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第127回 防災とシェアハウス

9月1日は「防災の日」。言うまでもなく、これは今から101年前に関東大震災が発生した日であり、1960年6月11日に閣議決定した「政府、地方公共団体等関係諸機関をはじめ、広く国民が台風、高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、これに対処する心構えを準備する」ために制定された防災啓発デーです。しかるに今年、2024年9月1日は今度の日曜日に迫っていますが、政府はこの日に開催する予定であった「総合防災訓練」を直前の8月28日になって中止すると決定しました。その理由はもちろん、現在進行形で被害が拡大しつつある台風10号。29日朝に鹿児島県に上陸し、九州各地を記録的な豪雨と暴風に巻き込みながら「自転車並みの速度」でゆっくりと進行中とのことです。同日夜の時点ですでに少なからぬ死傷者が報告されていますが、今後、どこまで被害が拡大することになるか……想像もつきません。皆様もくれぐれもご注意ください。
なお、この2024年は、正月の1日に発生した能登半島地震(最大震度7)の記憶も生々しいところですが、お盆休み前の8月8日には、宮崎県日南市で最大震度6弱が観測される地震が発生しています。まさに、自然災害には盆も正月もないというところでしょうが……宮崎県の地震では、むしろ地震発生直後に気象庁から発表された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」のほうが、特に被災地から遠い地域にお住まいの方にとって強い印象を与えたのではないでしょうか。同報による注意措置は8月15日17時をもって解除されましたが、災害に対する人びとの関心はかつてないほど高まってきているようです。

さて、今月は更新のタイミングもあって、目についたニュースはたまたま(なのでしょうが……)防災関連のテーマが多くなりました。まずは、8月28日付けで発表された(株)一条工務店のプレスリリースの話題からご紹介していきましょう。タイトルは「『災害と住まいについての意識調査2024』結果を発表 9割以上の人は災害でライフラインが停止しても在宅避難を優先したい 在宅避難を希望する約2割が飲食料・生活必需品の備蓄をしていない―築31年以上の家に住む人の8割以上が、耐震性に不安を感じている―」( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000060.000062185.html )となっています。昨今の実用書のタイトルよろしく、これを一読しただけでおおよその内容は想像できると思いますが……。この「災害と住まいについての意識調査2024」は、7月6〜15日の9日間、全国の男女1228人にオンラインアンケートを実施した結果を取りまとめたものです。たとえば……「災害でライフラインが停止した場合でも、できる限り在宅避難を優先したいか」という問いに対しては、「とてもそう思う」が51.5%、「そう思う」が38.8%となり、合計90.3%。9割以上が在宅避難を優先したいと考えていることがわかりました。その一方で、在宅避難を希望する人に対して「ライフラインが停止した場合に備え家族全員分の飲食料や生活必需品を何日分備蓄しているか」をいう質問では、「1〜2日分」と答えた人が32.0%で最多となり、「1週間分以上」と回答した人は全体の3.3%に留まりました。このほか、自宅の耐震性に不安を感じている人に自宅の築年数を問うと、「築6〜10年」で過半数を超える55.7%、「築21〜30年」で67.4%、「築31年以上」では81.8%と。8割以上が不安を感じていることがわかります。さらに、「自宅周辺のハザードマップを見たことがあるか」という質問では、「見たことはあるが内容を忘れた」が40.2%、「見たことがない」が11.8%となり、過半数の人が見たことがないか、覚えていないことがわかりました。「自然災害の際に避難する場所や避難経路を家族全員が把握しているか」という質問に対しては、「いいえ」が45.4%、「分からない」が20.3%で、6割以上の人が把握していないというのが実態のようです。すなわち、「自宅の安全性に不安はあるものの、自宅を捨てて逃げたくはない。しかし、自宅には必要なだけの備蓄もなく、どこに避難すればいいのかもわかっていない」という方が圧倒的多数を占めている、という、何ともうすら寒い調査結果となりました。

続いて、同じ8月28日付けで(株)不動産流通研究所の運営する不動産ニュースと不動産業務のためのサポートサイト『R.E.port』に掲載された、「事業継続には『発災時の行動力向上が必要』」( https://www.re-port.net/article/news/0000076639/ )という記事。以下、抜粋して引用してみましょう。
「三井不動産グループで事業継続力強化支援サービスを提供するアンドレジリエンス(株)は28日、マスコミを対象にしたオンラインセミナーを開催した。
 同社は2023年1月より、災害等の出来事を動画により疑似体験し、取るべき行動にどこまで気付けるかを定量的に評価、行動力を点数化して見える化する『災害時行動力の見える化ツール』(以下、『見える化ツール』)を提供している。(中略)
 災害対策の基本はBCPの策定といわれているが、同社の調査によると、実際に策定している企業は16年7月で19.8%、24年7月が19.8%と8年間で4.3ポイントしか増加していない。さらに、策定以降に計画見直しを実施している企業は44.9%にとどまり、内容が最新の状態に更新されていない懸念も確認された。
 『見える化ツール』を用いてビジネスパーソン2万693人の災害時行動力を採点したところ、平均点は100点満点中46.8点。(中略)
 なお、自社のBCP策定の有無について回答があった社員のデータを比較してみたところ、策定している企業・組織の平均点が47.9点、未策定が47.7点と両者間にはほとんど差がなく、BCP策定有無が適切な行動力につながっていない実態が明らかとなった。
 さらに、災害発生直後にすべき行動について気付けた割合を分析したころ、『避難誘導』『対応体制の設置』『応急救護の実施』といった、人命安全確保に直結する発生直後の初動行動の回答率がいずれも4割を下回った。(後略)」
なお、リンク先の元記事では、これらの調査結果について、同社プリンシパルコンサルタントの伊藤毅氏による分析コメントが掲載されていますので、興味のある方はそちらも是非ご参照ください。

次に、8月27日付けで東京都が発表した、「東京都、災害時の被災住宅修理で都中建と協定」( https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2024/08/27/06.html )というニュース。これは単に、東京都がその前日の8月26日に(公社)東京中小建築業協会(都中建)との間で「災害時における被災住宅の応急修理に関する協定書」を締結した、というだけのニュースですが、もう少し細かく協定の内容に触れると、同協定は「災害時の応急住宅対策強化を目的としたもので、被災住宅の応急修理について協力体制を強化するもの」で、「都中建は災害発生時において、東京都からの要請を受けて応急修理業者のあっせん等、協力を行う」という取り決めになっています。東京都ではこれまでに、(一社)東京建設業協会、全国建設労働組合総連合東京都連合会、(一社)災害復旧職人派遣協会の3団体と同様の協定を締結しており、都中建は4団体目ということになります。災害対策としての実効性については正直、未知数というほかありませんが……何であれ、災害への備えは少ないより多いほうが「安心感が得られる」という効果はあると思われます。

個人にできる災害への備えとしては、地震保険・火災保険などが考えられますが、8月26日には、SBIいきいき少額短期保険(株)が「“地震・防災”に関するアンケート調査結果」( https://www.i-sedai.com/pdf/NewsRelease20240826.pdf )を発表しました。これは、全国の20歳以上の持ち家(一戸建て、分譲マンション)居住者を対象に、7月24日〜8月4日に調査を実施したもので、有効回答数は1,111名となっています。これによると、現在、不安を感じる災害については、「地震・津波」(55.6%)が最多となり、「豪雨・洪水、がけ崩れ、地滑り、土石流」(36.7%)、「暴風、竜巻」(27.3%)、「大規模な火災」(22.8%)と続きました。また、近い将来、住んでいる地域で大地震(震度6強以上)が発生すると思うかについては、「発生すると思う」「どちらかといえば発生すると思う」の合計が57.8%と過半数を超えています。さらに、大地震発生時に自宅が被害を受ける可能性については、「大きな被害を受けると思う」「どちらかといえば受けると思う」が64.7%となっています。家庭で行っている地震・防災対策としては、「非常用の食料・水を準備している」が47.7%と最も多かった一方で、「対策をしていない」が25.8%と4人に1人の割合となりました。なお、自宅が地震で被災した際の自宅再建費用の捻出方法については、最も多かった「地震保険」が44.7%、「貯蓄やその他金融資産」が27.6%、「共済等の地震保険以外の補償」が17.6%となったものの、「特に準備はしていない」も35.0%となり、こちらは3人に1人の割合でした。このほか、自宅被災時に公的支援を受けるため必要な「罹災証明書」について「知らない」と回答した人が34.1%に上り、「20歳以上の持ち家居住者」という共通条件にあっても個々人の間にはかなりの情報格差があることが浮き彫りとなりました。

このほか、8月23日には国土交通省が「木造住宅の安全確保方策マニュアル」( https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001760099.pdf )を公表しています。これは、「住宅の耐震化をさらに進めるための方策」および「やむを得ず本格的な耐震改修等を行うことができない場合でも、地震からのリスクを低減することが考えられる方策」を含めて普及することを目的にまとめたマニュアルだといいます。上記のリンク先からマニュアルの全編を確認できますが、PDFファイルで58ページとなかなかのボリュームです。マニュアルは全3編構成で、?編では、住宅の耐震化の促進として、耐震診断・補強設計・改修に必要な資金融資といった耐震化の支援制度の概要と、耐震化のさらなる促進に向けた方策を掲載。?編は部分的な改修工事の実施や、住まい方の工夫等の地震からのリスクを低減するための方策とし、?編は、家具の転倒防止や棚ストッパーの設置といった、日頃からの災害への備えをまとめています。サラッと読むにはなかなか重たい内容ですが、時間をつくってでも一度は目を通しておくことをおススメいたします。

災害には盆も正月もない――と冒頭で述べましたが、昨今は災害の発生頻度といい、被害規模といい、かつてないレベルで高まってきているように感じられます。自然災害は、人智の遠く及ばない神の領域……とは申しませんが、発生を正確に予測することも、被害を完全に防ぐことも、今の人類には不可能だというのは紛れもない事実です。万一の時には、いい加減なデマに乗せられたり、自分勝手な思い込みで行動したりせず、できるだけ正確な情報を集め、慎重に行動することが大切です。
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