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シェハウス コロナ 第8波 関連死 春節 ゼロコロナ撤廃 2023年

第108回 2023年とシェアハウス

昨年4月より当コラムの更新間隔が変更となっていたことで、新年のご挨拶が遅くなりました。皆様、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。2023年1月15日、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の国内初の感染例が報告されてから丸3年が経過いたしました。この間、いわゆる「第8波」を数えるまでの感染拡大の波が押し寄せましたが、ここへ来て、じわじわと「コロナ関連死」の死者数が増加しているようです(なお、メディアによって若干の差異があり、たとえば、1月11日における全国のコロナ関連死者数を、『共同通信』では520人と報じていましたが、厚生労働省の発表〔1月12日0:00時点〕では489人となっています)。一方、お隣の中国では昨年12月7日、突如として従来続けてきた「ゼロコロナ政策」の緩和(事実上の“撤廃”)を宣言すると、わずか1ヶ月余りのうちに死者約6万人に達したとの発表がありました。この数字自体の信憑性についても疑問の余地はありますが……いずれにせよ、感染爆発が指摘される中国がまもなく春節(旧正月)を迎えることで、水際対策の強化を求める声も上がっています。それに対して、水際対策の効果に疑問の声も上がっており、対応をめぐって議論が紛糾している状況です。今となっては、もはや「ゼロコロナ」は実現不可能、「ウィズコロナ」でいくしかない――というのは多くの識者の認めるところですが、国民一人ひとりの認識にはまだまだ小さからぬ個人差があるようです。

さて、当コラムでは今年も、直近のニュースからシェアハウス大家さんとも関連の深い話題をいくつか紹介して参ります。まずは、2023年1月7日付の『朝日新聞デジタル』に掲載された、「シャッター街に元気を運ぶ 空き店舗などでシェアハウス」( https://www.asahi.com/articles/ASR1676RXQDFUHNB00B.html )という記事。朝日新聞社会部・杉浦達朗記者による署名記事です。以下、一部抜粋して引用いたします。
「『シャッター街』と呼ばれて久しい前橋市中心市街地。市などの取り組みで昼間の人通りは徐々に増えつつあるが、まだ道半ばだ。だが、活力は確かに根付いてきている。空き店舗などを改修したシェアハウスに住み、ここで生きることを選んだ若者がいる。(中略)
 商店街のビルにある『オリオン・シェアハウス』。建物の外観は『雑居ビル』で1、2階は店舗が入っており、上に人が住んでいるようには見えない。
 だが、外階段を上って3階のドアを開けると、玄関が広がる。3階には女性の居室(4部屋)、4階は男性の居室(2部屋)と共用スペース。シェアハウス全体の使用料(光熱費込みで月額18万円)を、入居者6人全員で分担している。
 もともと3〜4階は空き店舗だった。『まちなかに住みたい』という学生らの要望を受け、ビルを所有する不動産会社が2013年にシェアハウスに生まれ変わらせた。
 住人の根本千沙季さん(23)は、21年7月からここで暮らしている。
 福島県出身。18年に前橋市内の大学に進み、アパートで一人暮らしを始めた。東日本大震災後の故郷の復興ぶりを見たり、まちづくりに関する講義を受けたりした影響で、東京都内の設計会社などへの就職をイメージするようになった。
 だが、3年生になった20年。コロナ禍で授業がリモートになり、部屋で一人で過ごす時間が増えた。翌年も状況は変わらず、『このまま社会に出ていいのか』と不安が募った。
 そんな時、『オリオン』から出ていくという先輩から声をかけられた。共同生活は未経験で『コミュニケーション力』に自信があるわけではない。迷ったが、大学の授業などで、商店街をよみがえらせようと頑張っている人たちがいると知っていたため、自分も身を置いてみようと思った。
 飛び込んでみると、住人や、別のシェアハウスとの交流がある日常は刺激にあふれていた。まちづくりの活動にも参加し、閑散としているように見える街中にも人とつながる喜びが息づいていると、肌で感じた。
 昨春大学を卒業し、まちづくりに携わる『前橋まちなかエージェンシー』に就職した。『大好きな街をこれからも見ていたい』。4年で去る予定だった前橋が、大切な場所となった。(中略)
 中心市街地にはシェアハウスが約2・5平方キロメートルに8軒集中している。運営元は不動産会社や大学、商店街関係者など様々だ。市は空き店舗と飲食店やシェアハウスといった新規事業者のマッチングに力を入れている。また、まちづくり活動に関わるシェアハウス住人の家賃を補助する制度を設けている。
 今春誕生した『広瀬川コート』は、前橋工科大の石黒由紀准教授がまちづくりの研究のため、市から紹介を受けた空き家を借りて改修した。2階に5人用の居室を設け、1階は交流空間にした。これまで同大関係者らの交流会が開かれたが、今後は地域住民も気軽に参加できるイベントも企画したいという。
 改修に携わった修士課程の宗形雅彦さん(26)は『オリオン』の『卒業生』だ。千葉県出身だが今春、市内の設計会社に就職する。工科大やまちなかの活動に関わりたいという。『行けば何かがある、という街になりつつある。その良さをもっと広めたい』」(杉浦達朗/2023年1月7日 10時45分更新)
書き手である杉浦記者(もしくは、掲載を判断した編集デスク)の意図としては、新春の話題にふさわしく「若々しくフレッシュで」「希望を感じさせる」ニュースを目指したのかもしれませんが、やや取材対象者個人の心情に寄りかかり過ぎ、具体的・客観的に「シャッター街に、どのような変化が生じている(または生じつつある)のか?」という事実については見えてこない記事になってしまっています。もちろん、「誰の目にもわかるような成果」はまだ出ていない……ということなのでしょうが、そうした状況であるからこそ、彼らの取り組みを希望的観測だけで語るのは、いささか無責任との誹りは免れないのではないでしょうか。

続きまして、昨年まで新春一発目の当コラムの恒例だった、(株)不動産流通研究所の不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』掲載の「年頭挨拶」(業界団体等)の記事に触れておきましょう。ただし、冒頭にも述べているように、更新時期が変更されたこともあり、「年頭挨拶」を深掘りするには少々タイミングが遅いようですから、ごく簡単に……。閣僚交代の相次ぐ岸田内閣の中にあって、「公明党副代表」という立場故にか、政権発足以来、国土交通相に留任している斉藤鉄夫大臣は、昨年に続いて今年も重点取り組み課題として「3つの柱」を掲げておられますが、昨年の(2)を(1)に、(1)と(3)の内容を合わせて(2)とした上で、本年は新たに「豊かで活力ある地方創りと、分散型の国づくり」という課題を(3)として掲げています。この(3)に関してのみ、以下に引用してみましょう。
「(豊かな田園都市国家の形成に向けた分散型国づくり)
 個性ある文化や豊かな自然環境を有する多様な地域から成り立つ我が国において、人々が地域に誇りと愛着を持って、安心して暮らし続けられる国土を次世代に引き継いでいくことが重要です。このため、総合的かつ長期的な国土のあり方を示す新たな国土形成計画を今年夏頃に策定します。今後、国土審議会において、デジタルを活用し、リアルの地域空間の質的な向上を図る新たな地域生活圏の形成など、次期計画の重点テーマについてさらに検討を進め、未来を担う若い世代が夢を持てる国土の将来ビジョンを示してまいります。
 このほか、二地域居住等の普及促進に向けて、引き続き、関係省庁や全国二地域居住等促進協議会と連携して、関連施策や取組事例の情報発信等に取り組むとともに、新たな働き方・住まい方への対応として、職住近接・一体の生活圏を形成するなど、豊かで暮らしやすい『新たな日常』を実現するため、テレワーク拠点整備等を推進してまいります。
(コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりや都市再生の推進)
 生活サービス機能と居住を拠点に誘導し、公共交通で結ぶコンパクト・プラス・ネットワークのまちづくりについては、昨年7月末までに立地適正化計画の作成に取り組む市町村が634都市、作成・公表した市町村が460都市、立地適正化計画と地域公共交通計画を併せて作成した市町村が336都市と着実に増加しています。今後、都市の骨格となる公共交通の確保や都市圏全体でのコンパクト化の推進等を図る支援施策の充実等に取り組み、持続可能な多極連携型まちづくりを推進してまいります。
(土地政策の推進)
 所有者不明土地対策については、広場、防災備蓄倉庫等の公益性の高い施設に所有者不明土地を活用可能とする地域福利増進事業の拡充、周辺に悪影響を及ぼしている所有者不明土地の管理を適正化する勧告・命令・代執行、市町村による対策計画の作成、低未利用土地の有効利用などに民間の立場から取り組む推進法人の指定など、改正所有者不明土地法で講じられた制度が昨年11月から施行されました。これらの制度が有効に活用されるよう、積極的な周知や支援を行い、所有者不明土地の利用の円滑化と管理の適正化に向けた取組を着実に進めてまいります。
 また、第7次国土調査事業十箇年計画に基づいて、早期の災害復旧や社会資本整備の迅速化等に資する地籍調査を進めてまいります。
(安心して暮らせる住まいの確保)
 空き家対策については、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づいて市町村が取り組む空き家の除却・利活用を支援するとともに、相続した空き家の譲渡所得の特別控除や『全国版空き家・空き地バンク』の活用促進を図ってまいります。また、社会資本整備審議会の下に『空き家対策小委員会』を設置し、空き家等の利活用・流通の拡大を含め、更なる対策の強化を検討しており、今後、その議論を踏まえて、空き家対策を充実・強化してまいります。
 誰もが安心して暮らせる住まいの確保に向け、地方公共団体等と連携して住宅セーフティネット機能の強化を図ることが重要であり、セーフティネット登録住宅の入居者負担軽減や、見守り等を行う居住支援法人等の活動に対して支援を行ってまいります。また、良質な住宅が次の世代に継承されていく住宅循環システムの構築に向け、良質な住宅ストックの形成、既存住宅流通市場の活性化、住宅取得・リフォームに対する支援に取り組んでまいります。
 マンションを巡っては、建物と居住者の両方における高齢化に対応していくため、昨年4月に制度がスタートしたマンション管理計画認定制度等の普及や、今般創設される予定の適切な修繕工事を促す税制などを通じて、マンションの長寿命化を実現する取り組みを推進してまいります。また、マンションの管理、修繕、再生それぞれの観点から、課題と必要な施策の検討を進めてまいります。
 一昨年6月に完全施行された賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律に基づいて登録を受けた賃貸住宅管理業者は、昨年12月に8,700者を超えたところです。本年は賃貸住宅管理業者に対する全国的な立入検査を行うこと等により、制度の理解促進や賃貸住宅管理業の適正化に努めてまいります」( https://www.re-port.net/article/news/0000071255/
ところで、斎藤大臣だけでなく、上記リンク先にコメントを寄せている各業界団体代表の方がたは、昨年度までは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ということを盛んに言っておられましたが、本年はこれを「GX(グリーントランスフォーメーション)」と言い換えている方が大勢いらっしゃいました。もちろん、厳密に言えば意味が違うのでしょうが……目先の用語だけ言い換えても、肝心の取り組みの中身自体はあんまり変わっていないように感じます。なお、その後、1月11日にホテル・ニューオータニで開催された(公社)全日本不動産協会、(公社)不動産保証協会、(一社)全国不動産協会の各協会東京都本部との共催による新年賀詞交歓会の場でも、全日本不動産協会の秋山始理事長は「本年はより本格的なデジタル改革と同時に、脱炭素化に向けたGXに注力する年になる。当協会においても、紙に頼ってきた入会手続き申請を令和5年度中に電子化するべく、準備を進めている。過去70年にわたって根付いてきた仕組みの大転換になるものであり、準備は万全にしたい。また、2050年カーボンニュートラル実現を目指すに当たり、政府の税制優遇などが住宅の省エネ基準に着目する方針が見られるため、GXは建築会社だけでなく宅建事業者も強く意識することが大事だ。宅建事業者の仕事は人と人とをつなぐ仕事。豊かな住生活の実現に向けて、全国の会員と力を尽くしていく」などと挨拶しております。「流行語を採り入れる」こと、それ自体が軽薄だと批判するつもりはありませんが、「採り入れるだけ」で終わってしまっている感があるのは、正直残念な気もします。もちろん、年頭挨拶の中で詳しく説明する必要はないのですが、1年後に、何らかの具体的な結果をもたらしている……というイメージがまったく浮かばないのは、何とも困ったものです。

最後にもう1つ、これは昨年のネタになりますが、2022年12月12日に『NHK NEWS WEB』の「関西 NEWS WEB」コーナーに次のような動画が掲載されました。「若者を孤立させない シェアハウスの1年 大阪」( https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20221212/2000069023.html )というタイトルで、トータルで6分半ほどの動画になります。リンク先の動画がいつまで公開されているかは不明ですが、それほど長い再生時間というわけでもありませんから、興味をお持ちの方はご都合のよろしい時にご視聴されては如何でしょうか。

2023年がスタートして2週間少々ですが、今年は暦の関係で「例年より早く休みが明けた」という方も多いと思われます。また、冒頭で触れた中国をはじめ、ロシアなどの近隣諸国の動向を見ても、例年以上に多事多端な年となることが予想されます。この先何が起きるとしても、また、皆様が何をするにしても、身体が資本になりますから、ご自身やご家族の健康にはくれぐれもご留意してお過ごしください。
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