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第111回 需要回復とシェアハウス

4月13日午前7時26分、防衛省から「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射された」との発表がありました。当日の朝、Jアラート(全国瞬時警報システム)が発信され、7時50分台〜8時10分台にかけて、北海道周辺地域を対象に「ただちに頑丈な建物や地下に避難してください」とテレビなどで何度もなんどもくり返し呼びかけていたのは記憶に生々しいところだと思います。けっきょく、8時16分に政府から新たな発表があり、「その後、情報を確認したところ当該ミサイルについては北海道およびその周辺への落下の可能性がなくなったことが確認されました」として、先の発表は取り消されましたが……。まさに「大山鳴動して鼠一匹」ということわざを地で行くような展開でしたが、警告が出されなければ「肝心な時に役に立たない」「税金の無駄遣い」と非難されたでしょうから、日本政府や防衛省の対応が間違っていたとは思えません。対象地域にお住まいの方の中には、頭から「どうせ今回も、本当に落ちたりしないだろう……」とタカをくくって、ふだん通りに出勤や登校の準備を続けていた人も、おそらくは一定数以上いたことでしょう。そうした人びとの行動を批判するつもりは毛頭ありませんが――Jアラートを無視した人びとは、万が一(億が一?)、実際にミサイルが落下した場合には、己の甘い判断を悔やむ暇もなく生命を落とす危険がありますし、仮にそうなったとしても誰も同情してくれないでしょう。政府にしてみれば「最善は尽くした」との言い訳が利く状況ですから、警告を無視して被害に巻き込まれた人に何らかの補償をしてくれるとも考えにくい。とどのつまり「自己責任」ということにされてしまいます。もちろん、死んでしまえば補償もヘッタクレもないわけですが……。「自分の生命財産は、自分で守るしかない」。残念ながら、私たちはそういう時代に生きているのだという現実を認めざるをえないようです。

さて、気を取り直して、今回も直近の話題から目についたものを紹介して参りましょう。まずは、4月11日にプレジデント社のWebサイト『プレジデントオンライン』に掲載された、ノンフィクション作家・黒川祥子氏の寄稿した記事から。これは『Yahoo!』他複数のニュースサイトに転載されていますから、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。前編「保証人、敷金礼金不要…月7万円あれば母子で不自由なく暮らせる"豪邸"シェアハウスをつくった女性の挑戦」( https://president.jp/articles/-/68278 )と後編「シェアハウス、障がい者施設、農場…不動産屋がシングルマザーを救うために立ち上げた全事業」( https://president.jp/articles/-/68281 )で構成される長文の記事であり、全文をここで紹介することは著作権上からもできませんが、無料で読めますので、詳しくはリンク先の原文をご参照ください。黒川氏は、自身がシングルマザーということもあり、女性問題や貧困問題などをテーマとした多くの著作を持つノンフィクション作家で、当該記事もなかなか読みごたえのある内容になっています。上記のタイトルからもわかるように、これはあるシングルマザー向けシェアハウスを運営する一人の女性を取材したもので、取材対象者であるその女性がこれまでどんな人生を送り、何を考え、どう行動してきたか――という、一種の「個人史」に近い内容と言えるでしょう。当然、読者の皆様にとって必ずしもすべてが共感できる内容とは限りませんが、シェアハウス大家さんにとっては参考になる部分も多いと思われます。ただ、著者である黒川氏自身には不動産業やシェアハウスに関する知識や興味がやや薄いようで、取材対象者の女性の話に対して、ところどころ「掘り下げが足りない」と感じる部分も目に付きますが……それはまあ、ないものねだりというものでしょう。

続いて、4月12日付けで発信された「ひきこもりのための田舎のシェアハウス『人おこし』、新体制へ」( https://www.mapion.co.jp/news/release/000000002.000081136-all/ )という話題。これはリンク先からもわかる通り、企業PR配信業者である『PR TIMES』のニュースリリースになります。要するに当事者自身によるPR広告であり、一般的なマスメディアの記事に比べて信憑性という意味では少々疑問符がつきますが、発信元が営利企業ではなくNPO法人ということで、ここで紹介させていただきます。もっとも、上記したタイトルにあるように、趣旨としてはNPO法人の代表理事および役員が交代し、新体制となったことを告知する内容ですから、そのこと自体は、シェアハウス大家さんにとってさほど関心のあることではないと思われます。ただし、同NPO法人の成り立ちとこれまでの取り組み、今後の運営方針などについては、あるいは参考になる部分もあるかもしれません。従って、ニュースリリースの趣旨についてはリンク先をご参照いただくとして、ここでは発信元である同NPO法人の自己紹介部分のみ以下に引用することにします。
「【人おこしシェアハウスとは】『学校に行けていない』『ひきこもっている』『コミュニケーションが苦手』など、生きづらさを抱える若者たちが全国から集い、社会的自立をめざすシェアハウス。岡山県北部の大自然に囲まれて、仲間たちと一緒に、そして支援のある安全な環境で、少しずつチャレンジ!さまざまな経験を積み、次のステップへと進んで行きます。(中略)
【企業情報】NPO法人 山村エンタープライズ2012年岡山県北『梶並地区』の地域おこしを目的として任意団体を設立し、2015年にNPOとして登記。限界集落の地域活性化を目指し2012年に立ち上げた『山村シェアハウス』で、不登校・ひきこもりの若者が次々に自立していった経験から、2016年春『人おこしシェアハウス』をローンチ。カウンセラー、心療内科医、臨床心理士、精神保健福祉士などの専門家から、地域の企業や農家さん、お寺さん、そして近所のおじちゃんおばちゃんまで、地域の包摂力を結集して、若者たちを応援する、『ひきこもり支援』の新しいモデル構築を目指す」
ごくごくローカルな話題でもあり、「自分とは関係ない……」とお考えのシェアハウス大家さんもいらっしゃるかもしれません。たしかに、このNPO法人の目的はあくまで「ひきこもり支援」ということですから、「シェアハウス経営で儲けよう」などということははじめから考えてもいないのでしょう。しかし――「シェアハウスが、ひきこもり支援に有効だ」というのは今のところ仮説に過ぎませんが、彼らの取り組みでその有効性が立証できれば、シェアハウスの新たな用途として、シェアハウスビジネスの可能性をさらに広げることに繋がるかもしれません。

そしてもう1本、4月10日付けで情報サイト『健美家』に掲載された「【国際シェアハウス需要回復】緊急事態宣言中より稼働率が約2倍に。インバウンド需要も上昇」( https://www.kenbiya.com/ar/ns/research/r_other/6674.html )という記事について。お察しの通り、これが今回の目玉になります。この『健美家』というのは、ご存じの方も多いと思われますが、健美家株式会社の運営する不動産投資と収益物件の情報サイトです。上記の記事は、健美家編集部による「不動産投資ニュース」の1本です。以下、一部抜粋して引用します。
「首都圏・関西に国際シェアハウスを展開する有限会社Come on UPは、コロナ禍の2020年には最低45%まで落ち込んだ賃貸稼働率が、2023年3月の時点で86.94%まで復活。外国人利用者からの問い合わせ増も踏まえて、国際シェアハウスの需要復活とインバウンド需要の上昇が見込める結果となった。
また、入居者アンケートにより、コロナ禍からの入居目的や入居してからのメリットなどの回答から、シェアハウスでの共同生活から得た経験が、
・日常生活でのゴミの減少
・家賃や生活費のコストダウン
だけではなく、
・ハウスメイトとの精神的な安心感や温かさを体感できる事
が大きな入居価値となっている事が確認できた。
※過去17周年間の首都圏・関西の合計35軒のシェアハウス、延べ4000名以上が入居滞在したデータを元に算出(後略)」
同記事ではその後、「調査の背景」として「コロナ禍による国際シェアハウスの稼働率の落ち込みが回復基調にあること」を挙げ、「調査の主な結果」として「入居問い合わせの外国人比率」「インバウンド需要の増加」「コロナ禍で実感された、シェアハウスの温かさ」などの各項目について、入居問い合わせデータおよび住民アンケートからの声をまとめています。こちらも詳しくはリンク先の元記事をご参照いただくとして――ここに来てようやく、先行きの明るい話題を取り上げることができたのではないかと思います。無論、これにしてもあくまで一民間企業による調査・分析であり、ここに記された数字を無批判に鵜呑みにするわけにはいかないと思いますが、少なくとも根拠のない希望的観測ではなく、定量調査に裏づけられた数字に基づいた結論だということは信頼できるのではないでしょうか。今後も引き続き定点観測していく必要はあるものの、これまではまったくの五里霧中だったのに、心なしか、前方にかすかな希望の灯が見えてきたような気がします。

いささかコジツケめいて聴こえるかもしれませんが……今回ご紹介した記事は、この3本目のニュースが報じられた翌日に1本目、翌々日に2本目と、相次いで世に送り出されました。偶然でしょうが、どちらもタイトルにはことさら「シェアハウス」というワードを前面に打ち出しています。ちょっと前までなら、手垢の付いた?今さら感?のあるワードのように受け止められていたかもしれませんが、ここにきて、だいぶ風向きが変わってきたように感じられます。前回のコラムで申し上げたように、いわゆる「コロナ5類移行後」の見通しとしては、必ずしも楽観できる材料ばかりではありません。しかし、先行きに明るい希望があれば、可能性を信じて困難にチャレンジする勇気も生まれます。そして、希望さえ失わなければ、たとえ失敗や挫折をくり返しても、いつかふたたび立ち上がる力を蓄えることができるはずです。
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