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第130回 新型賃貸とシェアハウス

10月末から11月にかけて、選挙絡みの話題がいろいろ続きました。日本では、石破新政権が発足と
同時に衆議院の解散総選挙を行い、国民の信を問うことになりましたが、結果としては大幅に議席
を減らすことになりました。これにより、与党の政権運営がいささか困難なことになったと言われて
いますが……。ちなみに、石破首相は、第2次内閣の副大臣、政務官には政治資金収支報告書に不記載
のあった「裏金議員」を起用しない方針を固めたそうですが、その結果、元アイドルのタレント議員
2名を政務官に任命したことが問題視されています。ただでさえ色眼鏡で見られがちのタレント議員で
すが、適性や実力が備わっていればいざ知らず、今回の任命にはさすがに首を傾げざるを
得ないのでは……。
一方、アメリカ大統領選では、意外にも(?)共和党のトランプ候補が返り咲きを果たすという結果
になりました。トランプ氏といえば、前回の大統領時代後半はコロナ禍に直面することになり、その
対応の拙さを露呈していましたが……他責思考と陰謀論に凝り固まったトランプ氏を支持せざるを得
ないほど、民主党政権下のアメリカ経済は困窮していたのでしょうか? あるいは、アメリカ人の女性
蔑視はそこまで深刻なのでしょうか? いずれにせよ、トランプ政権の発足が日本を含む諸外国に与え
る影響は少なくないことでしょう。
「返り咲き」といえば、11月17日に投開票が行われた兵庫県知事選挙では、県議会から全会一致で不信
任決議を突きつけられ失職した斎藤元彦前知事が再任されるという結果になりました。トランプ大統領
と斎藤知事の勝因としては、彼らの支持者が「マスメディアの報道」よりもSNS発信などの「本人のナマの
声」を信じたから……という面があるように思われます。

さて、今月も直近のニュースから目に付いた話題をご紹介して参ります。まずは11月12日、野村不動産(株)
が発表した「新たに『コリビング賃貸』事業に参入 職住一体 大型賃貸レジデンス 「TOMORE(トモア)」
発表 〜 1棟あたり100戸超の大型物件を、首都圏中心に展開 〜」( https://www.nomura-re.co.jp/cfiles/news/n2024111202542.pdf
というプレスリリースからです。「コリビング賃貸」とはいきなり聞き慣れない用語ですが、同プレスリリ
ースによれば「『コリビング賃貸レジデンス』は、シェア型賃貸住宅とコワーキングスペースが融合した住
宅形態」とのこと。同社では今後、「専属の運営スタッフ『コミュニティオーガナイザー(コワーキング
スペースに日中滞在し、利用者同士の交流や活動をサポートするコミュニティのハブ機能を果たす運営
スタッフ)』によるコミュニティ運営付の職住一体・大型賃貸レジデンス 『コリビング賃貸レジデンス
TOMORE(トモア)』を開発・運営」していくということです。
なお、このコリビング賃貸の概要として「アフターコロナにおけるワークスタイルの急速な変化、イン
フレによる都心部の家賃高騰等が進む中、20〜30代を中心とした単身世帯の『ひとり暮らし』に向けて、
従来の賃貸住宅・シェアハウスでは叶わなかった新たな価値を提供していくことを目指します。
第1弾物件として、2025年2月に、都営浅草線『中延』駅徒歩1分の地(東京都品川区)に総戸数135戸の『TOMORE品川中延』
が竣工します。今後も1棟あたり概ね100戸超の大型物件を首都圏中心に展開し、賃貸住宅領域の新たな柱
となるべく事業を推進してまいります。(後略)」といった内容が続きます。大手資本ならではの興味深い
取り組みであり、その挑戦精神には大いに敬意を表しますが……文中にある「従来の賃貸住宅・シェアハウス
では叶わなかった」という一文にかすかな違和感を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 

なお、上記の話題に付随して、次のプレスリリースも同日発表されています。こちらは大手家電メーカー・
パナソニック(株)くらしアプライアンス社による「新しい洗濯ソリューション『LAUNDROOM(ランドルーム)』提供開始」( https://news.panasonic.com/jp/press/jn241112-1?_gl=1*5yyo8m*_ga*NTA3MzM3NTA1LjE3MzE5MDgwOTc.*_ga_K78QDTE73S*MTczMTkwODA5Ni4xLjEuMTczMTkwODEwNS41MS4wLjA.
という話題です。同社によると、これは「シェア型賃貸住宅の洗濯機の利用を快適化する新サービス」であるとのこと。この「シェア型賃貸住宅」という妙に勿体ぶった言い回しは、つい先ほども
目にされたばかりですね。要するに、シェアハウスなどで入居者が共同利用している洗濯機は、「洗濯したい
時に洗濯機が空いていない」「洗濯機置き場に行かないと空き状況が確認できない」等の不便さがあり、
またシェアハウス大家さんなどの物件管理者にとっては、故障時の修理受付時間の制約や、共同利用の
洗濯機・乾燥機にかかる電気代・水道代増加等が課題となっていました。この『LAUNDROOM』では、
IoT機能を活用した専用のシステムを開発し、洗濯機や乾燥の稼働状況を入居者がスマートフォンで確認する
ことができ、終了した際にはLINEで通知されるため、無駄な移動や待ち時間が発生せず、衣類の取り忘れを
防止できるようになるということです。また、24時間365日対応可能な専用の修理窓口も設置するとのこと。
これが何故「上記の話題に付随して」なのかと言えば、この「LAUNDROOM」の導入第1号が上記の「シェア型
賃貸住宅」、すなわちコリビング賃貸レジデンス「TOMORE品川中延」だから……というわけです。この新サービス
が成功し、一定の
認知度を得られれば、一般のシェアハウスにも導入可能になるという展開もありうるのでしょうが、費用対効果
を考えると、何らかの新たな付加価値がつかない限り、既存のシェアハウスで積極的に導入する動きは起こり
にくいように思われます。

ところで――今月は上記の「コリビング賃貸」と並んでもう一つ、聞き慣れない、それでいて気になる用語を
ご紹介したいと思います。こちらは10月27日付けの『東洋経済オンライン』に掲載された「そこそこ健康な89歳
『共同生活を選んだ』深い理由 老人ホームやシェアハウスとも違う『終の住処』」( https://toyokeizai.net/articles/-/835432
という記事。ライター・編集者の桜井美貴子氏による署名記事です。以下、導入部分を抜粋して引用してみます。
「これから人は100年生きるという。しかし、お金や健康、孤独に対する不安がなく老後を迎えられる人はどれくらい
いるだろう。年を取ることが怖い――。
多くの人が漠然とした不安を抱く中、老後の人生こそ謳歌している人もいる。その元気は、気力は、生きがいは、
いったいどのようにして手に入れたのか。
本連載では、“後期高齢者”になってなお輝いている先達に、老後をサバイブするヒントを聞きます」ここまで
が毎回共通のリードで、ここから本文になります。もう少し引用していきます・
「80歳で見つけた『終の住処』
令和6年版高齢者白書によると、60歳以上で現在、または将来的に住み替えを考えている人は全体の3割に上っている。
理由の上位は『健康・体力面で不安を感じるようになったから』、『自身の住宅が住みづらいと感じるようになった
から』に続き、買い物や交通の便の不便さが続く。
24歳から幼稚園教諭として働き始めると同時に一人暮らしをスタートさせた小森祥子(よしこ)さん(89歳)が、
持ち家のマンションを売却して終の住処へ住み替えしたのは80歳のとき。一人暮らし歴56年、独身人生6回目の引っ越し
だった。理由はやはり、『健康・体力面での不安』の類になる。
小森さんが終の住処に選んだのは神奈川県川崎市にあるグループリビング、『おでんせ中の島(以下、おでんせ)』。
ここに決めるまで3年の年月がかかった。
決め手は、『一人暮らし+共同生活』というグループリビングの生活スタイルだ。個室でプライバシーが守られた
うえで、一つ屋根の下に居住者同士の人のつながりがある。
オーナーの藤井康雄さん(82歳)から『一人暮らしの高齢者が自立しながら、仲間と健康で心豊かに共生する』
というポリシーの説明を受け、即断。契約を交わした。
内覧もせず、しかも、『実はおでんせに出会うまで、グループリビングなるものは、まったく知りませんでした』
と笑う。
グループリビングとは、おおむね60歳以上の健康な高齢者が10人程度集まり、独立した居室で暮らしながら、
共有スペースで共に食事をしたり、施設運営に参加したりしながらゆるやかなつながりの共同生活を営んでいく
住まい方のこと。
1996年から旧厚生省も『高齢者グループリビング支援モデル事業』をスタートさせたが、助成金の指定条件が
限定される面もあり、運営主体の主流は民間の非営利組織や個人オーナーが多い。
血縁関係もなく、
気の合う仲間同士のシェアハウスとも違う、高齢者たちの共同生活。おでんせの場合、居住者11人のうち
半数近くが小森さんのように一人暮らしだった人がほとんどだ。(後略)(10/27 10:00更新)」
先ほどは「聞き慣れない用語」と申し上げましたが、この「グループリビング」なる用語はどうやら1996年には
既に使われていたようです。とはいえ、30年近く前の話であり、ほとんど「忘れられた用語」であった、という
ことになるでしょう。この「グループリビング」と、上記記事で取り上げた「コリビング賃貸」。コンセプトや
展開はそれぞれ異なるものの、これらは要するに「シェア型賃貸住宅」という分類で間違いないでしょう。
そこで、それぞれの記事における紹介文に注目すると、「コリビング賃貸」については「従来の賃貸住宅
・シェアハウスでは叶わなかった新たな価値を提供していく」とあります。また「グループリビング」については、
「老人ホームやシェアハウスとも違う」「気の合う仲間同士のシェアハウスとも違う」と書かれています。
しかし――よくよく読んでみると、具体的に「どこがどう違うのか?」についてはほとんど何も説明していない
ことにお気づきでしょうか? 要するに、「コリビング」だ、「グループリビング」だ、とシェアハウスとは
違う看板を掲げることで、あたかも別物であるかのように思い込ませる手法です。逆に考えると、今やそれほど
「シェアハウス」という用語・概念が普及し――同時に陳腐化している、ということになるのかもしれません。

もう1本、これはイベントの告知になりますが、「12月8日 『銀座NAGANO』で長野県主催・空き家ビジネス無料相談会
を開催!歴史的な建造物も空き家物件として紹介!?」( https://www.kenbiya.com/ar/ns/jiji/event/8469.html
という話題について簡単に触れておきましょう。タイトルをご覧になっただけではイメージしづらいかも
しれませんが、要旨を引用すると「上田地域は『千曲川ワインバレー』に属し、ワイナリー数がここ10年で
4倍に増え、国内外から注目されるワイン生産地となっている。一方で、ワイン・ツーリズムの玄関口である、
しなの鉄道大屋駅(上田市)、田中駅(東御市)周辺は、空き家・空き店舗が目立ち、地域の課題となっている。
そこで、こうした空き物件を活用し、飲食店や宿泊施設など、観光客等が気軽に立ち寄れる観光拠点をつくろう
というのが当事業の目的だ」というお話です。なお、上記の「空き家・空き店舗」の中には貴重な歴史的建造物
も含まれていること、また、空き家の活用法としてはシェアハウス化も選択肢に含まれていることは言うまでも
ないでしょう。

思えば、当コラムの前身である「今月の不動産コラム」の連載がスタートした15年前頃には、「シェアハウス」
という用語はまだ十分に新しく、何ものとも知れない曖昧さとともに、既存のイメージの手垢がついていない
新鮮さが感じられました。言ってみれば、「よくわからないが故のワクワク感」にあふれた用語だったのです。
今回取り上げた話題の中で、「コリビング」とか「グループリビング」といった用語に言い換えられ、しかも
「シェアハウスとは違う」ということをセールスポイントにしている事例を見ると、シェアハウスはもはや
「聞き飽きてしまったが故の失望感」を漂わせる用語になってしまったのかもしれません。
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