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第103回 社会貢献とシェアハウス

今年はコロナ禍の到来から3年ぶりに「行動制限のないお盆休み」となりましたが、オミクロン株BA.5による「第7波」により、日本はたちまち「一週間の新規感染者数世界最多」という、甚だありがたくない称号を冠せられることになってしまいました。しかも、より感染力の強いBA.2.75、通称“ケンタウロス”の感染例が国内でも確認されており、現在の第7波の収束を待たずに、「8月末にはBA.2.75による第8波が到来する」とも予測されております。
一方、岸田政権は安倍元首相暗殺事件に端を発する「旧統一教会との不適切な関係」の払拭に必死のようですが、旧統一教会との関係を報じられた7名の閣僚を解任し、19名中14名を入れ替えて発足した第2次岸田改造内閣の閣僚の中から、すでに8名が「旧統一教会との不適切な関係」を指摘されているような状況です。それほどこの問題は根深く、目先の小細工ではどうにもならないということなのかもしれませんが、内閣改造の直後に支持率が急落するという異例の事態では、政権の先行きも危ぶまれます。ただでさえ、コロナ禍と物価高騰のダブルパンチに見舞われている現在、為政者に人望と求心力がなければ何ごとも前進しません。過去のことは今さらどうしようもないとしても、せめて、これからの行動については、立場に伴う責任感を持っていただきたいものです。

さて、今月もシェアハウスを中心に、不動産関連で目についたニュースをいくつかご紹介して参りましょう。まずは、これまで当コラムで何度か取り上げて参りました「空き家問題」について……。
8月10日、国土交通省では「空き家対策に関する計画 8割の市区町村で策定! 〜空き家対策に取り組む市区町村の状況について(令和4年3月31日時点調査)〜」( https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001495574.pdf )というタイトルで、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(=空家法)の施行状況に関する調査結果を発表しました。これによると、全国1,741市区町村のうち、空き家対策に関する計画は約8割に当たる1,397市区町村で策定されていることが分かりました。また、法定協議会は、5割超に当たる947市区町村に設置されているとのことです。なお、2015年の空家法施行から2021年度末までに講じられた同法第14条に基づく措置は3万3,943件(助言・指導3万785件/勧告2,382件/命令294件/行政代執行140件/略式代執行342件)となりました。このほか、空家法に基づく措置や、市区町村による空き家対策によって除却や修繕が行なわれた空き家の件数は14万2,528件あり、その内訳は、特定空き家等1万9,599件、管理不全の空き家12万2,929件となっています。ちなみに、ここでいう「特定空き家等」とは、空家法第2条第2項に定められた「特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう」と定義されているもので、総数約4万件のほぼ半分に対策が施されているため、現存する特定空家等はおおむね2万件ということになります。とはいえ、国交省の調査報告書は、あくまで集計した数字を伝えるのみで、個々の空き家の実態がわかるわけではありません。次にご紹介するのが、2022年7月28日付の『朝日新聞デジタル』に掲載された「アーティスト5人、3軒の空き家で公開創作 空き家でアート」( https://www.asahi.com/articles/ASQ7W6WCTQ6WUZOB00C.html )という平山亜理記者の記事。以下、一部抜粋して引用します。
「甲府市内の空き家を、アートでよみがえらせるイベントが来月にかけて、同市の愛宕山周辺で開かれている。空き家率が全国一とされる山梨県で、県内外のアーティストや地域の寺を巻き込んで、空き家を地域のにぎわいや交流を生み出す場にするための取り組みだ。
 イベントは、『Akiya de Art』(空き家でアート)。愛宕山にある3棟の空き家を利活用し、シェアハウスやイベントスペースにしているプロジェクト『結』が主催する。(中略)
 アーティストの1人、コビトフカミさん(43)は、都内で介護の仕事をしながら、4月から『結』のシェアハウスも借り、2拠点で活動する。祖父母や両親が山梨出身だ。普段はオーダーを受けて動物などの油絵を描くことが多いという。
 制作現場となる空き家からは、甲府盆地や富士山などが見渡せるため、竜が空に昇っていく絵を描く予定だ。シーツや半紙、物干しざおなども使いたいという。コビトフカミさんは『地域の人を巻き込みエネルギーにしていくのが面白い。あるものを利用して皆さんと一緒に共同創造をしたい』と話す。
 北杜市育ちの大方岳さん(24)は、石材店の倉庫で、創作活動をする。線路に面したガラス窓に絵を描き、室内には実物の石などを置く。他には、山梨大学の学生横山剣士郎さん、芸術家を支援する団体『AIRY』代表の坂本泉さん、渡辺リサさんが参加する。(中略)
 山梨県は、総務省が5年ごとに実施する『住宅・土地統計調査』の最新調査(2018年)で、空き屋率が全国一(21・3%)となり、各地で対策が進んでいる。『結』の代表大原勝一さん(57)は、『空き家を宝物にし、次世代の新しい豊かな暮らし方を探し、地域おこしを図りたい』と話している。(後略)」
(平山亜理 2022年7月28日 10時45分更新)
要約すれば、「シェアハウス運営業者が主催する街おこしイベントに、主催者の運営するシェアハウスの住人を含む何人かのアーティストが参加した」というだけのことですから、「シェアハウス関連のニュース」と言って間違いではないものの、大多数のシェアハウス大家さんにとっては、他人事として関心の薄いニュースかもしれません。しかし、これを「空き家問題」という視点で捉えるのであれば、シェアハウス業界とはさまざまな面で関連性があり、積極的に関心を持って取り組むべきテーマであると考えております。なぜなら、「シェアハウス化」は空き家の有効活用の議論では常に上位にくる「可能性」であり、それでいて、国や自治体が直接運営しようとしても上手くいかないケースがほとんどだからです。
これまでに当コラムでも再三指摘してきたように、シェアハウスの運営は民間、それも過去の経験知をノウハウとして蓄積している一部の個人や業者でなければ、長期間にわたって継続的に利益を計上していくのは難しいビジネスと言えます。従って、上記の『結』の事例のように、「空き家問題」への対策に経験豊かなシェアハウス運営業者(シェアハウス大家さんを含む)が参入してくることは、業界にとってメリットがあるだけでなく、社会全般にとっても好ましい影響をもたらすことが期待できます。上記の事例は、さすがに特殊過ぎて他の物件や地域で応用できそうにありませんが、広義の「シェアハウスを通じての社会貢献」であることは間違いないでしょう。

「シェアハウスを通じての社会貢献」というテーマについて考えた場合、上記の「空き家問題」のように、何らかの社会問題への対応策であれば関係者の理解も早く、効果的だと思われます。たとえば、「コロナ禍」という社会問題。親子の家庭内感染と同様、共用スペースのあるシェアハウス内でも感染リスクは高く、実際にクラスターが発生したシェアハウスもたしかにありますが、その一方で、長引く巣ごもり生活の中でひとつ屋根の下に適度な距離感を保って他人が暮らしている住環境は、孤独感や不安感の解消に効果的であると言われています。コロナ禍といえば、日本で最初に緊急事態宣言が発出された2020年4月からすでに2年半近く経ちますが、あの当時、いったい誰に現在の状況が正確に予測できていたことでしょうか?
コロナ禍と同じく、ウクライナ戦争もまた、世の中の当初の予想を超えて長期化しており、今年2月のロシア軍の侵攻から半年余が過ぎた現在も一向に戦火の収まる気配は見えません。こうした中で、ウクライナから脱出してきた難民のうち、ごく一部は日本へも流入しております。「ウクライナからの難民に1年間、シェアハウスを無償提供する取り組み」については以前にも当コラム内でご紹介したかもしれませんが、8月4日には、これをさらに発展させた、「ウクライナ難民の人びとに日本での就職を支援する」という活動についての情報も発信されています。それが「ウクライナ含む難民向けシェアハウス無償提供プロジェクト、就職支援活動へ発展」( https://news.biglobe.ne.jp/economy/0804/prt_220804_5694988709.html )と題するプレスリリースで、具体的な内容についてはリンク先をご参照ください。

「社会貢献」という言葉だけはよく耳にするものの、実際に自分自身や自分たちの会社に社会貢献ができているかどうかについて実感する機会はなかなかないと思います。そうした中で、空き家問題にしても、ウクライナ難民問題にしても、もし自分の行動が何かの役に立つと実感できる機会が得られるのであれば、それだけでも十分、自分にとって価値のある経験になると思われます。そういう意味では、たとえ自分にできることがどんなに些細なことであっても、何もしないよりは絶対にいいと断言して良いでしょう。
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