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シェアハウス コロナ ウクライナ 円安 物価高騰 スルガ銀行 かぼちゃの馬車 自立支援 自主運営

第101回 ケーススタディとシェアハウス

マスコミの関心は熱しやすく冷めやすいもので、最近ではコロナ禍、ウクライナ戦争の話題はかなり下火となり、代わって円安不況と物価高騰の話題で持ちきりです。6月14日の国会では、岸田首相が「(物価高騰が)生活や事業の将来に不安をもたらしている」と危機感を示しました。野党議員の「最近の物価上昇は、いわゆる『いい物価上昇』か、『悪い物価上昇』か?」との質問に対し、岸田首相は「国民生活に大きな影響を与えている」との見解を示す一方で、「4月の食品価格は、新興国を含むG20の半数以上が前年比6%を上回る上昇であり、日本は4.4%と相対的に低い水準にある」と述べ、消費税の一時的な減税措置の可能性は「ない」としています。また、日銀の黒田総裁は現在の円安傾向について「政府と緊密に連携し、為替市場の動向や経済・物価への影響を注視していく」と強調し、事実上静観の構えを表明しています。一部のマスコミのようにいたずらに不安を煽るのも感心しませんが、「よそと比べてこうだから……」という理屈は、「よそがこうなのだからうちも……」という理屈と同様に、いささか主体性を欠く発言と言わざるをえないのではないでしょうか。

さて、今回もシェアハウス関連のニュースで取り上げられた話題をご紹介していきましょう。まずは6月3日、産経新聞社のニュースサイトで関西発のニュースを取り扱う『産経WEST』に次のようなタイトルの記事が掲載されました。「三好不動産がシェアハウス『かぼちゃの馬車』再生」( https://www.sankei.com/article/20220603-UBYUAXKIL5KVFHYKJDHIE27ZPY/ )。以下、全文を引用いたします。
「福岡都市圏の不動産賃貸業大手、三好不動産(福岡市中央区)は、東京都内でシェアハウス事業を始めたと発表した。若年層や外国人の居住支援を通じ、住宅業界におけるシェアビジネスのノウハウを蓄積する。
 米投資ファンドのグループと業務提携し、スルガ銀行の不正融資問題にからんだシェアハウス『かぼちゃの馬車』の事業再生に取り組む。新たなブランド名は『TOKYOβ(トウキョウ・ベータ)』で、三好不動産は、効率的な運営体制の構築や、東京23区内などにある1083棟(約1万4千戸)の管理、入居者募集などの業務を行う。
 家賃は3〜7万円台で、敷金や礼金は無料。家具や家電を備え付け、スマートフォンでドアの開閉ができるサービスや、入居する若者のスキルアップや起業支援なども予定している。
 シェアハウスは一つの住宅を数人の居住者で利用する形態で、住居費が抑えられることや居住者と交流ができるとして若者を中心に人気がある。東京に転出する福岡の若者も多いことから、三好不動産は『仮住まいのような感覚で利用し、東京生活を体験する第一歩にしてほしい』としている。(2022/6/3 20:01更新)」
ちなみに、(株)不動産流通研究所の運営する『R.E.port』の「不動産ニュース」では、約2ヶ月前の4月11日付けの記事( https://www.re-port.net/article/news/0000068774/ )でこの件をもう少し深掘りしています。こちらの記事では出資元についても「ローン・スター・ファンド」と社名が明記され、運用会社のハドソン・ジャパン(株)ほか、実務に携わる会社についいても触れられているほか、物件は「若者支援をコンセプトとしたアパートメント」としています。前回の当コラムにて、「スルガ銀裁判」の顛末をお伝えしましたが、事件発覚から5年余を経て、ようやく「停まっていた時計の針が動き出した」感があります。ただし、「米投資ファンドのグループ(=ローン・スター・ファンド社)と業務提携」とあるように、いわばヒモ付きの資金。昨今の円安不況下で事業再生がどのように進展していくかはまだまだ予断を許しませんが、多少なりとも明るい話題と言えるかもしれません。

次にご紹介するのは、NHKのニュースサイトで、やはり関西発のニュースを紹介する『関西 NEWS WEB』に5月25日付で掲載された「困窮少年を保護するシェアハウス」( https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20220525/2000061528.html )という記事になります。こちらも全文を引用します。
「生活に困窮するなど自立への支援が必要な少年を受け入れるシェアハウスが大阪・浪速区でオープンしました。
 このシェアハウスは、生活に困窮する親子の支援を行っているNPO法人『CPAO』がことし4月から大阪・浪速区で運営しています。受け入れるのは、親の保護を受けられず困窮するなど自立への支援が必要な未成年の男子です。
 3つの部屋で最大6人が生活でき、NPO法人の職員が家事などのサポートを行います。NPOが、夜遅くまで繁華街にいる少年に聞き取り調査を行ったところ、安心して寝泊まりできる場所がほしいという声が多く聞かれたことから、この取り組みを始めたということです。すでに2人が入居していて、このうち1人は学校に再び通えるようになったということです。NPOでは今後、就労に向けた支援なども行い、1〜2年を目安に自立できるようサポートしたいとしています。NPO法人『CPAO』の徳丸ゆき子理事長は、『子どもたちが安心して暮らせる場所をつくって、自立のステップの場所にできるよう、何でもしていきたいと思っています』と話していました。シェアハウスの運営資金は寄付で賄われていて、NPOでは広く支援を呼びかけています。(2022/5/25 05:11更新)」
タイトルに「少年」とあるのを見て、一瞬、「男女を問わず、未成年者を『少年』と表記する」最近の風潮かと思いましたが、記事を読む限り「対象は男子限定」ということのようです。「ことし4月から」とありますから、対象者は18歳未満ということでしょう。つまりは中高生のための支援であり、「運営資金は寄付で賄われ」とあるように採算度外視の事業。シェアハウス大家さんにとってはあまり参考にはならないかもしれませんが、「1〜2年を目安に自立」して当該ハウスを巣立っていく若者たちの「次の受け皿」としては、民間のシェアハウスも想定されているものと考えられます。中高生のうちにシェアハウス暮らしを経験しておくことは、社会に出てからも通用する集団生活のマナーを学ぶ良い機会になるかもしれません。

もう1本、5月24日付の『岐阜新聞Web』に掲載された次の記事を紹介いたします。「『古民家シェアハウス』若者の新しい生活スタイル 湿気や室温『不自由さ魅力に』」( https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/80174 )というタイトルで、こちらも全文を引用していきます。
「金華山麓の旧岐阜町にある岐阜市靭屋(うつぼや)町の築130年の古民家シェアハウスで、10〜20代の男性3人が建物を改装し、5月から共同生活を始めた。古民家は湿気や室温など環境面で不便さはあるが、市外出身の3人は『町が気に入り、あえて不自由さに立ち向かう魅力を感じた』と語る。歴史風情が残りながらも人口の減少が続く地域で、若者たちが新しい生活スタイルに挑戦している。
 3人は、恵那市出身で広告代理店に勤める根崎怜司さん(24)、昨年東京から移住し、建築事務所で働く羽根田雄仁さん(28)、三重県四日市市出身で今年岐阜大に入学した多田陸人さん(18)。『勝手に何かが集まってくるような、観光とは違った裏の入り口にしたい』との思いを込めて『おかって』と名付けて暮らしている。
 住み始めた経緯は三者三様。4年前から住んでいる根崎さんは、社会人になってからも継続。羽根田さんはコロナ禍で東京よりも地方で働く魅力を感じて岐阜を選び、仕事の縁で古民家を紹介されて入居を決断。多田さんは下宿先を探していたところ、指導を受ける教授から薦められて5月から住んでいる。
 夏の湿気や冬の冷え込みなど不便な点も多いというが、耐震補強をしたり、棚を取り付けたりして、少しでも環境が良くなるように知恵を絞って改装。建築事務所で設計の仕事をしている羽根田さんは『今残っているものを生かしながら、魅力ある建物にしていくのは仕事にもつながる部分がある』と話す。
 住み始めた経緯や生活リズムは異なる3人だが、町の魅力を感じている点は共通点。共有のリビングに集まり、町を良くしていく方法を語り合ったり、プライベートな話をしたりして、盛り上がっているという。多田さんは『自分たちがいずれ出ていったとしても、また次の若い人たちが住んでくれるような場所にしていきたい』と話す。(2022/5/24/ 09:28更新)」
一読しておわかりのように、タイトルにある「古民家シェアハウス」は事業として成立しているわけではなく、あくまで居住者が自主的に必要な資金を調達し(持ち寄り?)、自主運営しているもののようです。言ってみれば「好きでやっている」ことであり、だからこそ「不自由さ」を楽しめるゆとりもあるのでしょう。したがって、ビジネスとしてシェアハウス経営を展開しているシェアハウス大家さんとは相容れない発想かもしれませんが、「自ら望んで不自由さを楽しむ」という考え方をする人びと(=シェアハウス居住者)も、世の中には一定数存在することのひとつの証明と言えるかもしれません。この築130年の古民家のオーナーがどこの誰で、入居者たちとどのような契約を交わしているのか、記事中では一切触れられていませんが、おそらくは誰も住んでいない空き家を安い賃料で好きなように使わせているのではないでしょうか。所有しているだけで毎年固定資産税がかかり、売却したくても買い手がつかず、取り壊しの費用もなかなか捻出できない古民家のオーナーにとっては、悪くない話だろうと推測できます。古さ・不便さ・不自由さを逆手にとって、儲けは期待できないまでも損にはならないのであれば、これはこれで「空き家の有効活用」のケーススタディになるかもしれません。
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