不動産関連お役立ち情報  >  新・今月の不動産コラム  >  第109回 チャレンジ精神とシェアハウス
シェハウス コロナ ロシアウクライナ戦争 中国偵察気球 実質GDP成長率

第109回 チャレンジ精神とシェアハウス

まもなく開戦から1年が経とうとしているロシア‐ウクライナ戦争は、今なお泥沼の状況が続いています。欧米主要国を中心に30ヶ国が加盟する世界最大の軍事同盟・NATO=北大西洋条約機構は、2月15日までの国防相会議において、今後、ウクライナへの軍事支援として大量の弾薬を供給するべく、加盟各国が弾薬の生産能力を強化することで合意しました。こうした国際情勢に対して、ロシアのプーチン政権は徹底抗戦の構えを見せ、東西冷戦終結以来となるキナ臭い様相を呈しています。一方、アメリカ・モンタナ州での中国の偵察気球撃墜をめぐって米・中2国間の緊張も高まっており、時同じくしてトルコ・シリア国境で発生した大地震では、現時点で4万人以上の犠牲者が報告されています。ここ数年来のコロナ禍や鳥インフルエンザなど疫病の蔓延も重なり、今や世界中が戦争・自然災害・疫病の大流行と、さながら「終末」を思わせる危機的状況にあると言えそうです。のっけから気の滅入るような話題ばかりで恐縮ですが、残念ながら事実は事実。こんな時代だからこそ、できるだけ正確な情報に基づいて事態を冷静に分析し、適切な判断と行動を心がけなければなりません。

まずは、直近の不動産市況についての情報分析から始めてみましょう。最初に取り上げるのは、当コラムでもおなじみの中古(既存)マンション市場の動向について。同じ2月10日、(公財)東日本不動産流通機構は「2023年1月度の首都圏不動産流通市場動向( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/mw/mw_202301_summary.pdf )」を発表しました。これによると、同月の首都圏中古(既存)マンション成約件数は2,581件(前年同月比6.5%減)で、6ヶ月連続で前年同月を下回っています。内訳を見ると、東京都1,374件(同3.9%減)、埼玉県288件(同12.2%減)、千葉県287件(同18.2%減)、神奈川県632件(同2.9%減)と、1都3県の全地域で減少していることがわかります。その一方で、1平米当たりの成約単価は33ヶ月連続、1戸当たりの平均価格は32ヶ月連続で前年同月を上回っており、不動産価格の上昇傾向が顕著になっています。さらに、レインズの新規登録件数および在庫件数はいずれも前年同月から大幅に増加しており、特に後者は12ヶ月連続の増加で、8ヶ月連続2ケタ増が続いています。なお、既存戸建てについては、成約件数は13ヶ月連続で減少し、平均成約価格は27ヶ月連続で前年同月を上回っています。すなわち、マンション・戸建てを問わず、不動産価格の上昇が成約件数の減少につながっていることがわかります。

この傾向を裏づけるのが、同じ2月10日に(公財)不動産流通推進センターが発表した「全国の指定流通機構における2023年1月の既存住宅の成約動向( https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/reins/bukken/bukken2301.pdf )」です。こちらは対象範囲が全国になりますが、傾向はまったく同様で、既存マンションの成約価格・平米単価ともに32ヶ月連続で前年同月より上昇となっています。さらに、物件の築年数が20ヶ月連続でプラスとなっていることから、抱えた在庫が売れないまま時間だけが経過している状況が浮かび上がってきます。既存戸建てに関しても成約件数の減少と成約価格の上昇傾向が読み取れますが、こちらはさらに建物面積・土地面積の増加傾向も示しており、古くて大きな戸建て住宅が市場にだぶついてきている現状が窺われます。

不動産流通事業者の立場からすれば、不動産価格の上昇は、それだけなら歓迎すべき現象なのですが、その結果、「物件が売れない……」という状況に陥っているのは明らかにマイナスです。昨今は不動産に限らず、あらゆる物価が高騰しており、消費者の困窮ぶりがあちこちで報じられています。内閣府が2月14日に発表した2022年10〜12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.2%(年率換算+0.6%)と2四半期ぶりにプラス成長に転じましたが、実質住宅投資は前期比-0.1%と小幅ながらも6四半期連続のマイナスとなっており、まだまだ国民が景気回復を実感するにはほど遠い状況です。

とはいえ、先行きを嘆いてばかりいても始まりません。窮状を打開しようと思えば、積極的に新たな取り組みに打って出るのもひとつの手です。次に紹介するのは、(株)不動産流通研究所の不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』に2月13日付で掲載された「オーナーと入居者とのマッチングで実証実験( https://www.re-port.net/article/news/0000071626/ )」という記事になります。これは2月10日、大東建託(株)が同社のWebサービス「自ら賃貸」の実証実験を3月から開始する――という発表を受けての記事になります。以下、抜粋して引用してみましょう。
「(前略)同サービスは、2020年度にスタートした同社内ベンチャー制度で最終審査を通過した事業案の一つ。22年4月より開発を開始、同年7月より法規制の検証などを行ない、事業化に向けた実証実験としてサービスを提供する。
 オーナーが自ら入居者を募集することができるため、募集の際に必要な仲介手数料が不要となる点が特徴。電子契約が選択でき、契約時の初期費用や毎月の家賃、更新手数料をクレジットカードで決済することもできる。また、同社グループによる賃貸保証サービスや火災保険の販売代行サービス、住宅設備のトラブルに対応するサポートサービスも利用することが可能。
 同社は3月中に、オーナーと部屋探しをするユーザー合計2,000人の利用を目指す。(2023年2月13日更新)」
ちなみに、大東建託では2023年1月16日付で専用サイト「自ら賃貸( https://mizukara-chintai.com/ )」を立ち上げ、現在プレオープンの状態にあるようです。大東建託といえば、自宅の建替えに際して敷地の一部、あるいは敷地全体を利用してアパートを建て、その賃料収入で工事費を回収できる――というビジネスモデルを1990年代頃から大々的に展開し、大きく業績を伸ばしたことで知られています。業界内でも毀誉褒貶の激しい会社で、一部では「アパート商法」などと呼ばれることもあり、あまり芳しくない評判も耳に入ってきます。その一方で、積極的に薦めている声もあり、どちらの意見を信用していいものやら、迷っている人も中にはいることでしょう。「人は、自分の信じたい意見を信じる」というのは真理ですから、誰かの意見を聴いて、それをどう判断するかは本人の考え方次第。身も蓋もない言い方になりますが、どんなビジネスモデルであっても「絶対確実に儲かる」というものではありません。成功には成功の、失敗には失敗の原因があります。その原因の中で、「事業者が大東建託であったから……」ということはあくまで原因の一要素に過ぎません(もちろん、大東建託という会社に限った話ではありませんが)。成功する人もいれば、失敗する人もいる、というくらいのスタンスで受け止めておくのが正解と言えそうです。その上で、この「自ら賃貸」という試みをどう捉えるか? という話になりますが――選択肢のひとつとして考えた場合、なかなか興味深い試みではあると思われます。シェアハウス大家さんの場合、入居者とのマッチングは身近なテーマですから、肯定的に捉える人も少なくないものでしょう。場合によっては、シェアハウスの入居者募集に無視できない影響を及ぼすことも想像できますから、今後も注意深く動向を見守っていく必要がありそうです。

もう一本、こちらも『R.E.port』に2月9日付で掲載された記事。「三好不他、豊島区で漫画家育成のシェアアパート( https://www.re-port.net/article/news/0000071605/ )」というタイトルです。以下、全文を引用します。
「(株)三好不動産は9日、漫画の制作会社(株)ナンバーナイン(東京都品川区、代表取締役社長:小林琢磨氏)と連携し、デジタルコミック『WEBTOON』を制作するクリエイター育成プロジェクトを始動。同日、シェアアパート『TOKYO<β>MANGA-SO』(東京都豊島区、全8室)の完成を発表した。
 漫画制作に必要なノウハウや機材、デビューに向けて支援する環境を提供する。同物件は、東京メトロ有楽町線・副都心線『要町』駅から徒歩約8分の立地。三好不動産の所有物件を1棟丸ごとリフォームした。長時間の制作でも疲れない椅子や作業しやすい机や液晶ペンタブレットの設置など、WEBTOON制作に適した環境を整備した。家具・家電付き。8室の個室のほか、2室を共用スペースとしている。
 また、ナンバーナインが、オンラインで相談できる環境を用意するほか、定期的にウェビナーを開催しプロデビューに向けてサポートする。
 賃料は、通常月約7万円のところ、1年間は無料(水道光熱費を含む)。プロデビューできた場合は、発生した印税の5%を、入居日から2年間還元する(還元総額は最大50万円)。プロデビューがかなわなかった場合は、無料期間の家賃や水道光熱費を支払う必要はない。1月26日から公式Twitter(@Studio_No_9)でプロジェクトの参加者を募集している。(2023年2月9日更新)」
以前、当コラムで「21世紀のトキワ荘プロジェクト」の話題を取り上げたことがありますが、おおむね同工異曲の試みといっていいでしょう。記事本文中には「トキワ荘」という単語は一切使用されておりませんが、所在地は本家トキワ荘のあった豊島区内であり、伝説にあやかろうという意図があることは確実でしょう。福岡県に本社を置く三好不動産という会社についても、当コラムで何度か取り上げたことがありますが、良く言えば意外性のある取り組みに積極的にチャレンジしている会社で、さまざまな畑違いの事業者とコラボしつつ、ユニークなビジネスを展開しているようです。今回の事例では、「1年間家賃無料」「プロデビューできなくても家賃・光熱費を返還する必要なし」という、かなり思い切った方策を打ち出しており、少なくとも話題になることは間違いないと思われます。無論、ニッチな業界での話題であり、そのことが三好不動産にとってどの程度の具体的なメリットをもたらすかは、正直なところまるで未知数ではありますが……。
言うまでもなく、多くのシェアハウス大家さんにとって、直接的な参考になるような取り組みではないかもしれません。しかし、「異業種とのコラボ」や「話題性のあるプロジェクトへの参画」といった同社のチャレンジ精神は、八方塞がりの現状を打開する上で、何らかのヒントをもたらしてくれるのではないでしょうか。
前
第110回 不動産市況とシェアハウス2023
カテゴリートップ
新・今月の不動産コラム
次
第108回 2023年とシェアハウス

ログイン

ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失


シェアハウス大家さん
倶楽部(無料)

シェアハウスで不動産投資に踏み出すサラリーマンやOLの皆様を応援する会員制プログラムです。ご登録いただくと各種不動産投資情報やサービスを無料提供致します。
入会申込(無料)