記事のリンク先は神戸新聞社の電子版(神戸新聞NEXT)ではなく、ノアドット株式会社の無料閲覧サービスになります。以下、全文を引用いたします。
「若者の自立支援を目的としたシェアハウスの開設を目指し、兵庫県尼崎市の一般社団法人『officeひと房の葡萄』が取り組みを進めている。築55年の同市営住宅2戸を借り受けて今年夏に設ける予定で、クラウドファンディング(CF)で費用約300万円を募集。同法人は『自分の進む道を考えるには安定した環境での余裕が必要。自立支援は社会の重要な仕組みとなる』と協力を呼び掛ける。(篠原拓真)
同法人は2017年、子どもの居場所づくりや学習支援を目的に設立された。同市西立花町3に設けた『ぐれいぷハウス』は、学校でも家庭でもない第3の居場所(サードプレイス)として子どもらが集う。また就労支援にも取り組む。
 自立支援型シェアハウスは、高校卒業などを機に半ば強制的に自立を促され、社会へ放り出された結果、生活困窮に陥ったり、犯罪に手を染めてしまったりするケースがあることから企画した。皿を洗えない。洗濯ができない。金銭管理ができない。例を挙げながら、代表理事の赤井郁夫さん(65)は『家族と関係がうまくいっていなかった子は生活のすべを教わっていない』と説明する。
 シェアハウスでは、支援員がサポートしながら、入居者が自立に向けた準備を進める。安定した生活環境の中で、家事や生活する上で必要なスキル、金銭管理の方法などを身に付けてもらい、独立後も相談や一時利用ができるように関わりを維持するという。
 まずは18〜23歳の女性に限定して募集。1人につき個室1室を用意し、3〜4人の共同生活を送る。想定入居期間は2年ほどで、家賃は光熱費などを含めて3万円程度となる。赤井さんは『自立しようとする子どもらが安定して独り立ちできるように応援する。それが私たちが取り組むべきこと』と力を込めた。
シェアハウスは、『あまがさき住環境支援事業』として同市が貸し出す市営住宅を改修するため、同法人はクラウドファンディング『グッドモーニング』で修繕改修費などを募っている。期間は今月30日までで、支援への返礼も用意している。【2022/4/19 08:00 (JST) (C)株式会社神戸新聞社】」
一読しておわかりのように、ここではシェアハウスは単に「手段」であり、「目的」はあくまで若者の自立支援。家賃にしても、どう見ても採算ベースではなく、「支援対象者が支払い可能かどうか?」という線引きで設定しているものと思われ、ビジネスモデルとしてはあまり参考にならないかもしれません。ただし、「自治体の貸し出す公営住宅をシェアハウス化する」「修繕改修費はクラウドファンディングで募集する」など、公益目的であることを打ち出して支出を最低限度に抑えている点は、民間事業者である強みを活かした賢いやり方と言えるでしょう。公のサポートを堂々と利用することで、自己資金を投下するリスクを回避しつつ、しかも外部からの信用を高める効果も期待できるのですから、大手のような資本力のない中小・零細業者にとっては至れり尽くせりです。高い税金を支払っている以上、少しは「元を取る」ことを考えても罰は当たらないのではないでしょうか。

同じ4月19日、業界内では長年の懸案事項であった「あの事件」に、ようやく進展があったことが報告されました。こちらは同日の『共同通信』に掲載された記事で、リンク先はやはりノアドットです。
「スルガ銀行、民事調停成立 シェアハウス不正融資問題」( https://nordot.app/889087434683449344?c=110564226228225532 )というタイトル。短い記事なのでこちらも全文引用します。
「スルガ銀行によるシェアハウス向け不正融資問題で、被害救済に取り組んでいる弁護団は19日、被害者404人について、東京地裁で民事調停が成立したと明らかにした。債務総額の約605億円が全額免除される内容。3回目の調停成立となり、弁護団は『シェアハウス問題は全面解決した』としている。
 弁護団によると、2020年3月に257人(被害総額約440億円)、21年3月に285人(被害総額約440億円)について民事調停が成立していた。
 スルガ銀は過大な借り入れをした所有者が物件を手放せば返済を免除するとの内容で調停に応じている。昨年8月が調停申し立ての期限だった。【2022/4/19 18:55 (JST)4/19 19:13 (JST)updated (C)一般社団法人共同通信社】」
皆さまもご記憶されておられるでしょうが、2018年初頭にシェアハウス業界を震撼させた事件で、当初は破綻した株式会社スマートデイズの運営していたシェアハウスの名称から「かぼちゃの馬車」事件と呼ばれていました。その後、融資元であったスルガ銀行の審査の杜撰さが明るみに出て、さらにシェアハウス以外でも数多くの不正融資を行っていたことが発覚。すっかり「スルガ銀事件」の事件名が定着していました。そのスルガ銀行が、ようやく原告(「かぼちゃの馬車」事件の被害者の会)側と和解した、というニュースですが……たった5年前の出来事であり、当時、夜も眠れないほど苦しんだ被害者の方もおられるかとは存じますが、今となっては隔世の感があります。「ビフォアコロナ」の時代の出来事というだけで、どことなく牧歌的に感じてしまうほど、現在の状況は厳しいということなのかもしれません。

ちなみに、上記のニュースからわずか1週間後には、次のようなニュースが報じられました。こちらはいつもの『朝日新聞デジタル』で、「資金ゼロでシェアハウス買えます…不動産会社経営者、脱税容疑で逮捕」( https://www.asahi.com/articles/ASQ4W571GQ4WUTIL01Z.html )という記事。有料記事となっているため、以下に無料公開されている途中までを抜粋して引用します。
「シェアハウスの販売などに伴い、計約5億3千万円を脱税したとして、東京地検特捜部は27日、不動産会社『ラッキー』(東京都世田谷区)の実質的経営者・江崎純容疑者(54)と経理部門責任者・長瀬一生容疑者(47)を法人税法違反などの疑いで逮捕し、発表した。関係者によると容疑を否認しているという。
 発表によると、両容疑者は2018年4月期までの3年間で、架空の業務委託費を計上して約21億円の所得を隠し、法人税など計約5億3千万円を免れた疑いがある。
 関係者によると、同社は、顧客にローンを組ませてシェアハウスなどを販売する手法で事業を拡大した。17年4月期の売上高は91億円だった。
 だが、同社の顧客に融資を実行していたスルガ銀行(静岡県沼津市)で18年、書類を改ざんした過剰な融資が発覚。他の金融機関でも顧客への融資は認められにくくなり、同社の業績は悪化したという。(以下略)
(原田悠自 2022年4月27日 16時47分)」
なんと、ここにもスルガ銀行の名前が。上の記事では、弁護団が「シェアハウス問題は全面解決した」と発表していますが、これはあくまで「スマートデイズ=かぼちゃの馬車」のことであって、他の不動産会社の他のシェアハウス銘柄はノーカウントということだったようです。それにしても……記事の見出しにもあるように、この会社では「資金ゼロでアパートを購入でき、なにもしなくても毎月数万円の家賃が得られる」というセールストークで顧客を集めていたとのこと。しかも、どうやらスルガ銀の不正融資事件発覚後も営業を続けていたらしいのですが、こんな胡散臭いセールストークに本気で喰いついたのだとすれば、仮に「騙された被害者」だとしてもあまり同情はできないような気もしますね……。

最後に、海外の話題から一つ。米国・シリコンバレーでは、こんなアイデア商品が売りに出されたとのことです。
「“カプセル・シェアハウス”米国に登場 一軒家に14人で暮らすことで高騰する家賃と戦う スタートアップ企業ブラウンストーンが運営」( https://internetcom.jp/208687/brownstone-shared-housing
これは要するにプレスリリースなので、「ご興味ある方はリンク先をご覧ください」というだけに止めておきますが……俗に、「アメリカで起こったことは、どんなことであれ、いずれ日本でも同じことが起こる」という言葉があります。この手の「極小住宅」はむしろ日本のほうが先行していて、「ゲストハウス」と称するドミトリー(相部屋)タイプの物件は珍しくありませんし、中には「違法貸しルーム(脱法シェアハウス)」など社会問題になった物件も過去に例があります。ただ、上記のシリコンバレーの例では、共用スペースをきちんと確保している点と、「カプセルベッド」の個人スペースがそれなりに居心地の良い空間になっている点がセールスポイントのようです。もちろん、まだ成功するともしないとも断定できませんが、厳しい時代にアイデアひとつで勝負しようという彼らの前向きなスタンスに対しては、私たちも見習うべき点が多いのではないかと思います。今回の最初にご紹介した日本での事例もそうでしたが、一人ひとりが知恵を絞ってアイデアをひねり出し、厳しい経営環境の中でも積極的に打って出ることで、あるいは道が開けることがあるかもしれないのです。
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