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しばらくは耳にタコ、という感じであまり話題に上らなかった新型コロナウイルス関連のニュース
ですが、ここ数日、新たな動きが報じられるようになってきました。現状の「第7波」では、感染
者数こそ減少傾向にあるものの、その一方で、死亡者数は連日200人を超えており、依然として高止
まりが続いています。医療現場からの指摘によれば、コロナによる肺炎が悪化して重症化するケース
が多かった第5波までとは異なり、第7波では基礎疾患や全身状態が悪化して亡くなる高齢の患者が
多く、死亡に至る患者の容体の傾向が変化しているとのこと。すなわち、基礎疾患のある高齢者が
感染した場合、感染症そのものは肺炎にまで至らない「中等症」で止まっても、持病が悪化して死
に至るケースが増えているようです。こうした中で、政府は、いわゆる「水際対策」を緩和して
「1日当たりの入国者数の上限撤廃」や「ツアー以外の個人旅行を認める」ことなどを検討している
ようです。さらに、「感染者数の全数把握の見直し」やこれに伴う「コロナ接触確認アプリ『COCOA』
の機能停止」など、負担軽減を理由に全般的にコロナ対策を簡略化しようとする動きが見られます。
わずかに明るい話題としては、9月12日付で「オミクロン株対応ワクチン」の国内での使用が正式に
認められました。2回目までを終えた12歳以上の人を対象に、来週にも高齢者や医療従事者などから
接種が始まる見通しとのこと。これでとりあえず、第7波の収束は見えてきたように思えますが、果
たして……。
さて、2022年もほぼ4分の3が過ぎようとしております。ここで改めて、直近の不動産市況の動向を
見て参りましょう。まずは9月12日付で(株)矢野経済研究所が公表した「住宅設備機器市場に関す
る調査(2022年)」(
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3046 )の結果か
ら。これは、2022年5〜7月にかけて、同社の専門研究員が住宅設備機器メーカーおよび関連団体等
を対象に直接面談・ヒアリング調査・文献調査等を行った結果をまとめたものです。同調査結果に
よると、「水回り設備機器」「水回り関連設備機器」「創エネ関連設備機器」の主要住宅設備の
2021年度の市場規模は合計で1兆8,083億5,000万円(前年比2.9%増)となっており、各分野でおお
むね堅調に伸長しているとのこと。この理由としては、コロナ禍による2020年度の需要急減等から
の反動増や新築住宅市場の回復等が考えられるといいます。その上で、2022年度の市場規模は前年
度をさらに上回る1兆8,551億円と予測しています。同社では「コロナ禍前の水準に向けて回復傾向
が続くとみられ、徐々にその速度は緩やかになっていくだろう」と予測しており、その理由として
「経済活動の本格化に伴うレジャー需要の回復や世界的な原材料価格の高騰、サプライチェーンの
混乱等が今後の市場拡大の足かせになる可能性もある」と指摘しています。なお、今後、水回り関
連設備機器や創エネ関連設備機器の市場が堅調に拡大するとの予測から、2024年度には市場規模1兆
8,660億円を見込んでいるといいます。ただし、住宅設備機器の需要増については、同社が分析して
いるように新築住宅供給量との関連性も深いものの、その反面、2020年以降は「巣ごもり生活」の
長期化の影響で既存の住宅設備機器の劣化・老朽化が加速したことにより、交換需要が増加した……
という理由も考えられるのではないでしょうか。
これと同じ9月12日、(公財)東日本不動産流通機構は、2022年8月度の「首都圏不動産流通市場動向」
(
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202208_summary.pdf )を発表しています。これによ
ると、同月の首都圏中古(既存)マンション成約件数は2,346件(前年同月比10.3%減)で、じつに
2ケタ減となりました。都県別では、東京都1,227件(同3.8%減)、埼玉県260件(同20.5%減)、千
葉県296件(同11.1%減)、神奈川県563件(同17.2%減)とすべての地域が前年比で減少しています。
その一方で、1平米当たりの成約単価は67万2,900円(同13.7%上昇)となり28ヶ月連続、1戸当たりの
平均価格は4,280万円(同13.4%上昇)と27ヶ月連続で、それぞれ前年同月を上回っています。さらに、
中古(既存)戸建ての成約件数は877件(同16.2%減)と8ヶ月連続で前年同月を下回っており、逆に
平均成約価格は3,779万円(同10.3%上昇)と22ヶ月連続で前年同月を上回っています。すなわち、マ
ンション・戸建てともに価格上昇傾向が続き、それに反比例して成約件数は減少傾向が続いているこ
とがわかります。
参考までに、9月8日付で(株)東京カンテイが発表した2022年8月の「主要都市圏・主要都市における
中古(既存)一戸建て住宅の価格動向」(
https://www.kantei.ne.jp/report/kodatecyuko202208.pdf)
によると、首都圏の中古(既存)戸建て住宅の平均価格は3,902万円という数字が出ています。同じ
2022年8月度の調査ながら、前掲の東日本不動産流通機構の平均価格とは120万円ほどの開きがあり
ますが、これは調査対象や調査方法の違いによる誤差の範囲内と考えていいでしょう。また、国土
交通大臣指定の公益法人である不動産流通機構の登録物件は、民間事業者よりもやや低価格のもの
が多い傾向があるかもしれません。さらに参考として、同日に発表された新築木造一戸建て住宅の
平均価格(
https://www.kantei.ne.jp/report/kodatesintiku202208.pdf )は、首都圏で4,329万
円となっています。新築と中古で400万円程度の差しかついていないのは意外とも思えますが、成約
ベースの調査であることから、中古住宅は全般に価格の高い築浅物件が売れ、新築住宅では逆に比較
的価格の低い物件を中心に売れていると解釈することができます。
また、同じ9月8日付で(株)住宅産業研究所が「2021年度都道府県別低層住宅供給動向調査」
(
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000081739.html )の結果を発表しています。同
社は住宅関連分野に特化した専門シンクタンクであり、上記は同社が現地調査等を基に、全国47都道
府県の企業別供給動向を分析したものです。これによると、各自治体に対して建築確認申請を1棟以
上提出した住宅事業者は2万9,102社(前年度比1,156社減)となり、3年連続の減少となったそうです。
供給規模別に見ると、年間20棟以上の建築確認申請を提出している大手事業者はおおむね増加して
いる一方で、年間19棟以下の中小・零細事業者は大幅に減少し、前年度から差し引き1150社以上の
減少となっており、中小規模以下の事業者の淘汰が進んでいる状況が窺えます。年間1棟の供給すら
できていないということは、もはや住宅事業者の看板を維持することができず、倒産・廃業に追い
込まれた事業者も少なくないということになります。少子化による人口減少や空き家問題など、た
だでさえ厳しい住宅業界の中で、中小・零細事業者の生き残る道はますます先細りになってきたよ
うです。
一方、9月6日付で東京都が発表した「2022年7月の住宅着工統計」
(
https://view.officeapps.live.com/op/view.aspx?src=https%3A%2F%2Fwww.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp%2Fabout%2Fdata%2Ftokei_r04_07.xls&wdOrigin=BROWSELINK )によると、同月の新設住宅着工戸数は1万743戸(前年同月比7.1%減)となり、
5ヶ月連続で減少しました。このうち、持家と貸家を除いた分譲住宅では、マンションが5ヶ月連続
で減少し、戸建ては逆に12ヶ月連続で増加しています。また、地域別では23区内が5ヶ月連続で減少、
市部は3ヶ月連続で増加となっており、地価の安い(従って、施工費も販売価格も安い)郊外で着工
件数が増えていることがわかります。
今回はひたすら細かい数字の話ばかりになってしまいましたが、一つひとつの数字の増減に一喜一憂
するのではなく、それぞれの数字が何を示しているのか、その意味するところを噛みくだいて理解し、
不動産市況全体の動向を読み解く目が求められます。中小以下の住宅事業者数が減少し、東京23区内
では新築住宅の着工件数(=近い将来の供給件数)が減り続け、完成物件は新築・中古とも価格が上昇
傾向にあり、これに伴い成約件数は減少を続けています。住宅設備機器の市場規模は回復傾向にある
とはいえ、あくまで売上ベースですから、単価の上昇(これは当然、新築やリフォームによる物件販
売価格に上乗せされることになります)とも無関係ではないでしょう。つまり――今さら言うまでも
ありませんが、不動産市況は引き続き厳しい環境にあり、多くのシェアハウス大家さんにとっては、
残念ながら当面は苦しい状況が続くと覚悟しておいたほうがよさそうです。