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ドナルド・トランプ大統領再選以来、何かと物議を醸しているアメリカ政策ですが、去る2月13日にいわゆる「相互関税」――貿易相手国が高い関税を課している場合、その国からの輸入品に対する関税を同じ水準に引き上げるという措置の導入検討を関係閣僚に指示したことで、国際的な波紋を巻き起こしています。世界最大の経済大国であるアメリカは、これまで基本的には「面倒見のいい親分肌」と言いますか、「口は出すが、その代わりカネも出す」というスタンスで諸外国に接してきましたが、それがここへきて、ある意味、急にケチ臭くなってきた印象があります。アメリカ国民の多くがそれを望み、受け入れ、支持しているということは、それだけアメリカの国力の衰えを国民一人ひとりが実感しているということでもあるのでしょう。今のところ、具体的な関税率が示唆されているのはカナダ、メキシコ、中国といった主要な貿易相手国ですが、戦後80年にわたってアメリカに「おんぶに抱っこ」の体制でここまでやってきた日本も当然、基本的な政策の見直しを余儀なくされています。とかく「トランプ政策」はブラフ半分と認識されがちですが、だからといって都合の悪いことはすべてブラフと見なしていると、手痛いしっぺ返しが待っているかもしれません。いずれにせよ、石破政権には関係各国と足並みを揃え、今回の相互関税を含めたトランプ政策に毅然とした対応を期待したいと思います。もし、日本だけの例外的対応を求めてアメリカにすり寄ろうとすれば、日本は国際社会の中で孤立することにもなり兼ねません……。
さて、気の滅入る話はこれくらいにして、今月も不動産関連の直近のニュースからシェアハウス大家さんに関心のありそうな話題をピックアップしていきましょう。まずは、不動産情報サービスのアットホーム(株)が2月13日付で発表した「不動産のプロに聞いた!『2024年下半期 問合せが増えた条件・設備〜賃貸編〜』ランキング」(
https://athome-inc.jp/news/data/questionnaire/pro-ranking01-202502/ )の話題から。これはタイトルにある通り、2024年7〜12月に賃貸居住用物件を探しているユーザーを担当した全国の加盟店511店を対象に、インターネットでアンケート調査を実施したもので、調査期間は2025年1月16〜23日となっています。同調査によると、前年(2023年下半期)と比較して、2024年下半期に問合わせが増えた条件としては、「転勤のため引っ越したい」と「通学先・通勤先の近くに引っ越したい」がそれぞれ26.4%で同率トップとなっています。26.0%と僅差で3位に「毎月の家賃を下げたい」が入りました。この結果に対する不動産会社からの主なコメントには「コロナ禍で控えられていた転勤が活発になってきた。また、多少遠くても自宅通学をしていた学生が近くに引っ越しを考え始めた」「リモートワークする会社が減った」などが目に付き、コロナ明けで人流が活発化している状況が見て取れるようです。3位については「物価高の影響。減らせるところから出費を削ろうとする方が多い印象」というコメントがあり、2024年上半期同様“物価高”というキーワードが多く見られたとのことです。
また、設備関連で問合せが増えた項目としては、1位が「インターネット接続料無料」で23.3%、2位が「宅配ボックス」で19.8%、3位が「駐車場」で18.6%となっています。このうち、1位については、不動産会社から「毎月の固定費の削減」「単身の物件では今や必須条件になってきている」等のコメントが寄せられているほか、「通常であれば個人負担のインターネット料金を法人契約の場合は会社負担にできることもある」というコメントも上がりました。2位については、不動産会社から「在宅勤務が減少傾向にあり、家に不在の時間が増えたため」とコロナ明けの影響を指摘したコメントのほか、「防犯対策のため」「置き配の場合は住所や名前、電話番号が長時間人目に触れてしまうことがあるので、宅配ボックスを利用することで防犯対策につながる」といったセキュリティーを重視するコメントが目立ちました。なお、3位については「2台目を希望する方が多い」と不動産会社からコメントが寄せられていますが……これについては正直、他の項目との整合性から判断してやや疑問の余地もあるように感じられます。新たに2台目を購入する、というより、もともと2台持ちの家庭で「外部の駐車場代を削減したい」というニーズが増えているのかもしれませんが……。いずれにせよ、全国区のアンケート調査ですから、公共交通機関の充実した都心部の市街地では、また違った傾向が読み取れるのではないかと思われます。
続きまして、2月10日付で東急不動産ホールディングス(株)が発信したプレスリリースのご紹介です。第三者によるニュース記事ではないので、原則として当コラムでは見出しのみの扱いとしておりますが、後述する理由から敢えて一部を引用します。
「東急不動産ホールディングス、オリコ、Airbnb、空き家活用の4社、空き家の有効活用を目的に業務提携 〜空き家のホームシェアリング活用支援ワンストップサービスの実証実験を開始〜」(
https://www.tokyu-fudosan-hd.co.jp/news/others/pdf/b8c6dc6c76c180ff33e9c257b74b994c92054ad2.pdf )
「日本では近年、空き家数の増加が社会問題となっています。2024年に公表された『令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果』(総務省統計局)によれば、空き家数は900万戸と、2019年の調査時より51万戸の増加で過去最多となっています。そして、団塊世代が平均寿命を超過し、多くの相続発生が想定される2040年に向けてさらに拍車がかかるといわれています。空き家が放置されると、倒壊や崩壊の危険だけではなく、景観や衛生面の悪化、不法侵入など地域の住環境に対する悪影響も懸念されます。
こうした状況に対して、Airbnb・オリコ・アキカツは、空き家にかかわる幅広い資金ニーズに対応する無担保消費性ローン『アキカツローン』の商品化や空き家のホームシェアリング活用を通じて、空き家の流通促進に取り組んでまいりました。
一方、ホームシェアリングの実施には事前準備や日々の運営など多くのハードルが存在しています。この課題を解決するために、東急不動産ホールディングスは社内共創型ベンチャー制度『STEP』において、個人・法人のホームシェアリングを一貫して支援するサービス『AnyLivingS』の実証実験を2024年4月から行っており、ホームシェアリングの参入障壁を下げることによる空き家の有効活用と地方不動産の流通促進を目指しています。
今回、東急不動産ホールディングス、Airbnb、オリコ、アキカツの4社で業務提携をすることにより、それぞれが持つ強みを活かし、空き家の更なる流通促進に寄与してまいります(後略)」
わざわざ当事者発表によるプレスリリースを引用した理由は、同社が「ホームシェアリング」という耳慣れない用語を用いているからです。前月ご紹介したFINANCIAL FIELDの記事(
https://financial-field.com/living/entry-358034 )の文中に「異世代ホームシェア」なる造語が登場したことをご記憶の読者もいらっしゃるのではないでしょうか。あちらは「高齢者と学生が共同生活を送る新しいスタイルのシェアハウス」という意味合いで用いられていたようですが、一読しておわかりのようにこちらの「ホームシェアリング」はまったく意味が異なります。この種の新語・造語の類いは、世間に定着するまで基本的に「言ったもの勝ち」になりますから、ともすれば混同される方もいらっしゃるのではないかと思われますが、場合によってはこの事例のように全然違うこともありますので、注意が必要です。
次にご紹介するのは、2月7日付で(独)住宅金融支援機構が発表した「2024年度 住宅ローン貸出動向調査」(
https://www.jhf.go.jp/files/400368930.pdf )について。これは、2024年7〜9月、同機構が住宅ローンを取り扱う金融機関301機関に対して実施した、住宅ローン等についてアンケート調査の結果をまとめたもので、同年6月末時点の状況についての回答になります。これによると、新規の住宅ローンへの取組姿勢は、現状・今後とも「積極的」が71.8%と全体の約7割を超えており、「消極的」を選択した金融機関は0.7%となりました。
今後の取組姿勢について、「積極的」を選択した機関の方策は「商品力強化」が64.7%でもっとも多く、次いで「金利優遇拡充」が42.8%、「営業体制強化」が39.1%の順となりました。なお、2024年度から選択肢に追加された「申込み・借入れ手続きのデジタル化」は28.4%となっています。
また、環境配慮型住宅ローンを「取り扱っている」金融機関の割合は37.0%と前年度調査から増加したものの、「取り扱い検討中」の割合は5.0%と減少しました。同ローンの取り扱いを開始した理由については「SDGsやカーボンニュートラルへの取り組みの一環」が77.3%でトップとなり、住宅ローンの提供を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを前面に打ち出している金融機関は引き続き増加傾向にあることがわかりました。
さらに、空き家に関するローンを「取り扱っている」金融機関は55.5%と前年度調査から増加しています。融資対象とする資金使途としては「空き家解体」に関わる費用を対象とする金融機関が94.0%と全体の9割を超えています。その他、「空き家活用(リフォーム)」が46.7%、「空き家活用(取得+リフォーム)」が30.5%という回答が目立ちました。
この他、不動産情報ポータルサイトの『健美家』に掲載された情報からいくつかピックアップしていきましょう。
「東京都港区・高輪に、街に根差し、街と共に成長する複合型施設『ヌーク白金高輪』が2025年4月オープン!」(
https://www.kenbiya.com/ar/ns/region/tokyo/8724.html )これは2月10日付で配信された(株)リアルゲイトのプレスリリースですが、ここでは「築55年の旧シェアハウスをコンバージョンした」複合型施設である、というのがポイントとなります。無論、55年前の新築当初からシェアハウスだったわけではなく、もともとあった建物を一度はシェアハウス化したものの採算が合わず、再度コンバージョンした……という経緯だと思われます。掲載内容からは旧シェアハウスがどのようなものであったかは不明ですが、おそらく何らかの問題があり、再度の用途変更に踏み切ったものと想像されます。ここから読み取れるのは、「向いていない物件をシェアハウス化しても成功しない」という教訓に加えて、「シェアハウスという用途は、もはや陳腐化しつつあるのではないか?」という問題提起です。お手持ちのシェアハウス物件の稼働率や利益率によっては、検討の余地があるかもしれません。
次に、2月3日に配信された「外国人入居OKの物件のみ掲載サイト『Mooovin』成長と拡大の可能性を聞いてきた」(
https://www.kenbiya.com/ar/ns/for_rent/citem_service/8689.html )という記事。こちらは「健美家編集部(協力:中川寛子)」とクレジットされています。中川女史は(株)東京情報堂代表を務めておられるその道のプロだけに、的確な質問で答えを引き出しています。外国人入居者の受け入れに積極的なシェアハウス大家さんにとって、かなり参考になりそうな内容です。
もう1本、1月29日で配信された「空き家になっていた昭和の木造共同住宅が、 店舗と地域交流スペース、シェアハウスにリノベーション」(
https://www.kenbiya.com/ar/ns/release/r_others/8695.html )というプレスリリース。会員限定公開(会員登録すれば無料で最後まで読むことができます)でもあり、これ自体はそれほど珍しい事例とも思えませんが、古いアパートを所有されている大家さんには参考になるかもしれません。
2025年がスタートして早くも2ヶ月近くになりますが、あいかわらず景気のいい話は他人事ばかり――物価高騰と増税(インボイス導入による消費税負担の影響も徐々に広がってきているようです)で、日に日に生活が苦しくなってきている方も少なくないのではないでしょうか。こんな時代だからこそ、自分の生活は自分で守らなければなりません。そのためにも、日頃から各方面に情報収集のアンテナを伸ばしておく必要があると思われます。