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第129回 不動産市況とシェアハウス2024秋

10月1日の臨時国会で内閣総理大臣に選出された石破茂新首相は、さっそく伝家の宝刀・衆院解散総選挙に出ました。10月15日告示、27日投開票という最速(?)スケジュールを強引にねじ込んできたため、全国各地の選挙管理委員会および自治体、投票所となる小・中学校などで混乱が広がっています。一部報道によれば、X(旧Twitter)上で「急な選挙で運動会が延期になったのはかわいそう過ぎる」「お祭りも中止…何カ月も準備していたのに」などのつぶやきが何通も投稿されているとのこと。投票所に指定されているのは学校施設だけでなく、公民館や地域スポーツセンターなどの施設も含まれており、この時期、これらの施設を会場として開催予定だった各種イベント等も、延期や中止を余儀なくされているようです。昨今では、運動会などの見学は児童・生徒の家族限定とし、部外者の立ち入りを厳しく禁止していますから、地域内の不特定多数が出入りする選挙と同時に開催するのは難しいということなのでしょう。今回の選挙について、自民党では「新たな総裁が選ばれ、新政権ができたならば、早期に衆院を解散し、国民からの力強い後押しを得て、政策を推進するべきだとの判断から、石破総裁は解散総選挙に踏み切りました」云々、と説明していますが……この時期に選挙を行うということは、石破政権としての実績が何一つない代わり、失策もまだないということ。時間が経てばそれだけ批判材料も増えてくるでしょうから、まだしも期待値のほうが上回っている発足直後の今のうちに……という、自民党選対本部の浅慮が透けて見えるようです。

さて、今月も直近のニュースから目についた話題をピックアップして参りましょう。まずは10月18日、(公財)東日本不動産流通機構が発表した2024年7〜9月期の首都圏不動産流通市場動向( http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_202407-09.pdf )の話題からご紹介していきます。こちらのソースは当コラムでもしばしばご紹介しておりますが、これによると、首都圏の中古(既存)マンションの成約件数は8,539件(前年同期比2.9%減)となり、5四半期ぶりに前年同期を下回ったということです。地域別に見ていくと、東京都4,514件(同6.5%減)、埼玉県950件(同2.9%増)、千葉県1,078件(同9.7%増)、神奈川県1,997件(同3.1%減)となっており、新規登録件数は4万6,428件(同4.9%減)でした。また、1平米当たりの平均成約単価は76万7,400円(同5.6%上昇)で、17四半期連続で上昇しています。1都3県すべての地域で前年同期比上昇が続いていますが、特に東京都区部は117万3,700円(同11.4%上昇)の大幅上昇となりました。平均成約価格は4,875万円(同5.5%上昇)となり、2012年10〜12月期からじつに48四半期連続で上昇していることになります。少し前、インフルエンサーのひろゆき氏が自身のXで「東京都心の中古マンション平均価格は1億円超」「高給な労働者でも家が買えない東京。社会としておかしくない?」等と発信したことが話題になりましたが、「平均価格1億円超」が(例によって)氏特有の根拠のない適当な数字であることはこの際、置いといて――よほどの高給取りでも、そう右から左と用意できる金額でないことはたしかなようです。なお、参考までに既存戸建ては成約件数が12.5%増で3四半期連続、平均成約価格は同2.2%増で17四半期連続前年同期を上回ることになりました。

続いて10月17日、(株)東京カンテイが発表した「2024年9月の三大都市圏の分譲マンション賃料月別推移」( https://www.kantei.ne.jp/report/T202409.pdf )なる記事です。こちらの会社も当コラムではおなじみの情報ソースですが、ここで表記する「分譲賃料」とはご存じの通り、「分譲マンションが賃貸された場合の募集賃料を1平米当たりに換算して算出したもの」になります。これによると、首都圏の平均賃料(平米単価)は3,578円(前月比0.7%下落)で、「東京都の事例シェア縮小」や、調査対象のほぼ全域で横ばい〜弱含みになった影響から3ヶ月連続で下落となりました。なお、首都圏の平均専有面積は58.82平米なので、平均賃料は月額およそ21万円超ということになります。一般賃貸に比べて分譲賃貸は相場が高いものですが、それにしても極端ですね。このほか、近畿圏は2,330円(同0.1%上昇)と3ヶ月ぶりの上昇、中部圏は2,030円(同0.4%上昇)で3ヶ月連続の上昇となっています。分譲賃貸の場合、オーナーの物件購入金額(投資金額)が高いほど賃料設定も高くなるはずですから、小幅な下落傾向が続いている首都圏では、物件販売価格も下落している……と思われるかもしれませんが――このケースではどちらかといえば、「なかなか借り手が付かないために、募集賃料を引き下げざるを得ない……」という理由が考えられます。いずれにせよ、昨今の消費者物価高騰の波は、今後ますます国民生活の負担増を加速させていくでしょうから、衣・食・住にかかる費用はできるだけ削減したいと考える人がこれからも増えていくものと思われます。また、一度下げてしまった募集賃料をふたたび上げるのは難しいでしょうから、少なくとも首都圏の分譲賃貸物件の賃料に関しては、当面の間横ばい〜小幅な下落という値動きが続くものと予測されます。

お次は、10月11日付けで野村不動産ソリューションズ(株)が発表した「2024年10月1日時点の首都圏『住宅地価INDEX』調査結果」( https://www.nomura-solutions.co.jp/news/pdf/20241011.pdf )を見ていきましょう。こちらは同社が四半期ごとに実施している定点調査で、調査地点数は169ヶ所になります。これによると、2000年1月を100として、2024年10月1日時点の住宅地価INDEXは、首都圏が113.2(前回調査比+0.5%)でした(前回調査は2024年7月)。今回で2020年第4四半期から17四半期連続、すなわち丸4年以上連続で上昇していることになりますが、上昇率はやや縮小しています。エリア別に見ていくと、東京都区部(東京23区)は上昇率こそ縮小したものの、都心5区のうち千代田区・中央区・港区・新宿区を中心に価格上昇が続いており、杉並区・世田谷区・練馬区では上昇地点が増加していることがわかります。一方、渋谷区および隣接する目黒区、さらに中野区・文京区・大田区・江戸川区・荒川区では上昇地点が減少しているとのことです。これは同社独自の地価調査および指数であるため、他のデータとの比較参照が少々難しいのですが……とはいえ、2000年から四半世紀にわたって続けられてきた調査ということで、中長期における地価変動を予測する上で大いに参考になるのではないかと思います。

同じ10月11日、(株)ファーストロジックは同社のサイト「楽待」における投資用不動産市場調査(2024年7〜9月期)( https://rakumachi.co.jp/wp-content/uploads/2024/10/firstlogic_press_20241011.pdf )の結果を発表しました。これは、2024年7月1日〜9月30日までの期間中、「楽待」に新規掲載された全国の物件が調査対象となっています。これによれば、上記期間中の1棟アパートの表面利回りは9.49%(前期比0.33%上昇)となりました。物件価格は7,981万円(同12万円下落)となっており、過去最高値だった前期よりは下落したものの、それでも過去2番目に高い数値となりました。同期間中の1棟マンションの表面利回りは7.91%(同0.33%上昇)で、物件価格こそ2億1,205万円(同293万円下落)とそれなりの下落幅となりましたが、表面利回りは上昇しています。そして、区分マンションの表面利回りは6.69%(同0.15%下落)とわずかに下落となっていますが、物件価格は2,389万円(同189万円増)と5四半期連続で過去最高を更新し、2012年の同調査開始以来初めて2,300万円台に突入したと言います。

ここまで見てきたように、ひと口に不動産市況と言ってもさまざまな指標があり、それぞれ切り口次第でいろいろな局面を読み解くことが可能ですが、細かい数値の変動はさておき、どこからどう見ても「不動産価格の上昇傾向」は誰の目にも明らかです。そして、これに伴う「不動産流通市場の停滞」――すなわち、「高すぎて売れない、買えない、借り手がつかない」という状況が徐々に見え始めてきています。歴代の自民党総裁は頑なに認めようとしませんが、日本はすでに「デフレ脱却」はおろか、とうの昔にインフレに突入している、と指摘する経済学者もいます。賃金上昇が物価高騰に追いつかず、庶民の生活がますます苦しくなっている中で、「日本の不動産投資額の34%が外国人」とするひろゆき氏の指摘(この数値がどの程度の信憑性を持つかはさておき)のように、日本の優良不動産がみすみす海外の資本家に流出していくのを食い止めるためにも、現在の停滞した状況を何とか打破しなければなりません。もちろん、そんな画期的なアイデアがポンポン出てくるようなら、世の中、何の苦労もありませんが……やはり、地道に正確な情報収集を心がけるとともに、自分なりの視点からの分析を試みる習慣を身につけていくしかないでしょう。
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